表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/24

「泉くん。キミ、両目をどこへ置いてきたんだい?」


 目の前から聞こえる、僅かな嘲りを含んだ声。問いに答えず黙っていると、声の主、新宮宮古は一息をつき「目、盗まれたんだね」と呟いた。

 彼女の言う通り、今現在、私の両目は繰り抜かれて穴がぽっかりと開いている。奪われたのだ。それもたまたま、突然の雨に降られて駆け込んだ廃屋の軒下で、これまた偶然そこに住み着いていた、人間に似た人間でないものによって。うかつであった。普段であれば目を背けて通り過ぎるような捨てられたあばら家に、自ら足を踏み入れてしまうなど、気が抜けているとしか思えない。新宮の「馬鹿なことをしたものだね」という哀れみ混じりの声に返す言葉もない。


「それで、どうするんだい? ボクがキミの目になってあげようか」

「誰が望んでそんな生き地獄を」

「ひどいなあ。まあいいや。目、そろそろ戻ってくるだろうし」


 どういうことかと聞き返そうとして、眼窩に鈍い痛みを感じ、思わず呻く。眼球の周りを小さな虫が蠢いているような薄気味の悪い感覚がしばらく続き、気づいた時には私の両目は戻ってきていた。

 差し込む光に目を細め、徐々に視界を開けていくと、ビニール傘をくるりと回す新宮が立っていた。彼女は私に傘を差し出し、大学へ行こうか、と微笑んだ。ああ、そうだった。こんな雨の中をわざわざ出かけたくはないと逃げていたのだった。今日の私は、どうしようもない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ