018 VS岩石竜4
「アドル、アドル!!」
「アールヴ。見つかったんだね!!」
岩の嵐を防いでから程なくして、アドル達の下にアールヴがやってきた。岩の嵐を行使したときの魔力消費でようやく魔核を特定できたのだろう。
「よくやったわ!!それでどこにあるのかしら?」
「へへん、心臓あたりだよ~。」
ドラゴンを構成する身体のおおよそ中心ほど。そこが魔核のある場所であった。核となるものなだけ、肉体の奥深くにありそれを頑強に守っているのだった。
それでも、魔核のある場所が分かったのはアドル一行にとっては朗報であった。先の見えない戦いが一気に攻略可能な戦いに早変わりしたかの様だったのだから。
「そうか……!!あとは魔核を表面に出すだけだね。」
「それは僕に任せて!!」
「ああ、頼むよ。いつ出来そうだい?」
さらに一番難易度が高く困難な魔核を表面に出す作業もアールヴが出来るというのだから、ぐんと勝率が上がる。それに伴い、アドル一行の士気があがりと好循環が生まれる。
「う~ん、ドラゴンが大技を使う時なら……。」
「大技……。“ロックサイクロン”?」
だが、アールヴが示す条件を聞いた途端、暗い顔を浮かべる一行。それもそのはず、大技と言って思い浮かべるのは岩の嵐。それをアドル一行は止める手段はなく、ドラゴン攻略が行き詰ってしまったのだ。
「でも、あれはもう防げないわよ。」
「そうだよね……。」
「とりあえず、様子を見るしかないですねえ。」
「ええ、今は攻撃を加えて、魔力を消費させるのに専念しましょう!!」
元々無謀な戦い。それでも一筋の光が見えたアドル一行であるのだから、今更引くことなど出来はしない。攻撃を加え続けて、状況が変化するのを待つばかりだ。
「アドル!!」
そして、状況が変化するときがくる。それは岩の嵐によるものではなく、“アースシェイク”によるものだった。これは岩の嵐よりも上位の上級魔法である。そのため、魔力消費量も岩の嵐よりも多く、アールヴは早速魔核を取り出すためにアドルへと呼びかけた。
「くっ……分かった!!やってくれ!!」
「“妖精の盗み術”。」
揺れる地面の上で必死にアドルは立ち上がる。岩の矢や岩の針が降り注ぐ中でアドルは懸命にドラゴンへと向かって歩みを進める。
アールヴはアドルの様子を見ながらも魔法を行使した。“妖精の盗み術”、魔法の制御を奪う妖精の魔法。魔核が発動し続ける”クリエイトゴーレム“の魔法をどうにか制御を奪いとる。
だが、岩石竜の魔核もまた制御を奪われまいと必死に抵抗する。それを無理矢理引っ張り上げて、ついに魔核が表面へと露出した。
「はぁああああ!!」
アドルが直剣を勢いよく振り下ろすも、ガキンと音がして剣ごと弾かれてしまう。傷一つ付かない魔核はまたアールヴから制御を取り戻そうと、引っ張り出されていた魔核がその場で止まった。
妖精と竜の制御の奪い合いは拮抗しているが、その内竜が制御を取り戻し、今度こそ勝利という芽が摘まれてしまうだろう。
「くっ……あれしか、ない。」
「アドル!!あなたならやれるわ!!」
「ぐっ……おぉおおおおお。」
アドルは身に宿る魔力を手の平に集めていく。普段見えることのない紫と青の魔力が混じり合い可視化される。手のひらを覆う魔力はアドルの記憶の中の光景と重なり、ぐわんと視界を歪ませる。
父親の腕を抉り取ったあの一撃。あれがなければ父が死ぬ運命もなかっただろう宿命の魔法。暴走しそうになる魔力を懸命に抑えて、アドルはその形を整えていく。だが苦痛に歪む顔同様に魔力もまた歪んで安定しない。
「“レスト”。」
その時、プリマの魔法がアドルにかけられる。すると、アドルの顔に浮かぶ苦痛が和らぎ、周りへと視線を向ける余裕ができる。
制御権を争うアールヴ。ドラゴンの魔法を必死に抑えるヘレンと山賊頭。そして、ぐっと親指を上にあげるライネ。
「あなたならやれるわ。」
「信じていますよ。」
エレナとプリマの全幅の信頼がアドルの胸を穿った。
アドルはもう顔を苦痛に歪ませることはない。ただ、仲間たちの信頼に応えるため、魔力を束ねていく。先ほどまでが嘘のようにきれいに制御された魔力は一つの魔法の形になった。
「“次元烈斬”。」
魔力の刃はドラゴンの魔核にぶつかると、その魔核を切り裂きさらに岩でできたドラゴンの肉体までもを断ち斬ってしまった。
空間そのものさえも切り裂く魔法の刃。その魔法をついにアドルは習得したのだった。
「やったわね。」
「ふふふ。信じていましたよ。」
「ははは、ありがとう。」
仲間たちに暖かく囲まれるアドルは幸福そのもものと言った様子で、照れくさそうな表情を浮かべながらも仲間としてその囲いを心地よく受け止めたのだった。
こうしてドラゴン退治は無事に成功したのである。




