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宿命の少年たち 〜因果に囚われ、殺し合う〜  作者: 如月
第二章 青年時代・アドル編
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015 VS岩石竜

「ドラゴン退治と言っても、どうするのでしょうか?」

「それは妖精さんが答えてくれるさ。出て来て妖精さん。」


 意気揚々とドラゴン退治を謳うのはよいが、どうすれば倒せるかの検討も付かない。ドラゴンは遅々とした歩みとはいえど、刻一刻と村へと近づいて行っているのだ。

 そんな時、お助け役の妖精のアールヴの出番である。妖精と言えば伝承上の存在。ドラゴンも伝承上の存在である。妖精がアドル達よりもドラゴンに詳しいだろう。


「じゃじゃ~ん。ある時は謎の光。またある時には気のいい友人。その真の姿は妖精のアールヴぇえええええええ!!ドラゴンじゃん!!」


 アドルが声をかけると、妖精アールヴがくるくると回りながらアドルの体内から出てきた。そして、空中でびしっと決めポーズを取ると謎の口上をあげ始めるのだった。

 だが、それもドラゴンの姿を目にすると驚きの声をあげて、その場でくるくると後転を繰り返して、幾度か繰り返したのち止まった。


「紹介するよ。妖精のアールヴぇえええええええだ。」

「妖精のアールヴぇえええええええ……って、違うよ!?僕はアールヴだよ!!って、何を呑気なことを言っているのさ!!」

「ははは。面白い妖精だろう。」


 アドルが改めて妖精の紹介を行うが、その時に告げられた名前は驚きの声を含んだものであり、アールヴはぎょっとした表情でアドルを見ると、びしっと片手でツッコミを入れた。

 そんなアールヴを尻目にアドルは一行の仲間たちに目線を配り笑みを浮かべている。


「何を笑っているんだい。全く、ここから早く逃げないと。」

「聞いて頂戴。私たちはドラゴン退治をするの。」

「……?どらごんたいじ?えへへへ、どうやら耳の調子が悪いようだよ~。」


 一通り場が温まったところでエレナが本題へと入る。

 その言葉を聞いたアールヴの表情は固まり、ぱちくりと瞬きをする。その後、首を傾げて自分のとんとんと耳を叩いた。


「ドラゴン退治よ。聞こえたかしら?」

「どっへぇええええええ。ど、ど、ど、ど、ドラゴン退治ぃいいいいい!?」


 エレナはアールヴの肩を掴んで、殊更真剣な表情を浮かべる。そして、一音一音聞こえやすいように言葉を告げると、またもアールヴはエレナから離れるように宙で後転を繰り返した。

 アールヴは止まった後、エレナの方を信じられないものを見るような視線を向けるが、エレナの表情は至って真剣。いや、ピクリと口元の端が動いていた。


「ふふふ。音のなる玩具ですね。」

「妖精を玩具扱いとだなんて、不遜だよ~。ふ・そ・ん。」

「……捻りつぶしていいですか?」


 エレナが笑いを堪えている一方で、プリマは直接的な表現で妖精を表すのだった。

 アールヴはそんなプリマの言葉にぷりぷりと怒りながら、目の前まで飛んでいき人差し指を立てて、プリマの鼻に三度つんつんと触れるのだった。

 絶妙にイラっとさせる言葉と態度にプリマは能面な表情を浮かべると、一歩後方へと下がり、妖精の顔の前で手の平を開けたり閉めたりと数度繰り返した。


「ダメだよ!?助けてよ~、アドルぅうううう。」

「ははは。さて、どうすれば倒せるか教えてくれ。」

「……本気なんだね。ドラゴンは最強種だよ。倒すのは無理と思った方がいい。でも、あいつなら倒せるだろうね。」


 恐怖に慄くアールヴはすぐさまプリマから逃げ去り、アドルの背に隠れた。そして、そろりそろりとプリマの方を覗くと、にこりと笑うプリマの姿がある。そのプリマの様子を見て、素早くアールヴは身を隠したのだった。

 アドルが軽く笑い飛ばすと表情を改めて本題に戻り、それを受けたアールヴもまた真剣な表情で己の見解を示した。


「本当ですかぁ?」

「むむむ。僕を疑うの~?」

「へへっ、そういうわけではありませんがねぇ。ドラゴンは倒せないと自分の口で言ったではないですかぁ。」


 アールヴの言葉に疑わしい視線を向けるのはヘレンである。ヘレンの疑う言葉に腹を立てたアールヴは頬を膨らませて、ヘレンの前へと飛んでいく。懲りない妖精である。


「へへ~ん。ドラゴン(・・・・)ならね~。あれはただの紛い物だよ~。」

「紛い物?」

「ドラゴンの魔核を使ってはいるけど、ただのゴーレムだよ~。それも術者のいない魔力を散らしていくだけの紛い物だよ~。」


 アールヴは自慢げに小さな身体で精一杯胸を張り、ヘレンの最もな言葉へ反論した。

 ちゃっかりヘレンの隣を陣取るライネが妖精の言葉に問い返すと、アールヴはその問いにも正確に答えていく。


「どうすれば倒せる?」

「魔力さえ切らせれば止まるというわけだね。」

「あ~、僕の台詞を取ったね~。」


 ライネの続く問いに答えたのはアールヴではなく。アドルであった。

 それにまたしても怒るアールヴはアドルの方へと飛んでいき、びしびしと肩を突く。行ったり来たりと大忙しな妖精さんだ。


「ははは、ごめんね。なら決まったね。足止めをし続ければいいわけだね。」

「う~ん。でも、あのドラゴンは三日三晩、いやそれ以上動くと思うよ~。」

「それは……無理ですわね。」


 アドルが方針を示すと、それにアールヴは待ったをかける。腐っても竜種である。その魔核に含まれる魔力量は相当なもので、ただ単に活動するだけなら途方もない時間を仮初の身体でいられるのだ。

 人間はその期間ずっと寝ないなど不可能で、事実上その方法では討伐することは不可能であるのだ。


「魔力を使わせれば、もっと早く瓦解するはずだよね。」

「うん。それに魔核を壊してしまえば、それでおしまいだよ~。」

「あっ、そうか。魔核を壊すのが一番早いか。」


 ただし、それも単に活動するだけならである。アドルの言葉の通り、魔力を扱わせれば活動時間が減るのは必然であり、魔核という活動の核を壊してしまえば討伐できるのもまた必然のことだった。


「なら、魔核の位置を特定するのと、魔力を散らせるのどちらにも人手が必要ね。」

「では、私とライネが特定を進めましょう。他の三人で魔力を散らしてください。」

「そうだね。そうしようか。アールヴはどちらにも参加してくれると助かるよ。」

「へへん。任せておいてよ~。」


 ついに方針が決定して、ドラゴンの討伐戦が開始したのだった。


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