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リシア、冒険者登録す!

昼下がりのギルド。


俺とリシアは並んで大扉を押し開けた。




がやがやと賑やかだった空間が、一瞬で静まる。


そしてすぐに、ざわつきが広がった。




「おい……“岩殺し”が来たぞ」


「ほんとに岩を両断したって話はマジだったらしいな」


「ギルドマスターに一撃入れたの、俺も見てた……あれは本物だ」


「でもEランクのままなんだぜ? どう考えてもおかしい」


「裏があるに決まってる。……認めちまったら、俺らの立場がねぇ」




笑い声も混じる。


だが、それは以前のように「無能を笑う」声じゃなかった。


どこか引きつったような、警戒と疑念がにじむ笑いだった。




俺は何も言わず、ただリシアと並んでカウンターへ向かった。






受付嬢が書類を整理していた手を止め、こちらを見た。


その視線には驚きが混じっている。


まあ、俺と一緒に女の子が堂々とギルドに現れるなんて思わなかったんだろう。




リシアは一歩前に出た。


小さく息を吸い、迷いのない声で告げる。




「私、リシア・フェンデル。冒険者登録をお願いします!」




静まり返ったギルドに、その声が響いた。




「……村娘が?」


「マジかよ、命知らずだな」


「けど、目が冗談じゃねぇ……」


「ケイタと組む気か?」


「くそ、やっぱりあいつ……ただの無能じゃねぇのか」




ざわつきは揶揄と畏怖と興味が入り混じり、複雑な色を帯びていた。





受付嬢は少しの間リシアを見つめ、それから真剣な顔で頷いた。




「……承りました。ただし、覚悟は必要です。冒険者は危険と隣り合わせ。命を落とすことも珍しくありません」




「わかっています。それでも、なりたいんです」




リシアの言葉は強かった。


ほんの数日前まで命を落としかけていたとは思えないほどに。




受付嬢は羊皮紙を取り出し、差し出した。


「ここに署名を。これで仮登録です。依頼を数回こなせば、正式にランクが与えられます」




リシアは迷わずペンを取り、筆を走らせた。




その瞬間、後ろからひゅうっと口笛が飛んだ。




「おいケイタ、相棒ができたじゃねぇか!」


「村娘なんて何考えてんだお前!」


「……いや、でもケイタの実力が本物ならあの村娘はラッキーなんじゃねぇか?」




笑いと冷やかし。だが、そこには確かに一抹の期待が混じっていた。






登録を終え、ギルドを出た夕暮れ。


二人で並んで石畳を歩く。


赤い陽光が建物の影を長く伸ばし、少し肌寒い風が吹いた。




しばらく沈黙が続いたあと、リシアが口を開いた。




「……ケイタさん」


「ん?」


「本当に……いいんですか? 私なんかと組んで」




足を止め、リシアは俯いたまま拳を握りしめる。




「私、まだ何もできません。きっと足を引っ張るばかりで……ケイタさんの迷惑にしかならないんじゃないかって」




その声は震えていたが、必死に抑えているのが分かった。




俺は少しだけ笑って答えた。




「馬鹿言え。最初からそのつもりだ」


「……でも」


「足手まとい? そんなの気にしてねぇよ」




空を見上げながら言葉を続ける。


「俺だってずっと無能だの何だの言われてきた。……でも、あの時、お前を守りたいって思った。だから戦った。それだけだ」




リシアは驚いたように目を見開く。




「……守りたい、って」




「そうだ。俺一人じゃ無茶して死んでるかもしれない。だからお前が隣にいてくれた方が、むしろ安心するんだ」




「リシア。俺はお前とやっていきたい。一緒に強くなろうぜ」



「…………(守りたい、か)」


リシアの目に光が揺れた。


やがて小さく笑みを浮かべ、頷く。




「……はい。私も、一緒に強くなりたいです。村のために……そして」


そこで言葉を濁したが、それ以上は言わなくても十分伝わった。




俺は手を差し出す。


リシアは少し戸惑い、それから両手でぎゅっと握り返した。




「よし、これで正式にコンビだな」


「はいっ!」




夕暮れの風が吹き抜ける。


それは、確かに新しい始まりを告げていた。

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