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帰還の報告[ケイタパート]

ギルドの重い扉を押し開けた瞬間、ざわめきが広がった。


煤と血の匂いをまとった調査隊が戻ったと知り、酒場の喧騒が一気に静まる。




「戻ったか」




カウンター奥から姿を現したギルドマスターの眼光が、まっすぐにケイタたちを射抜いた。


すぐに応接室へと案内され、卓の上に地図が広げられる。




「……で、何を見た」




ケイタは深く息を吸い、言葉を選びながら答えた。


「森の奥で――召喚の陣形のような“兆し”を発見しました。未完成でしたが、放置すれば完成し、魔物が呼び出される可能性が高いと」




術士が頷き、黒焦げの羊皮紙を卓上に置いた。現地で写し取った図だ。


幾何学と曲線が重なり、見慣れぬ紋が蠢くように描かれている。




「さらに……そこで炎の魔獣に遭遇しました。イフリートに近い力を持つ存在です」




ざわめきが広がる。


幹部の一人が目を剥いた。


「この辺りで……イフリート級だと!?」




セレイナが静かに口を開いた。


「間違いありません。紅蓮の魔力を直に感じました。ケイタがいなければ、私は……」


一瞬だけ言葉を濁し、紅玉の瞳を伏せる。




マスターは腕を組み、低く唸った。


「召喚の“兆し”……そして実体化しかけた魔獣。これは偶然じゃねぇ。誰かが意図的に動かしている」




「本格的な調査が必要だな」


別の幹部が重々しく頷く。


「最低でも主力三組、場合によっては五組投入して、奥地を洗いざらい探る必要がある」




マスターはしばし黙考したのち、ケイタに視線を向けた。


「小僧。お前も同行してもらう。現場を歩いた感覚と、実際に戦った経験は何よりの資料だ」




ケイタは背筋を伸ばし、力強く頷いた。


「はい」




セレイナもすぐに言葉を重ねる。


「私も行きます。炎の魔力を見逃すわけにはいきません」




「勝手は許さんぞ」


マスターは鋭い視線を投げる。だが、止める言葉は口にしなかった。




重苦しい空気の中で報告は終わり、解散の声がかかる。


扉を出たところで、セレイナがふっと息を吐いた。


「……あなた、本当にただのEランクなの?」




ケイタは肩をすくめ、苦笑した。


「どう見える?」




セレイナの瞳が、僅かに揺れた。


「……分からない。だから、もっと知りたくなる」




その言葉は夜の静けさに溶け、ケイタの胸に妙な余韻を残した。



今回は短いのでもう一本後で更新予定です

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