表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/36

判定の余波

神殿を出た途端、石畳の上に冷たい風が吹き抜けた。


ケイタは肩で息をしながら拳を握りしめる。


――判定不可。


誰もが驚き、誰もが黙り込んだ。




ギルドに戻ると、応接室にはマスターや幹部たちが集まっていた。


机上に置かれた報告書には、神官が震える字で書いた一行がある。




――加護、判別不可。




「……普通ならな、力が弱すぎて反応を拾えないって意味だ」


幹部のひとりが腕を組んで吐き捨てる。


「だが、あの戦いぶりを見りゃそれはねぇ。報告にどう書けってんだ」




「“不可解”とでもしておけ」


マスターが短く言い捨てる。


その声には苛立ちではなく、むしろ妙な慎重さが混じっていた。




横でリシアが口を開く。


「私の加護も……本当は“護り”って言われてました。でも、神官様は“揺らぎが大きすぎる、珍しい例だ”とも……」


不安げな声。だがその奥には、決意が滲んでいた。




幹部たちの視線が揺れる。


「護り、か。だが魔力の出力は異常に高いと聞く」


「なら、未熟な判定が誤った可能性もあるな」




そのとき、セレイナが一歩前へ出た。


紅玉の瞳がケイタを見据える。


「不可解。……ええ、確かに。けれど――無ではないわ。むしろ、“隠されている”のではなくて?」




「……っ」


ケイタは答えられなかった。


彼自身、何が自分の中に眠っているのか分からない。




「ギルドとしてはどうする?」


別の幹部が問うと、マスターは顎を撫でて言った。


「結論は急がん。だが“力を持たぬ無能”と切り捨てるのは早計だ。……様子を見ろ」




短くそれだけを告げ、席を立つ。


応接室に残ったのは、言葉にしきれぬざわめきと、


ケイタの胸奥で燻る焦燥感だった。




(……判定不可。俺は一体、何なんだ?)







廊下を歩くとき、セレイナが隣に並んだ。


「ねぇ、ケイタ。――もし本当に“隠されている”のだとしたら」


紅玉の瞳が、彼の横顔を覗き込む。


「その力をどう使うつもり?」




一瞬、返事に詰まる。


けれど思い出す。二度と後悔しないと、胸に刻んだあの日を。




「……守る。俺は、そう決めてる」




セレイナは何も言わず、ただ小さく笑った。


それは挑むようにも、試すようにも見える笑みだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ