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アカイシ

 ふらりと街に出かけると、中学時代の知人らしき数名が、泉じゃないかと声をかけてきた。無視して通りすぎようとすると、同窓会があったのだと一方的に話し始めた。同窓会。呼ばれた覚えがないのだが、どうやら今日開催されたらしい。

 私が黙っていると彼らの中の一人、複数名の男性の中にただ一人混ざっていた、血色の良いはつらつとした女性が私に「泉くん。あたしのこと、覚えている?」と問いかけてきた。正直、誰も覚えていない。人違いではないかと返すと彼女は薄ら笑いを浮かべて「そっか」とだけ呟いた。


 二言三言会話を続けた後に彼らと別れ、再び街へと歩き出す。実を言うと私は彼女のことだけははっきりと覚えていた。アカイシ。それが彼女の名前であり、他の男性たちは彼女を虐めて自殺に追い込み、自殺などなかったと語ったクラスメイト達であった。私が彼らを知らないと言ったのは、彼らの誰にも影がなく、また、彼らの誰にも生気を感じられなかったからである。肉体そのものが存在している以上、確かに人ではあるのだろうが、影がないなら私はそれらを人とは認めない。人でないものとは関わりたくない。

 しかしその中で、アカイシだけが、生を楽しんでいるように、何をするにも面白くて仕方がないというように、ただ一人、男性たちの周りでくるくる飛び跳ね、笑顔を振りまいていた。彼女にもまた、影がないのに、それどころか実体もないというのに、私が彼女に応対したのは私自身、いまいち理由を掴めない。


 死者であるアカイシが、生者である彼らに現在、何を行っているのかは知りたくもない。憑依だとかそういうことを私は決して信じない。アカイシはもう死んだのだ。死んだ彼女が誰かに何かを行うなど、そんなことは有り得ない。


「ああ……泉くん。会いたかったぜ。いや、ほんと。会えてよかった。助けてくれ」


 ふと見れば、いやに小綺麗な格好をした新宮宮古が壁を背にして座り込んでいた。表情は陰り、助けを求めて伸ばした手は小刻みに震え、彼女の体調が優れないことを示していた。どうしたのかと彼女に問えば、同窓会に顔を出し、質問攻めにあったという。彼氏はできたか、彼氏をつくらないのか、良ければ誰か紹介しようか……など、交際関係に終始したという。


「もう二度と、あんなところに行くものか……。よし泉くん。飲み直しに付き合ってくれ」


 ふらつく新宮に肩を貸し、コンビニへと歩き出す。吐くことだけは勘弁してほしいところである。

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