029 VSデッドリィファミリー2
ヘレンが本拠地攻略を初めて十数分後、勝手知ったる本拠地の構造は昔と変わっておらず、ヘレンは迷うことなく中を突き進む。
すると、ヘレンが大部屋の中に進むと、怪しげな男が二人上から降ってくる。
「「とうっ!!」」
「ふっ、よくぞここまで来たな。ここからはもう通さない。」
「そう、我ら兄弟がお前を止めてみせる。」
天井から降ってきた怪しげな男二人はその場で大きく手を広げると、ヘレンの進む道を塞いだ。
そして、ヘレンの足が止まるのを見るとそれぞれ右腕と左腕をびしっとヘレンの方へと突き出して、反対側の手で顔を覆っている。
「デッドリィファミリーの幹部が一人、縛鎖のオリバーと。」
「デッドリィファミリーの幹部が一人、連鎖のリック。」
「「二人合わせてロック兄弟だ!!」」
怪しげな男二人は一連の流れを練習していたのか口上までも揃わせて、それに合わせてポーズまでもを変えていく。
二人の声に合わせて背景でどんと花吹雪が舞っているが、せっせと彼らが準備しているのを考えると、なんとも物悲しいものだ。
「……。」
「ふっ、我らの力に怯えて声もあげられぬか。」
「ふっ、我らが力存分に教えてやろう。」
「えぇ、茶番はもういいですかぁ?」
ヘレンは何とも言えない表情で二人の行動を見ていたが、それを何と勘違いしたのか、鼻をならしたロック兄弟は自慢げに胸を張っているではないか。
それをヘレンは心底うんざりしたように茶番と捨て吐き、臨戦態勢に入る。
「「なっ、茶番とは何を言うか!!」」
「無駄に揃っていますねぇ。」
「ふっ、ふふ。我らを舐めるでないぞ。」
「ふっ、ふふ。恐ろしさのあまり気でも狂ってしまったか。」
それにロック兄弟が二人揃って反論すると、ヘレンはがくりと肩を落として、呆れたように二人の行動を見つめていた。
「……そろそろ始めましょうかぁ。」
「「それっ、我らの台詞~!!」」
「こんなの茶番ですよねぇ。」
ヘレンが戦闘に進めようと再度臨戦態勢に突入すると、ロック兄弟は指をヘレンの方へと向けて、叫び声をあげた。
ヘレンは項垂れそうになる頭を必死に堪えて、そのままロック兄弟に向かって駆け出した。
戦闘が開始すると意外なことに、ロック兄弟は中々に強かった。個々人の戦闘能力の高さはもちろんのこと、二人の強さの秘密はやはりその連携力にあるのだろう。
「くっ……。」
「「ふはははは。」」
「うるさいですねぇ。」
ロック兄弟の兄オリバーは基本的に手に持つ鎖鎌を武器に近距離、中距離を担当しており、攻撃により行動の制限をしてヘレンが上手く立ち回れないようにしている。
一方で弟リックの方は魔法による遠距離攻撃を担当しているようだった。兄が足止めに徹しているところで弟の魔法攻撃の嵐を降り注ぎ続けるのだ。
単純な役割分担をしている点が強い。それにお互いがお互いのフォローに回っているため、ヘレンはロック兄弟にできた隙を付けないでいるのだった。
「ふっ、そろそろ諦めたらどうだ?」
「ふっ、無駄な抵抗はよせ。より苦しむだけだぞ?」
「へへっ、諦めるなんて言葉はとうの昔に捨て去っているんですよねぇ。」
ヘレンはロック兄弟の攻撃をどうにか捌きながらも、状況が変化するのを今か今かと待っていた。
致命傷になりかねない攻撃を避け、避けれない攻撃は最小限のダメージになるように身体を捩る。受けに回った時のヘレンの硬さは相当なもの。
「ふっ、このまま堪えれば魔力切れになる。」
「そんな風に考えているのではないかね?」
「……。」
お互いに膠着状態が続き、ヘレンに一方的にダメージが積み重なっていく。
その時、ロック兄弟による口撃がヘレンへと襲い掛かる。
「しかーし、我らに死角なし。」
「我ら兄弟は同じだけの技量を持っているのだ。」
「ふっ、我も魔法を使えるのだぞ。」
「ふっ、我の鎖鎌が飾りとでも思ったか?」
「「ふはははは。」」
ついにヘレンにとって不都合な事実がロック兄弟の口からもたらされる。
魔力切れの心配がないロック兄弟は厄介であり、今のまま状況が変わらなければいずれ積み重なったダメージでヘレンは地面に伏すだろう。
だが、ヘレンに動揺はない。ヘレンが待っている状況の変化はそんないつになるか分からないものでなく、すぐそこまで来ているだろう、その可能性なのだから。
「「なっ、何奴!?」」
「「ヘレン!!」」
「アドル、エレナ!!」
ヘレンの後方よりアドルとエレナがやってきた。そう、これこそがヘレンの信じていた可能性。すぐに支部所を片付けた二人がやってくるという未来。
ロック兄弟の動きが乱れた瞬間、ヘレンは動き出していた。次の階に進むための階段を目指して攻撃をかいくぐる。
「「ここは任せて、先に行って!!」」
「助かりますよぉ。」
「「それっ、我らも言いたいやつ~!!」」
アドルとエレナは声をそろえてヘレンへと言い放った。それを受けたヘレンはもう攻撃を避けることもせず、ただ突っ走る。
ヘレンの行く先を通る攻撃をアドルは打ち払う。それを信じてヘレンはただ出口を目指して走り切ったのだった。
「ふっ、人生で一度は言いたい言葉の一つだわ。」
「「分かるぅ~。って、先に通しちゃったじゃん!!」」
「ふふっ、でも問題ないわよ。この私をここで足止めした。それがあなた達の功績になるのだからね。」
「「ひゅ~、かっくいぃ~。」」
「……この人たちは何なんだ。」
ロック兄弟の軽快な合いの手にエレナは機嫌よさそうにうんうんと頷いている。
それをアドルは理解できないものを見るように見て、ぽつりと誰にも聞こえないくらいに言葉を漏らしたのだった。




