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落下

 今月に入って今日で四度、人が飛び降りる瞬間を見た。一度目は確かに人で、誰が呼んだか救急車も来たし人集りもできていた。残りの三度は、ああ、今ので今月五度目だ。今度もまた、私だけが見たのだろう。一度目に飛び降りた彼は今もまだ、同じ場所から飛び降り続けている。


「ボクには何も見えなかったけど」


 二度目の飛び降りの時は私の隣に友人である新宮宮古も立っていた。しかし彼女は落下した彼を見なかったという。私は彼女の言葉が嘘であると分かっている。なぜなら彼女は、彼が飛び降りた後、彼が立っていた屋上の縁をじ、と見つめていたからだ。

 その後も現場を通り過ぎるたびに彼が飛び降りるのを見、やがて私は部屋から出なくなっていった。


「やあ泉くん。そろそろ外に出てはどうだい。なかなかに涼しくて散歩日和だよ」

「断る」


 当然のように拒否は許されず、散歩と称して連れて来られた場所も案の定、飛び降りの現場であった。新宮を横目で睨むも彼女は意に介した様子もなく、時折腕時計を気にし、そして、そろそろかな、と呟いて、それと同時に人が降ってきた。



「今まで泉くんが見ていた男性の元彼女だよ。もうこれで、飛び降りる男性を見ることもなくなったはずさ」


 彼と彼の元彼女の間に何があったのかは知らないし、彼らに対して新宮が何を行ったのか、知りたくもない。けれど確かに新宮の言う通り、彼が飛び降りることはなくなるだろう。そのことは、屋上に立つ彼の、満足そうな表情が全てを物語っている。

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