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紹介

 生活が苦しくなってきたため短期のアルバイトに申し込んだはいいが、どうにもここ数日体調が優れないので辞める、といった連絡を入れて寝転がっていると、暇ならどこかへ行かないか、と新宮が訪ねてきた。正直に言ってしまえば出かけるということを考えただけでも面倒で嫌だったのだが、好きなものを奢ってくれるという誘い文句に釣られ、彼女の提案に乗った。

 そうして連れられて来た先が、なぜか、墓場だった。


「まあ、何か言いたいことはあるとは思うけど、後で話すよ」


 卒塔婆が散らばっていたり墓石が崩れていたりするところを見るにここは管理の行き届いていない墓場なのだろうか。薄暗い林の中にあるため昼間でも決して明るいとは言えず、鳥や獣の声すらも聞こえず、加えて、落ち葉を踏み鳴らしながら先へ先へ進む新宮がどこへ向かおうとしているのか検討もつかず、私はただただ、彼女の小さな背中を追いかけていた。

 十数分歩いて辿り着いた先には、つい最近誰かが訪れたことを示す花が供えられた墓があり、新宮は、ここにボクの両親が埋まっているのだと話し始めた。


「両親、とはいっても、記憶にはないんだけどね。ボクが生まれてすぐにどちらも亡くなってしまったから。顔も性格も何も覚えていない」


 写真も残っていないし、ボク自身、両親のことを知ろうとも思っていないと新宮は続け、こんなことを話しに来たわけじゃないと苦笑した。そして新宮はただ簡潔に、キミを紹介したかったんだ、と告げた。


「このところ、毎晩のようにボクの枕元に見知らぬ二人が立つんだよ。ああ、もう察しているようだね。その人たちはどうやらボクの両親のようなんだ。とてもよく似ているんだよ、ふたりとも。そんな両親が毎晩毎晩ボクの枕元に立ち、不安そうな顔でボクの顔を覗き、肌に触れ、頭を撫で、夜明け前に去っていくんだ」


 父も母も、そろそろいなくなる頃なのだろうね、と新宮は独りごち、


「ボクは、この人がいれば大丈夫だから」


 と言葉少なに両親の眠る場所へ告げ、元来た道を振り返りもせず戻り始めた。紹介と言うにはあまりにも簡素であるようにも思えたが、彼女らしいといえば彼女らしい。墓石に頭を下げて手を合わせ、新宮の姿を追っていく。気がつけば、林の中には光がうっすら差し込んでいた。

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