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宿命の少年たち 〜因果に囚われ、殺し合う〜  作者: 如月
第二章 青年時代・アドル編
73/85

023 休暇3

 翌日。昨日も訪れていた商業地区にやってきてのはアドルとプリマであった。

 アドルより先に待ち合わせ場所に付いていたプリマは男に絡まれており、にこやかな笑みを浮かべながらも苛立ちを隠せないよう。よく見ると唇の端がひくひくと動いているのが見える。


「お待たせ。」

「アドルっ……!!」


 花が咲くような笑みとはこのことだろう。先ほどまでの明らかな愛想笑いとは違い、心の底から浮かべたような自然な笑みはプリマの魅力をさらに引き出している。

 その笑みを見た男は驚愕の表情を浮かべながらアドルの方へと振り返る。


「……あっ、てめぇ。昨日の今日で別の女!?」

「昨日のおじさん……。」

「おじさんじゃねぇよ!!」


 なんとアドルとエレナにもちょっかいを出していた男その人であった。彼女に振られた悲しみは女で癒すしかない、ということだろう。

 が、相手がプリマとは相当に運が悪いというしかない。貴族の子女に声をかけても万一もあり得ないだろうに。


「くぅ~。坊主!!」

「は、はい?」

「モテる秘訣を教えてくれ!!」


 がしがしと頭を掻きながら男はプライドを捨て去り、困惑顔のアドルへと頭を下げた。

 先ほどまでしつこいくらいに声が掛けられていたプリマが話の外になっており、少し不服そうな表情で二人のやり取りを見守っている。


「えぇ、別にモテているわけでは……。」

「嘘を吐くな、嘘を。昨日の今日で別の女だぞ!?モテていないなんて、ふざけているにもほどがあるじゃないか!?」

「ただ、パーティーメンバーだから。」


 二日間連続で別の女性と出歩くアドルは傍から見たらモテているとしか思えず、男はアドルへと吠えるように言葉を捲し立てた。

 アドルの最もな回答であるが、果たして男にとっては説得力のあることか。


「くぅ~。パーティーの紅一点、いや紅二点か?それを独り占めするなんて、許せないぜ!!」

「いや、そんなのじゃないけど。」

「……アドル。」


 二人がモテるだの、モテないだのそんな話を続ける中、蚊帳の外に置かれたプリマはついに痺れを切らしたようにアドルの名前を呼んだ。

 プリマの思いのほか冷たい声に男二人は揃って動きを止めて、壊れたおもちゃのようにエレナの方へと顔を向けた。


「ぷ、プリマ、ごめんね。昨日もこの人に会って。」

「じょ、嬢ちゃん、悪いな。俺はここらで退散するぜ。」


 何の弁明なのか、二人はわたわたと手を動かしながらプリマへと声を投げ掛ける。

 プリマの不機嫌そうな表情が消えないのを見ると、男はすぐさまその場を離れて人ごみの中へと消えていった。

 そんな男を恨めし気にアドルは見つめるが、一瞬目を背けたアドルにさらにプリマの機嫌は悪くなる。


「仲がいいのですね。」

「い、いや。昨日絡まれただけの知らない人だよ。」

「へぇ、それにしてはモテるだの興味深い話をしていたようですが。」


 プリマの冷たく淡々とした声にアドルは戦々恐々としながらも、どうにか笑みを浮かべながらプリマと対面する。


「あはは、勝手に言っているだけだよ。」

「ふーん、エレナとも出かけたのですか……。」

「まぁね。観光を楽しみにしていたし。」


 何故か昨日の行動を追及される羽目になったアドルはここへはいない男へ心の中では怨念を吐き出しつつも、当たり障りのない回答をしていく。


「道理でエレナの機嫌も良いようです。」

「あ、ははは。」


 プリマはどこか不機嫌な声音の中に拗ねるような声音を含ませる。アドルに合わせていた目も周囲へと反らしており、プリマの中にある感情を隠そうとしているかのようだ。

 実際にはエレナの機嫌が良い理由は観光したからではなく、アドルから不意にペンダントを渡されたからであるが、火に油を注ぐようなことを言う意味もないだろう。


「ふふふ、なんてちょっとした冗談です。」

「えっ、ああ。冗談か。」

「アドルは揶揄いがいがありますから。」

「それ、昨日もエレナに言われたんだけど。」


 誤魔化すような笑いを浮かべるアドルに、プリマは合わせるように微笑みを浮かべた。不機嫌そうな雰囲気が嘘のように霧散しており、アドルは困惑の色を表情に浮かべた。

 エレナと同じことを口にしたプリマにアドルはジト目を向けながら、プリマの方へと歩み寄っていく。


「……そうですか。エレナにも。」

「何かいった?」

「いえ、何でもありません。では出発しましょうか。」

「う、うん。」


 プリマは何の感情も表情に浮かべずに呟いたが、幸いにもと言っていいのかアドルには聞こえていなかったようで、不思議そうに首を傾げてプリマへと問い返す。

 その問い返しにプリマは曖昧な表情を浮かべてアドルが正面に立つと、先導するように王都の道へを歩き出した。

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