第一章 前編
視界が真っ白に染まった。
その瞬間、辺りは瓦礫と炎に包まれていた。
炎。
その色は見慣れた紅蓮の色ではなく、普通ではあり得ない純白の炎。
それは、風になびくウェディングドレスの様に美しくも、揺るぎなき灼熱の炎は瓦礫の山を溶岩の様にドロドロに溶かしていく。
その瓦礫の下敷きになっている女が力無く顔を上げ、前に立つ白髪の少年を見た。
「き、貴様...。そんな、まさか...」
「.........」
白髪の少年が女を一瞥し、そして―――
「.........ッ」
手に持った刀を一振りした。
視界が真っ白に染まった。
(一区切り)
高校二年の夏休み、部活に入っていない俺、『織坂 白焔』は、家でごろごろしながら夏休みを優雅に潰していた。
『最近名古屋駅の近辺で猟奇的殺人事件が多発しています。被害者は皆腹部を鋭い刃物で切り開かれ、臓器が抜かれた状態で発見されているとのことです。犯人は未だに捕まっておらず、警察では――――』
と、ラジオのニュースで女性アナウンサーが喋っている。
「猟奇殺人事件、ねぇ...」
ほとんど家から出ない俺にとっての関係性は皆無だな。
「...暇だ」
ラジオを聴きながら独り言を呟いてみる。
別にテレビが無いわけじゃない、寝転びながらボーッとしているためテレビよりラジオの方がいい。
ピンポーン。
とはいえ、部活に入る気はねぇんだよなぁ...。
しばらくボーッとしているとラジオから、
『ただいまの時刻は、午後二時です。』
と、聞こえてきた。
もう二時か...。
ダラダラしてると一日が短く感じるな...。
ピーンポーン。
俺は今狭いマンションに一人暮らしだ。両親の顔は見たことがない。
俺は駅前の大きなビル等の間の小さな路地に捨てられていたらしい。
そんな俺を拾ってくれたのは―――
ピンポンピンポンピンポーン。
「あ゛ぁ! うるせぇなさっきから!」
誰だよっ!
ベットから起き上がって玄関へズカズカと早足で向かう。
ガチャリと鍵を開け、勢いよく扉を開けてやる。
「なんだよっ!」
「遅いっ! これだけインターホン押したのに何ですぐに出てこないのよ!」
と、言いながら俺の脛をつま先で思いっきり蹴ってきやがった!
「ってぇ! 出会い頭に何すんだテメェ!」
こいつは『神谷 真琴』、俺の幼馴染みで俺を拾ってくれた人の娘だったりする。
橙色のストレートヘアーで、背丈は150cm後半、身体は引き締まっていてスタイルは抜群。
ただし、スタイルは、だ。
生意気で意味のわからないところで突然キレるし、暴力は平気で振るうわで性格は最悪、俺はその理不尽な暴力を日々受け続けている。
...はぁ...。
俺頑張ってると思わないか...?
まぁ、こいつには実際世話になっているから許しているんだが。
「あんたねぇ、人がこうやって生存確認に来てあげてるんだから感謝こそすれ、私を神として崇めることくらいしなさいよね!」
そう、こいつはよく「生存確認よ。」とかいって家に来て、例のごとく罵声と暴力を浴びせて帰っていく。本当に迷惑な女だ。
「ことくらいって軽々しく言うな! どんな宗教だよ! 逆に見てみたいわ!」
「その名も、真琴教!」
「うわぁ...。幼稚園児でも思い付きそうな低レベル且つ単純な名前キター...」
「信者は毎月月収の三分の二を私に収めなければならない。」「信者たち不利益すぎだろ! 馬鹿過ぎるだろ!」
「ちゃんと利益もあるわよ? 週に一度私の生足で頭を踏んでもらえるの。」
「...こいつを放っておいては駄目な気がしてきた。」
そう言って俺は扉を閉めようとするが、
「ちょーっと待ちなさいよっ! まだ用件は済んでないの!」
扉の間に足をはさんで閉められないようにしてきた。
なんなんだよ、まったく...。
「もう生存確認は済んだだろ?! さっさと帰れ!」
「他に用があるの! いいから開けなさいよっ!」
「い、嫌だ! どうせ一発殴らせろとか金よこせとかだろーが!」
「はぁ?! あんたのの中で私はどういうキャラ設定なのよ!」「そんなの決まってるだろ! 生意気で、短気で、暴力的で、そして―――」
「あんたそれ以上言ったら!」
「―――貧乳だ!」
と、突然はさんでいた足が引かれて扉が勢いよく閉まった。
い、言ってしまった...。
恐る恐る扉を開いてみる。
「――ッ!」
そこには修羅のオーラを纏った真琴が立っていた。
「........」
や、やばい...! これはかなりマズイ!
「あ、あのぉ~...。 真琴...さん...?」
無言のまま歯を食いしばって俺を見た、目尻には涙を浮かべている。
「言ってはならないことを言ってしまったわね...」
震える声で言った真琴の握りこぶしがわなわなと小刻みに震えている。
「い、いや、ほら、これは...その...。 ...あっはは」
最高の笑顔を魅せてやった。
「死ねぇ! ハクぅ!」
このあとの展開はいうまでもない...。
(一区切り)
俺は小一時間正座させられていた。
真琴はというとソファーに座り、足と腕を組み、そっぽを向いている。
「だから悪かったって...」
「.........」
さっきからずっとこの調子だ、全く口を聞いてくれない。
あ~...。 身体中が痛い...。
散々真琴に殴る蹴る等の暴行を受けたからな...。
「すまなかった...。このとおりだ」
といって土下座する。
「...で?」
「へ?」
「お詫びは何も無いのかって聞いてんのよ!」
「お詫びだぁ?」
またこいつ調子に乗って偉そうなこと言いやがって!
だが反抗するとまた面倒なことに発展しかねない、ここは我慢だ。
「それじゃあ私が決めるわね」
あぁ...。 嫌な予感しかしねぇ...。
もうこうなったら金でも何でも払ってやれ!
「.........」
なんでこいつ赤面してんだ? 益々怖いぜ...。
「......に...あって。」
「ん? なんて言った?」
「私の買い物に付き合って!」「...え?!」
「そんなことでいいのか?」
「な、なによ。それじゃあ私の奴隷三年コースの方がよかった?」
「いえ、前者の方でお願いします。」
もう一度丁寧に土下座する。
真琴の奴隷...。想像しただけで自殺もんだな。
真琴は未だに赤面して俯いたままだ。
真琴のことだ、きっとなにか企んでいるに違いない。
「買い物くらい一人でいけよ...」
俺がグチグチと文句を垂れていると、
「だ、だって最近の名古屋物騒じゃんか。私が殺されても良いっていうの?」
「いや、そうは言ってねぇけどよ...」
「だからあんたはボディーガードよ。」
お前の腕っ節だったらボディーガードなんて必要ねーだろうが...。むしろ俺を守ってくれと言いたい。
そう思いながらも、
「行くんだったら早く行こうぜ。もう三時だ、日が暮れちまうぞ。」
「あ、う、うん!」
真琴はやけに嬉しそうだ、絶対何か企んでいる。 どうか死に至らない程度のものにしてほしい...。
「そ、それじゃあ、四時に駅前の噴水の前で待ち合わせね!」
「は? 待ち合わせ? 今一緒にいるだろうが。」
「いいから! もう...ばか...」
よくわからんがまぁいいだろう。
「はいはい、また後で」
そういうと真琴は上機嫌のまま家を出ていった。
(一区切り)
なんだかんだで家に居てもやることがなかったら俺は三十分早く来てしまった。
「やっぱりちょっと早く来すぎたか?」
まだかなり時間あるから飲み物買ってくるか。
と、自販機を探しに行こうとしたら、
「え?! あ、ハ、ハク?!」
真琴がいた。
「ま、真琴。もう来てたのか、まだ早いんじゃないのか?」
「それはお互い様でしょ!」
「.........」
「.........」
お、おい。黙り込むなよ、気まずくなってくるだろ...。
「じゃ、じゃあ早いけどもう行くか?」
「う、うん...」
なんだこいつ...。なんかいつもより大人しくて逆に怖いぞ...。
顔も妙に赤いし、もしかしてこいつ―――
「大丈夫か? なんか顔赤いぞ、風邪でもひいたか?」
と、心配してやると、
「なっ! だだ、大丈夫! 私は至って健康よ!」
逆ギレされた。なんなんだろうこいつ。
「ならいいけどよ。で、どこに行くんだ?」
「私欲しいアクセがあるのよ。まずはそこ。」
「へいへい」
しばらく歩いていると、
「あぁ~! あの服可愛い~!」
とかいって女性向けの服屋へと向かって突然走り出した。
「ちょ! 待てよ!」
俺も追いかけようと走り出した時、
ドンッ!
「―――ッ!」
人の思いっきりぶつかってしまった。
「痛たた...」
ぶつかった女性は鞄の中身を派手にぶちまけて尻餅をついていた。
「あ、す、すみません!」
と謝ってから、落ちたものを一緒に拾う。
全て拾い上げて前を見ても真琴の姿はない。
服屋の中を覗いてみてもいない、試着室かと思いきや今治全て空いている。
「どこいったんだあいつ?」
携帯を取り出して真琴の携帯に電話をかけてみる、が、どれだけまっても電話に出ない。
手当たり次第に歩き回って「真琴ー! いるかー?!」と呼びかけてみる。
一時間以上探しても見つからない。
俺はもう一度携帯に電話した。「頼む! 出てくれ!」
そのときブツッという電話にでる音がした。
「ま、真琴か?! お前今どこに――」
『お掛けになった電話番号は、現在使われていないか電源が入っていないため掛かりません。番号をおた――』
どうしてだ?
さっきまでは繋がってただろ?!
電源を切るにしても理由がわからねぇ。
本格的に心配になってきた...。
ふと、昼のラジオのニュースを思い出す。
『最近名古屋駅の近辺で猟奇的殺人事件が多発しています。被害者は皆腹部を鋭い刃物で切り開かれ、臓器が抜かれた状態で発見されているとのことです。犯人は未だ捕まっておらず、警察では――』
背中に悪寒が走った。
考えすぎだと思いながらもその悪い妄想をかき消すことが出来ない。
「くそっ!」
俺は無我夢中で走った。
「手間かけさせやがって!」
ふと、高層ビルと高層ビルの間にある細い道の入り口で足を止めた。
ここはなんか変な感じがする、具体的には言えないが変なんだ。
正直怖い...。
だけど、
「行かなきゃ駄目だよな...」
意を決してその細い道を進むと、そこはT字路になっていた。
嫌な予感がする。
ここを右に曲がったらなにかがいる。 根拠はない、あくまでそんな感じがすると言うだけだ。
すると、
「うっ!」
突然鼻をつんざくような死臭が辺りを立ち込める。
この先に行っては駄目だ!
本能がそう警告してくる。
でもこの先に真琴がいるかもしれない。
感情が攻めぎ合う、心臓の鼓動が速い、足はガクガクと震えている、脂汗がダラダラと流れて止まらない。
それでも。
俺は、突き当たりを右に曲がった。
そこで見たものは、
真琴と一人の女、それを取り囲むように積み上げられた無数の人間の死体だった。
To be a continue
初めましてみなさん。Dragoon と申します。
今回初めて投稿させていただきました。
動機は....暇だったから何となく書いてみただけです、以上!
すみません...w
真面目に書きましょうw
この話はシリアスな場面が多くなると思うのでギャグを入れるところがあまりなかったりするんですよね。
舞台を名古屋(名古屋駅周辺)にした理由は、自分の住んでるところだからです!w
この話を読んでくれた方々、本当にありがとうございます。まだまだ続きを書いていくつもりなので続きが気になった方は是非読んでください!