012 VS山賊団
「撃てっ!!」
最初に先制をしたのは山賊団であった。山賊頭の指示に合わせて弓矢を番えた山賊たちが一斉に矢を撃ち放つ。
矢はバラバラながらもアドル一行へと向かっていき、襲い掛かろうとしたその時にプリマが一歩前へ踏み出して、両腕を突き出す。
「“マグネットフォース”。」
「ちっ、ずっと効果は続かないはずだ!!半分前に出て、もう半分は矢を放ち続けろ!!」
「「「は、はい」」」
アドル一行へと届きそうになった矢はその直前で急速に軌道を変えて、矢速を落とし地面へと引き寄せられるように落下していく。
その軌道を見た山賊頭はすぐさま対応を変えて、それに従った山賊たちが前へと駆け出していく。続々と撃ちだされる矢はやはり地面へと吸い込まれているが、山賊たちはそれでも矢を撃ち放ち続ける。
「ライネは矢を使うやつを優先的に。エレナは僕と前に。ヘレンはプリマを頼んだ!!」
「任せて。」
「任せなさい。山賊頭も私が討伐してあげるわ。」
「へへっ、お嬢様はお任せくだせぇ。」
アドルの指示でライネは“マグネットフォース”の効果範囲内からすぐに飛び出して、短弓を構える。そして、矢を山賊たちの方へと次々に撃ち始める。
そのライネに山賊たちは動揺をしながらも、プリマとライネのどちらにも矢で狙いをつけて攻撃をし続けるが、如何せん技術がたりない。そのためライネには避けられて、そもそもプリマには矢が届きはしない。
「囲めっ!!まず前にいる男からだ。数で潰せ。」
「ふふっ。モテモテね。」
「ははっ。男にモテても嬉しくないけどね。」
アドルの周りに四人の山賊が、エレナの周りには二人の山賊が取り囲む。だが、二人には一切の攻撃が掠りもしない。練度も何もない山賊たちの連携は逆にお互いの足を引っ張る状態にさえなっている。
そんな状態でなくとも山賊とアドル達には歴とした戦力差がある。山賊たちが勝てる道理はなかった。
「くっ、強いぞ!!」
「たった一人だぞっ!!なんで四人で掠りもしねぇんだ!?」
四人に攻められているのもあり、アドルは反撃までは手が回っていない。アドルも四人に囲まれるストレスはある。だが、四人で攻撃しているのに掠りもしない状況に焦れて、山賊たちの一人がリズムをずらした。
その隙を見逃さなかったアドルは一人に反撃をしかけた。
「ぐわっ……。」
「ちっくしょう。」
アドルの一撃はとうとう均衡を崩すには十分だった。一人倒れた山賊たちの攻撃は四人の時よりも当然温い。アドルが反撃するには十分なものだった。
一人また一人と崩される山賊たちはどうにか現状を打破しようと奮闘するが、もう決着はついてしまう。アドルの勝利である。
続いてライネの戦場である。こちらは早々に片が付きそうであった。
山賊とライネでは弓を扱う技量が圧倒的に違う。一方的にライネが攻撃できる悲惨な戦場が出来上がっていたのだ。
「ぎゃー。」
「ぐわー。」
「ぶいっ。」
矢を番えて撃てば一人倒し、もう一度撃てばまた一人。そんな嘘みたいな光景が何度も続き、ついには弓矢を扱う山賊たちが打ち倒されたのだった。
そして、あと一人。山賊頭の補佐役のみが残ったのだ。
「やれやれ。困ったものです。」
「あなたも仲間のところに送ってあげる。」
「仲間?あんなのが?私には仲間はいませんので、心遣いは必要ありませんよ。」
ライネは本心から言っているだろう補佐役の男を無表情で見つめて、短弓に矢を構えると撃ち放った。
「“ロックウォール”。」
「魔術師!!」
「“クリエイトゴーレム”。」
ライネの放った矢は地面から伸びた土の壁によって防がれてしまう。また、弓矢とは相性が最悪なゴーレムまで生み出されてしまい、ライネはピンチを迎えたのだった。
「さらに“クリエイトゴーレム”」
「む。ゴーレム二体。」
「あなたでは私に勝てませんよ。早々に退却するのをお勧めします。」
ゴーレム二体に囲まれたライネは困ったようにへにゃんと眉を下げると、そっとプリマの方を向いた。すると、ヘレンが向かっているのに気が付くと、途端に元気を取り戻してゴーレムへと対峙した。
そして、はたと自分の行動を思い返すと、頭を抱えてその場に座り込んだ。まるでヘレンが来て喜んでいるようではないか、そんな風に思ったのだろう。何にせよ戦場でやる行動ではない。
「……ちがうし。違うから。」
ライネがぶつぶつと何事か呟く間にも、ゴーレムはどしんどしんと音を立てながらライネの方へと向かい、ついに拳を振り上げた。
ライネはまだその場に蹲ったままで、ゴーレムへの対処など忘れているようだ。
「唸れ、螺旋槍。」
その時、ヘレンがライネの前に立ち、魔装具である螺旋槍。所謂ドリルによって、ゴーレムを一撃の下粉砕した。
ゴーレムが崩れ落ちる轟音にようやく我に返ったのか、ライネはその顔を上にあげると、そこには自分を庇うように立つヘレンがおり、いたはずのゴーレムが消滅しているではないか。
ライネはまるで王子様に助けられたかのようにぽやーと頬を染めてヘレンを見ており、その視線にヘレンは気が付かず、もう一体のゴーレムへと駆け出す。
「……かっこいい。」
そして、またもゴーレムを一撃の下粉砕したヘレンを見てライネが一言。
熱に浮かされていたようにヘレンを見るライネであるが、はたと自分の行動を思い返すと、頭を抱えてその場に座り込んだ。二度目である。
今度は別の意味で頬を赤くしたヘレナは顔を手で覆ったのだった。
「逃げられたねぇ。……ライネ、大丈夫かぁ?」
「にへっ。……って、違うから。違うんだからぁああああ。」
心配されたライネはだらしなく緩んだ笑みを見せてしまう。そんな自分に気がつくとぼっと顔を真っ赤に染めて、首をぶんぶんと振りながらプリマの方へと走り去ってしまった。
敵に逃げられるという失態を犯したものだが、ヘレンは困ったような表情を浮かべながらも、どうにも責める気は起きなかったのである。




