頭蓋骨
友人である新宮と夜風に吹かれながら街を散歩していると、目の前に頭蓋骨が転がって来て、どこからどうやって出しているのか、低い、呻くようなノイズ混じりの声で私たちに何やら語りかけてきた。新宮が即座に頭蓋骨を蹴飛ばそうとするのを抑え、深く関わらずに去ろうとしたところ、頭蓋骨が飛び掛ってきて、私は気を失った。
「キミは泉くんではないね」
遥か頭上から聞こえる新宮の声。それは私に向けられてはおらず、隣にいる浮浪者然とした男性、ああ、なんということだ。私だ。私を見下ろしているのは私だ。それでは見上げる私は――ああ、頭蓋骨である。どうやら私は頭蓋骨に身体を盗られてしまったらしい。
ふと気がつけば、頭蓋骨である私を新宮が踏みつけていた。やがて踏みつける足の裏に徐々に力が込められてきて、元々入っていたヒビが音を立ててさらに広がったところで、私の身体を盗んだ人ではないものが「何だ。案外、容易ではないか」と私のものではない声を発した次の瞬間、新宮宮古は、頭蓋骨を踏み抜いた。
「やあ泉くん。気分はどうだい」
「最悪」
新宮の話によれば、彼女は頭蓋骨を踏み抜いた後、たまたま持ち合わせていた金槌で頭蓋骨の欠片を粉々に砕いてドブ川に捨て、気が抜けたように崩れ落ちた私の身体を家まで引きずってきたという。見れば所々が傷ついており、衣服に至ってはボロ布と化していた。これは後で請求しても良いものだろうか。いや、しかし。
「だから見つけた時にどこか遠くに蹴飛ばせばよかったのに。ああいう輩はね、少しでも優しさを見せちゃ駄目なんだよ。聞いているかい?」




