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燃える炉と芽吹く才 ― リシアの決意[リシアパート]

ギルドの応接室を出てから、胸の奥に重たい塊が居座り続けていた。


「――今回はケイタだけだ。お前はまだ力不足だ」


ギルドマスターの言葉が何度も頭をよぎる。




わかっていた。自分が足手まといであることくらい。


でも、こうしてはっきり突きつけられると、胸がひりつくほどに痛む。




(このままじゃ……村を守ることなんてできない。ケイタさんに守られるだけで終わっちゃう……)




思い出すのは故郷の村。


父や村人たちが必死に耕す畑。小さな子供たちの笑顔。


あの人たちを守るために、強くなりたいと決意して街に出たはずだった。




「……私、変わらなきゃ」




だからリシアは、自然と鍛冶場へ向かっていた。


あの男――ブラッドの言葉を思い出したからだ。




「俺は若い頃、剣一本で“赤牙”って呼ばれてた冒険者だった。これでもAランク冒険者だったんだぜ!でもな、何人も仲間を失っちまった。冒険者ってのはそういう世界だ」


ケイタからの問いかけに答えた後、炉の炎に向かいながら呟いたその声を、彼女はずっと胸に刻んでいた。




――




「……お願いします。私を、鍛えてください!」




煤まみれの大男は腕を組み、リシアを見下ろした。


しばしの沈黙の後、木剣をひったくるように取り上げ、冷たく告げる。




「小娘、まず一つ言っといてやる。お前に剣は向いてねぇ」




「……っ!」


予感はしていたが、胸に突き刺さる。




「振る手に無駄な力が入りすぎだ。足の踏ん張りも甘い。何より――」


ブラッドの目が鋭く光った。


「剣を振るたびに全身の魔力が暴れてる。軸がぶれてんだ」




「ま、魔力……?」




思わず自分の手を見ると、微かに赤い光が滲む気がした。


ブラッドは重く頷く。




「やっぱりだ。お前は剣より魔法の才がある」




「!」




「だが勘違いするな。俺は魔術師じゃねぇ。教えられるのは“魔力の扱い方”までだ。基礎を固めれば、剣を握るよりよっぽど伸びる」




リシアは息を呑み、拳を握った。




(村を守るには……どんな形でも強くならなきゃいけない)


(それに……ケイタさんと並ぶためにも……!)




「……お願いします! 魔法でも何でもいい。強くなりたいんです!」




ブラッドはしばし無言で見つめ、やがてにやりと笑った。




「いい目だ。――わかった。赤牙ブラッドの名にかけて、最低限の土台は叩き込んでやる。外に出ろ。まずは呼吸だ」




「呼吸……?」




「吸って、吐いて、巡らせる。魔力は炎と同じだ。抑えられなきゃ、周りを焼くだけだぞ」




リシアは胸の奥で拳を固め、決意を燃やす。




(次こそ――村も、ケイタさんも、守れる私になる)




炉の赤光が彼女を照らし、その瞳は燃えるように輝いていた。

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