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水のように、赦して

仕事を終え、

帰宅してからずっと

Tの前では平静を装いながらも

Kは激しい焦燥に駆られた。


死んだ筈のJはCに憑依したか

或いは守護霊なのか、

いずれにしても何らかの形で

まだこの世を彷徨っている…

Kの中でその思いは確信に変わっていた。


”葬式に出なかった事を詫びたい”


高校時代の色んな事、


”自分も悪かった”


と謝りたい。


そしてCの身体を借りて

自分の前に現れた彼女の目的は一体何なのか?


食事と入浴を済ませたKは

精神的に参っていたためか

早めにベッドに入った。

隣にはいつものように、

長い髪を乾かし終えたばかりのTが

静かに潜り込んで来る。


ベッドの上で落ち着かないKの頬を

Tの掌がそっと撫で回した。


「K、眠れないの?」


『ぁあ、でも、大丈夫だよ…』


「ゆっくり、ゆっくり休んでね…」


と言いながら

TはKの首元から胸元へと

丁寧に何度もやさしく触れた。

細く柔らかな指先の心地よい触感に

徐々に落ち着きを取り戻したKは

それまでの緊張感が途切れたのか

やがて微睡へと沈んで行った。


Kが眠りに就くと

Tはベランダに出て星々が輝く空に

呟くように話しかけた。


「Jさん、聞こえる? Jさん?.....


もう苦しまなくていいんだよ。


門番さんからお赦しが出たんだよ。


あなたはCさんを縛る鎖を断って


自由にしてあげたじゃない、


だからもうここにとどまって苦しまなくていいの。



…赦してあげてね…Kのことも、



もちろんあなたのお母さんの事も。。。



二人ともきっと


あなたを本気で傷つけたかったわけじゃない。


誰かの彷徨う霊や魂の悪戯で


すれ違ったり傷つけあったりしたかもしれない…


でもそれももうこれで終わり。


Jさん、


あなたはもう、


遠い遠い空の上まで翔んで


永遠にやすらぎの中にいられるようになったんだから…



あとはCさんを自由にしてあげてね。


あなたのおかげで


きっと彼女は


自分の人生を自分で切り開いていけるはずだから…



やすらかに…Jさん….、 」




自らの心が自然の摂理と同化していたTには

誰にも明かしていない秘密があった。

彼女は Kの心の中に誰かがいた事も

それが誰だったのかも最初からずっと見通していた。

小さな頃からTは

自己の不思議な神通力に気付いていたが

彼女の根源的な智慧によって一切他言はしなかった。

そしてそれはこれからも

誰にも知られぬままなのだろう。



翌朝Kは

まるで憑き物が落ちたかのように鮮やかな顔色で

元気に出勤していった。


Kはもう

Jの姿を探すことも

Cに心を動かされることもないだろう。


彼もまた、赦されたのだ。。。


(終)

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