第9話 学年レクリエーション③
「絶対勝つぞーーー!」
『オーーー!!』
いよいよ学年レクリエーションが始まる。
僕たちは緑色のゼッケンをつけてサッカーの初戦を迎えようとしている。相手は猛率いる2組。猛は小学生のときはずっとサッカーをやってた。僕も一緒にサッカーチームに入ってプレーしていた。僕的には猛のほうが上手いと思っているのだが、本人はあまり自分の上手さに気がついていないようだ。
「両チーム、整列!」
審判役の2組の担任の先生が言った。僕の目の前には猛がいた。かなり闘志を燃やしているようだ。
「それでははじめます!礼!」
『お願いしまーーーす!』
僕はちょうど目の前にいた猛とよろしくの握手を交わした。言葉は発さなかったものの、ものすごく張り切っているようだ。
「それではいきます。ピーー!」
先生が試合の合図を告げる笛を鳴らした。鳴らした瞬間に応援していた1組の女子が「キャーーー」と声を上げた。女子はどうせ、誰がどんなことをするかを見たいだけなのだろう。口々に男の子の名前を出している。
……
「ピッピッピーーーーー!」
試合の終わりを告げるホイッスルがなった。結果は僕たちの圧勝だった。5-0。
猛は案の定、肩を落としていた。
『ありがとうございましたーー!』
御礼の挨拶をしてベンチになっているテントに入った。すると女子が前に一列にならんで
「男子のみなさんお疲れ様でした。次は女子だから応援よろしくね。」
そういって頭を下げてきた。はっきり言って「はいはい。」って感じだった。
「瞬、お疲れ様。2点も決めるなんてすごいじゃん。」
タオルを渡しながら晴海が言ってきた。
この試合は2ゴール2アシストの活躍だった。
「お前は俺が小学校のころサッカーしてたのを覚えてないか?」
「ああぁ、そういえば習ってたね。」
「試合になったら必ず見に来てたくせに。」
「まぁ、それは変えられない事実だね。でも、あんまりはしゃぎすぎないでね。怪我したら収録とか大変でしょ?」
晴海は最後の一文は声を落としていった。幸い周りの誰にも聞こえていないようだ。
「心配すんなって。俺の体はそんなにぼろじゃない。」
「確かに。私ドッチボール頑張るから応援しててね。」
「もちろんじゃん。好きだよ。」
走り去りゆく晴海の後姿に言った。
「バカっ!」
顔が真っ赤になりながらも、何とかごまかそうとしていた。
人に注意しながら晴海はそのあとの試合で突き指して指に包帯をぐるぐる巻きにされた。
なにやってんだか…