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告白 ― 力の真実

依頼を終えて街へ戻った夜。


治療院で簡単な手当てを受け、俺とリシアは宿の一室に腰を落ち着けていた。


ランプの明かりが揺らぎ、窓の外からは遠く酒場の喧噪が漏れてくる。




静かな空気の中で、リシアが口を開いた。


「……ケイタさん」




「ん?」




彼女は少し唇を噛み、俺を見据えた。


「イフリートを倒せた理由……ずっと聞きたいと思ってました。あんなの、普通の剣じゃどうにもならないはずなのに……」




俺は息を呑み、しばらく黙った。


隠しておくべきか――そんな考えが頭をかすめたが、すぐに振り払った。


(……一緒にやっていくって決めたんだ。なら、隠し事は無しだ)




「……リシア。実は俺には――ちょっとした“力”がある」




「力……?」




俺は拳を握り、深呼吸してからゆっくりと言葉を紡いだ。


「戦いの最中、周りの時間が遅くなる瞬間があるんだ。世界の動きが泥の中に沈むみたいに鈍って……その間、俺だけは普通に動ける」




リシアが目を見開いた。


「……時間が、遅れる……?」




「そうだ。俺自身の速さが上がってるわけじゃない。けど相対的に、俺は何倍も速く動ける。


 速さはそのまま衝撃力になる。衝撃は運動エネルギーに比例する……つまり速度の二乗だ」




「二乗……?」




「速さが二倍なら威力は四倍。三倍なら九倍。十倍なら百倍。


 だから俺は、普通なら斬れないイフリートの肉を断ち割れた」




リシアは言葉を失ったように俺を見つめていた。


信じがたい話だろう。だが真実だ。




「……でもな」


俺は苦く笑う。


「この力には代償がある。時間が遅れるたび、俺の身体にはとんでもない負担がかかる。筋肉は裂けるみたいに痛むし、内側から火に焼かれてるみたいだ」




リシアの顔が曇った。


「そんな……じゃあ、使うたびに……」




「命を削ることになる。だから、本当にピンチの時しか使わないって決めてる」


言葉にすると、改めてその決意の重みが胸に響いた。




「……だからこそ、俺自身が強くならなきゃいけないんだ」




リシアが小さく瞬いた。


「自分が……?」




「そうだ。力に頼りきりじゃ、いずれ潰れる。


 俺が剣を振るう力、判断力、体力……全部が底上げされなきゃ、この力は使いこなせない」




そこで俺は笑みを浮かべ、彼女に向き直った。


「毎朝、鍛錬してるんだ。剣の素振り、走り込み、基礎体力作り。……リシア、お前も一緒にやらないか?」




リシアは目を丸くした。


「わ、私も……?」




「お前は村を守りたいんだろ? そのために強くなりたいって言った。だったら、俺と一緒にやろうぜ」




短い沈黙。


やがてリシアは小さく笑い、頷いた。


「……はい。私も、強くなりたいです。ケイタさんと一緒に」




胸の奥で熱が灯るのを感じた。


イフリートとの死闘を経て、ようやく――俺たちは正式に、二人で歩み始めたのだ。


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