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宿命の少年たち 〜因果に囚われ、殺し合う〜  作者: 如月
第二章 青年時代・アドル編
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035 東街

「なっ……!!」

「街が燃えているわ!!」


 アドル一行は王都より特に何事もなく順調に旅を続けていたが、しかし状況は一変する。

 アドル一行の目指していた街がまさしく炎に包まれており、そればかりか壁にまで大穴が開けられていたからである。


「くっ、皆早く行こう!!」

「ええ、早く助けないといけないわ。」

「アドル達は先に行ってください。私達は後で追いかけます。」

「うん。分かった。プリマを頼んだよ。」


 プリマの言葉にアドルとエレナは頷きを返して、街へと駆け出していく。

 その後をプリマたちも追いかけるが、やはりその速度は二人に比べれ遅く、どんどん距離を離されていった。


「お任せくだせぇ。」

「ん。分かった。」




 アドルとエレナがたどり着いたときには町は阿鼻叫喚の地獄絵図であった。

 そこら中に人の死体が投げ出されており、中には焦げた物や食いちぎられたもの、千切れとんだものなど様々な欠損が見られる死体で散らばっていた。

 また、人の死体だけでなくウルフ系やゴブリン系、ラビット系など多種多様な種族の魔物の死体も落ちており、壮絶な戦いが繰り広げられたのはよくわかる。


「どうなっているんだ?」

「酷いわね。」


 エレナの言う通り、周りは死体だらけで生存者の姿など欠片も見られない。それでも、街の中心部からは人の悲鳴や苦しむ声が絶え間なくあげられており、二人は街の中心に向かってかけていく。


「大丈夫ですか!!」

「あっ、うぁ……。」

「くそっ、誰がこんなこと……!!」


 二人が街の中心部付近に辿り着いたときには響いていた悲鳴の声はだんだんと小さくなっていっており、うめき声をあげながら地面に倒れる重症の人が転がるばかりの酷い有様になっていた。

 そんな中、アドルが一人の重傷者に声掛けをするが、声にもならない声をあげるだけで、その後すぐに力なく地面に伏せた。


「アドル!!」

「うぅ、あっ……ち。おねが、い……。」

「……。」


 エレナの声掛けにアドルはすぐさま駆け寄ると、また別の重傷者がエレナの側に倒れており、その重傷者が指を指しながら二人に乞う様な目線を向ける。

 だが、そんな行動も長くは続かず、この重傷者もまた地に伏したのだった。


「行こう。」

「ええ。」




 二人がたどり着いたところにいたのは魔物の軍勢である。街に転がっている死体と同じ種族で構成された魔物の軍勢で、本来なら共存できない種であってもその場では争いなく同じ空間にあった。

 その中心地には五人の人影があった。中心にいるのは金色の髪をたなびかせた長身の人物。その左隣はうさ耳の生えた長いピンク髪の人型。そして、さらにその左側には青色の短髪の人型。

 金髪の右側には犬耳の生えた黒い髪の人型。そして、そのさらに右側には透き通るような白色の髪を持つ人型。その計五人である。


「人……?」

「……。」


 アドルの呟きに金髪の髪の人物が振り返った。その人物の瞳はルビーのように美しい赤で、燃える炎を反射してより輝きを増している。

 そう、その人物はアインその人である。ここにアドルとアイン、エレナの六年ぶりの再会が叶ったのであった。一番最悪な状況でだったが。


「あ、いん?」

「……アドルか。」

「アイン、これは何かしら?」


 エレンは怒りを立ち昇らせてアインを詰問しようとするが、四人の人型が睨みを利かせており、下手にアインへと近づけないでいる。

 だが、四人の睨みもアインが二人に近づいて行ってしまえば意味はなく、無警戒に二人に近づいていくアインにエレナはさらに怒りを瞳に燃え上がらせる。


「くくく、これとは何だ?」

「アイン!!この街のことを言っているのよ、分かっているわよね!!」

「おぉ、怖い。久しぶりの再会じゃないか。そう怒るなよ。」


 エレナを揶揄うように笑いながらもアインの頭は冷静なようでエレナの間合いの一歩手前で立ち止まり、顎に手を当てて首を傾げる。

 そのアインの仕草にエレナは一歩前に踏み出し、魔力を吹き上がらせると、アインはおどけた様に軽快に後ろに下がっていき、無抵抗を表現するように両手を頭よりも高く持ち上げり。


「アイン!!」

「くくく、分かってる分かってる。見ての通りだ。街への襲撃さ。」

「何故こんなことを?」


 怒るエレナの声には馬鹿にしたような笑みを浮かべて応えるアインだが、アドルの問いかけにはおどけた様子を消し去り、アドルの心を覗くように瞳を見つめながら真面目な表情を浮かべた。


「報復だ。俺たちの仲間を殺した人類に対する報復。」

「……赤色の狼。」

「あ?知っていたのか。そうだ。俺の大切な仲間だった。」


 報復。ただそれのために街を落としたというアインはあまりにも馬鹿らしいかもしれないが、しかしそれだけのことが出来る力があり、実際に実行できてしまうのだ。

 それが一匹の狼の報復というのだから、規模感が狂っている。しかし、アイン本人は真剣そのもので、アドルの質問に嘘偽りなく答えているのだ。


「復讐は何も生まないなんて言ってくれるなよ?そんな戯言を交わすだけ無駄だ。」

「……。」

「それよりアドル。やっぱり俺と来ないか?お前なら歓迎する。」


 先回りするように告げられたアインの言葉にアドルは口を閉じて、アインの瞳と自分の瞳を合わせる。

 その視線をアインは真正面から受け止め、そして、かつてしたようにアドルのことをまた誘うのだった。


「……ははは、答えは変わらないよ。魔物は、人類の敵だよ。」

「……何言ってやがる。こいつらは俺の仲間、……友達だ。」

「だよね。最初から僕らの答えは決まっているよ。」

「だな。今日のところは引いておくぜ。まだ生き残りが居るかもしれないからな、街でも見回ってきたらどうだ?」


 ばちりと二人の間に火花が飛び散る。お互いに道が交わらないことは嫌なほど分かっている。

 今日は意志を伝え合うだけでいい。それ以上をしようとすると双方に甚大な被害が出てしまう。それを避けるために二人は一旦仕切り直しをするのだ。


「……そうさせてもらうよ。」

「「……。」」


これにて第二章は終了です。

第三章は青年時代・アイン編です。おそらく一か月ほどしたら更新再開すると思いますので、それまでお待ちいただけると嬉しいです。

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