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宿命の少年たち 〜因果に囚われ、殺し合う〜  作者: 如月
第二章 青年時代・アドル編
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020 いざ、王都へ

「ここが王都……!!」

「すごい賑わいね。」


 プリマのいた街もアドル達の村に比べて途方もなく大きいものだったが、それでも王都の方が何倍も大きく、そしてそれに比例するように人々の交流が盛んで、賑わいを見せていた。

 そんな中で王都に来たことがないアドルとエレナははしゃぐようにきょろきょろと辺りを見渡している。それを微笑まし気に眺める王都民にヘレンとライネは気恥ずさを隠しきれず、そっと距離を取っている。


「二人とも行きますよ。」

「「え~。」」

「ぶふっ。お二人のそんな姿は珍しいですねぇ。」

「ヘレン笑ったらダメ。ぶふっ。」


 プリマが催促するように二人に声をかけると、二人は揃って観光がしたいと駄々をこね始めた。

 そんな姿を遠くで見守っていたヘレンとライネは二人を指さして、口元を抑えながらも必死に笑いをこらえている。が、こらえきれずに笑ってしまっている。

 ヘレンとライネの様子に気が付いたアドルとエレナはすっと表情を消し、じっと二人の様子を眺める。


「ライネも笑っているじゃない。」

「だって、ぶふっ。完全におのぼりさん。」


 エレナの言葉にライネはついに笑っていることを認めてしまう。その途中でも笑いが漏れており、そのライネの様子にエレナは額に青筋を立てる。


「ぶはははは。ひぃいいいい。ライネっ!!言っちゃだめだって。ぶはははは。」

「ぶふっ。ヘレン笑ったらダメ。ぶふっ。」

「「……。」」


 ライネの言葉についにヘレンの我慢が決壊する。大笑いをするヘレンの様子は周りからも注目されるが、それを気にした様子もなくヘレンは大きな声で笑い続ける。

 そして、それにつられてライネも表情を崩し、笑い出した。

 その二人を能面な表情で見つめるアドルとエレナ。


「「ぎゃぁああああ。」」


 路地裏からヘレンとライネの悲鳴が聞こえるのは気のせいだろう。何故かすっきりした表情でアドルとエレナが出てきたことも、その後からトボトボと頭を膨らませてついていくヘレンとライネも気のせいに違いないのだ。




「さて観光は後にして、まずはやるべきことを話し合いましょう。」

「……プリマ?」


 宿を取ったアドル一行はアドルの部屋に集合して、今後の計画を話し合う場を設けていた。当然、音頭をとるのはプリマである。


「「ぶふっ……。」」

「……。」

「「……。」」


 観光という言葉に思わず噴き出したヘレンとライネであるが、エレナが能面な表情で見ていることに気が付くと、自分たちの口を手で必死に抑えて笑いを堪えている。

 手の隙間からによによと動く口元が見えているのが、エレナを絶妙にいらだたせる。だが、お仕置きしていたら話が進まないので、ぎろりと睨みながらも話を進めようとする。


「こほん。それで、やるべきことは何かしら?」

「……観光?」

「ぶふっ……。」

「ラ・イ・ネ・~?」


 エレナがプリマの言葉を引き継ぎ、会話を進めようとすれば、ライネが余計な一言をぽつりと零す。それにヘレンが噴き出すから始末に負えない。これでアドル一行の年長組なのだから、世も末だ。

 ごごごごごと音を立てながら魔力を湧き上がらせるエレナはカッと目を見開かせて、ライネの方へと視線を向ける。


「……。」

「ふふふ。本当にこの子たちには困っています。分かっていただけました?」

「ええ、十分わかったわ。」


 エレナの視線にさらされたライネは口元に手を押し当てると、ぱちくりと瞬きをする。あたかも私は悪いことしていませんよ。とでも言いたげな様子にエレナの額には青筋が浮かび上がる。

 そんなエレナにプリマは儚げな微笑みを浮かべて、エレナと苦労を分かち合う。そして、二人は握手をして揃ってヘレンとライネへとぎろりと目線を向けた。


「「……。」」


 二人の視線を受けるヘレンとライネはお互いに見つめ合うと、エレナとプリマの方へと顔を改めた。そして、口元に手を押し当てて、ぱちくりと瞬きしてみせた。


「「ぎゃぁああああ。」」


 その瞬間、ヘレンとライネの頭の上には二つ目のたんこぶが連なって出来ていたのだった。しゅ~とたんこぶから煙が立ち上っており、よく見るとエレナとプリマの拳からも煙が立ち上っている。

 だけど、決して因果関係はないのだ。エレナとプリマがすっきりした表情を浮かべていようと、特に何かがあったわけではないのだ、まる。




「さて、話を進めましょうか。」

「ええ、それがいいと思うわ。」

「目標は二つです。貴族家を潰すことと、マフィアを潰すことですね。」


 極々真面目に始まった話し合いはヘレンとライネが大人しくしていることで、するすると進む。その内容は何とも言えない物騒なものであったが。


「ふふっ、俄然楽しみになって来たわ。具体的には何処と何処なのかしら?」

「ライネ。」

「ん。バランティ子爵とデッドリィファミリー。」


 バランティ子爵はこの王国の一貴族であり、表面上目立たない一般的な貴族と言えよう。少々女好きとの噂が流れるくらいで、特にこれと言って悪い噂もなく、村人たちからは何とも思われていない貴族である。

 一方デッドリィファミリーは王国に巣くうマフィアの一つ。その規模は中堅ほどで、大手のマフィアと比べると数段落ちるが、十分に村人にとっては脅威になる存在であった。

 特にここ最近ではバランティ子爵と関係を持ち、その勢力を拡大して言っており、民にとっても無視できない存在になる日も遠くはないだろう。


「聞いたことないわね。」

「ふふふ、そうでしょうね。所詮は小物です。……ですが、王都圏内では中々厄介ですので、注意が必要です。」

「あくどいことを結構やっているみたいですよぉ。貴族としての権力と裏社会からの違法な圧力。お互いに協力関係を結んでいるので、どっちも潰さないといけないんですよねぇ。」


 辺境伯の娘であるプリマからすれば小物である。が、一般人からしたら厄介な存在である。最大手のマフィアよりも質が悪いと言えるだろう。

 最大手のマフィアも高利貸しや違法薬物など法に反した手段で金稼ぎを行っているが、デッドリィファミリーはというと善良な一般市民までもを貴族の権利を使って貶めているのだ。

 どちらの方がより質が悪いのかは明確である。


「ふふっ、暴力には暴力を。権力には権力を。策はあるのよね?」

「ええ、マフィアと関わている証拠は掴んでいます。あとはマフィアを潰して、告発すれば終結です。」

「暴力は任せて!!」

「ええ、頼みます。」


 そんな貴族とマフィアも、より強大な権力と暴力によっていよいよ潰されそうになっていた。

 合法的に暴力を振るえる機会にエレナは意気揚々とした様子で気合を入れなおす。


「ついでに観光もどうぞぉ。」

「ぶふっ……。」


 話し合いが終わっていい雰囲気のまま解散する流れをヘレンはぶった切る。そこに憧れないし、痺れないけどライネにはうけたよう。

 どうしようもない二人には分からせるしかない。そう、拳で。エレナの怒りに満ちた拳は二人の頭目掛けて振り下ろされる。


「「ぎゃぁああああ。」」


 ズドンという音と共に三つ連なったたんこぶが出来たヘレンとライネは揃って叫び声をあげた。どうしようもない大人たちであるのだ。

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