白の世界
少し書き溜めてますが、最初なんで数話くらい更新します
なにもない、果てのない白の世界。
俺はその空間で、誰かと向かい合っていた。
靄に覆われたその人物は輪郭こそ見えるが、顔も声も、どこか現実感を欠いている。
夢の中のような存在感だ。だが確かに「次元が違う」と感じさせる圧があった。
「俺は――――だ!」
迷いなくそう答えた俺に、相手は鼻で笑った。
「ははっ……言うじゃないか」
靄の向こうの声は冷ややかで、どこか愉快そうだった。
「だがそれは、現実を知らぬ子供の戯言だ。お前がその言葉を“本当に”貫けるかどうか……見ものだな」
挑発するように、わざとゆっくりと言葉を突きつける。
「そんな理想、すぐに折れる。恐怖や絶望を前にしてなお、お前はその言葉を守れるのか?」
胸の奥がざらつき、反論しかけたその時――相手は大仰に両腕を広げ、声を張った。
「いいだろう。じゃあ――賭けをしよう」
「賭け……?」
「ああ。面白いだろ? こういうのはどうだ」
淡々と語られる条件。理解しきれぬまま相槌を打ち続ける。
最後に、そいつはふっと笑った。
「ただし、このやり取りはお前の記憶から消える。覚えていたら賭けにならないからな」
「……それもそうですね。いいですよ」
自分でも驚くほど、俺は即答していた。
「お前がもし――――になれたとき、もう一度会おう。そのとき、すべて返してやる」
声は愉快そうに響き、やがて白に溶けていった。
次の瞬間、俺は現実へと叩き落とされた。




