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魔力の素質[リシアパート]

鍛冶場の裏庭。


陽が傾き、赤銅色の光が差し込む中、リシアは汗で濡れた額を拭いながら膝をついた。




「……はぁ、はぁ……っ」




掌に集めた魔力が、また霧散する。


熱は感じるのに、形にならない。


焦りと苛立ちで胸が詰まりそうだった。




「落ち着け。吐いて、吸え。力を“溜めよう”とするな、ただ流れを感じろ」




ブラッドの低い声が響く。


リシアは深く息を吸い込み、再び掌に意識を集中させた。


血の流れに沿って、温かな光が巡る。


今度は――一瞬だけ、小さな火花がぱちりと弾けた。




「……っ、できた!」




「ほぉ……」




ブラッドが片眉を上げた。




(おいおい、なんてぇ滑らかさだよ)




リシアの魔力の流れを注意深く見ていたブラッドは驚愕を隠せなかった。




火花はすぐに消えたが、それでもリシアは胸を高鳴らせていた。




「私……魔力を、感じられる……」




「感じるどころか、桁外れだ」




鍛冶師の声には重みがあった。


「並みの魔術士じゃ一生かけてもここまでロスなく魔力を扱えねえ。お前は……魔力の器そのものが違う」




「……!」




リシアの胸に熱が灯る。


だが、すぐにその熱は決意へ変わった。




(そうだ。剣だけでは足りない。私には、魔法がある――!)




村を守るために強くなると誓ったあの日から、ずっと剣を握ってきた。


けれど、それは自分に合った武器じゃなかった。


もし本当に戦う力を手に入れるなら――魔法しかない。




リシアは真っ直ぐに顔を上げた。




「ブラッドさん。私、魔法を学びたい。もっと強くなるために」




「……ふん。そう来ると思った」




彼は煙に焼けた手を組み、空を仰いだ。


「だが前にも言った通り、俺は剣と槌の男だ。基礎の魔力操作くらいは叩き込んでやれるが……魔法の技までは教えられねぇ」




リシアの瞳に影が落ちる。




「……じゃあ、私は……」




「勘違いすんな。お前を放り出す気はねぇ」




ブラッドはニヤリと口の端を上げた。




「――街外れに、一人いる。変人で、奇人で、誰も関わりたがらねぇが……魔術の腕は確かだ。お前を本気で鍛えられるのは、あいつぐらいだろう」




「変人……?」




リシアは思わず首を傾げたが、すぐに拳を握りしめた。




「……いいです。どんな人でも。強くなれるなら」




その声には迷いがなかった。




ブラッドはしばし彼女を見つめ、肩を竦めた。


「やれやれ……。ケイタの相棒だと思ったら、こっちもとんでもねぇ覚悟を持ってやがる」




リシアはうっすら笑った。


「私は、守りたいんです。村も、仲間も……そして――」




言葉を濁したその先を、炉の火がさらりと飲み込んだ。




ブラッドは鼻を鳴らし、再び腕を組んだ。


(嬢ちゃん、運がいいのか悪いのか……だが間違いなく、大化けするぜ)





赤い炎の光が、彼女の横顔を照らしていた。

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