011 山賊の根城
村長からの依頼があった日の翌日。その早朝にアドル一行は山賊たちから聞き出した根城へとやってきていた。
もう日が沈みかけ遅い時間だったのもあり、アドル一行は翌日へと襲撃を計画したわけだが、日が昇り切る前の早い時間に狙いを済ませて行動を開始したのだった。
「洞窟か……。」
「足元には気を付けないといけないわね。」
「うん。十分ケガには気を付けないとね。相手は何人?」
山賊たちが根城にしているのはどうやら自然の洞窟であったらしい。中は薄暗くその奥を見通すことはできない。また、幅も人二人が並んで通れる程度で十分に武器を振り回せるとは言い難いだろう。
足場が悪く、山賊たちの罠もあると考えればアドル一行にとっては戦いずらい環境と言う他ない。
「31人。山賊頭とその補佐役が飛びぬけて強いけど、他は昨日と同じ。」
「二人抑えられれば、数で押されても問題なさそうだね。」
山賊から聞き出した情報をメンバー間で共有していく。昨日寝る前にもアドル一行は情報共有をしていたが、再度の確認のためである。
「ふふふ。頼もしいですね。補助魔法はいりますか?」
「お願いするよ。」
「では、 “オールアップ”、“ナイトビジョン”。」
“オールアップ”による全能力値の向上と“ナイトビジョン”による夜目の補助効果がアドル一行に行き届く。特に夜目が利くのは洞窟内では戦況を大きく左右するため、必要不可欠と言っても過言ではないだろう。
「ありがとう。ライネが先頭でその後ろにエレナ、僕にプリマ。ヘレンの順で動こう。」
「ええ、分かったわ。」
「ふふふ、補助魔法はお任せください。」
「へへっ、後方はお任せくだせぇ。」
隊列を確認して、いざ洞窟の侵入。とはならず、まずは洞窟の入り口付近にいる見張りをどうにかしなければならない。
二人いる見張りを見据えてライネがその短弓を構える。そして、矢を素早く番えると狙いを定めた。
「“ラビットショット”」
「「ぐわっ……。」」
「ナイス。じゃあ、行こうか。」
「ふふん。任せて。」
“ラビットショット”による速射で見張りの二人が即座に仕留められる。速射ということもあり、精度が通常よりも遅いはずだがライネの腕がよいからか、二本の矢は吸い込まれるように山賊に突き刺さり、一撃で絶命させた。
アドル一行は山賊の誰にもバレずに根城への侵入を果たすことになった。根城の中にはのんきに眠る山賊が多く残り、さてはて彼らは一体どうなるのだろうか。
「てっ……ぐえ。」
「まっ……!!」
「他愛もないですわね。」
「山賊頭とその補佐だけと言うのは本当みたいだね。」
山賊の根城を“ナイトビジョン”の補助魔法により、昼と変わらないくらいに見えるアドル一行にとっては山賊の部下は敵でなかった。武器も持たずにふらつく山賊もいるくらいで、叫び声をあげる暇もなく制圧されてしまう。
そればかりか、一方的に夜目が効くため山賊よりもアドル一行が見つける方が早く、音もなく仕留められるものも多くいた。
「そろそろ半分は倒せたかな。」
「へへっ、後13人ですねぇ。このままいけば苦戦らしい苦戦もなく終わらせますねぇ。」
「ヘレン……。それフラグ。」
次の瞬間、山賊が仕掛けたのであろう罠に最後尾であるはずのヘレンが引っかかる。すると、洞窟内にけたたましい鐘の音が響き渡り、山賊たちの慌てたような声が洞窟の奥から聞こえだす。
「……あれぇ、また僕なんかやっちゃいましたぁ?」
「戦犯確定。」
洞窟が騒がしくなっているのにも関わらず、その元凶はすっとぼけたように首を傾げた。そのヘレンにメンバー全員がじとりとした目を向けるも何のその、口笛まで吹く余裕ぶりである。
「いやぁ、ライネが罠を見落とさなければなぁ。」
「む。そんな初歩の罠に引っかかるのはヘレンくらい。」
「へへっ、その初歩の罠も見落とすのは、ライネくらいだねぇ。」
「「何をぉ。」」
売り言葉に買い言葉。ヘレンとライネのいつものじゃれ合いがこんな時でも起こり、お互いにその責をなすり合い始めた。
こんなことをやるくらいには余裕があるということだが、如何せんここは敵地である。一瞬の気のゆるみが他のメンバーを危険に巻き込むかもしれない。
「二人とも。じゃれ合っていい場面ではありません。ここからは速度が重要です。気を引き締めなさい。」
「「は~い。」」
プリマの真剣な声で告げられた注意の言葉に二人は素直に従い、アドル一行は洞窟の中を歩み始めた。
アドル一行は驚くほど接敵がない中、ついに洞窟の最深部らしき場所に付いた。そこに歩みを進めると、山賊たち総勢13人が待ち構えていた。
「さて、お前らが侵入者か。ここに何の様だい?」
「村を襲撃したのは君たちだね。」
山賊たちの中心にいる男がアドル一行へと話しかけた。その男は他の山賊より一層豪華な装備を身に着けており、それが山賊頭であるのは明白であった。
「はて?村なんてここの周辺にあっただろうか。なぁ、どうだった?」
「村はありませんね。焼き野原ならあったかもしれませんが。」
「ははははは。ってことだぜ。」
アドルの言葉に山賊頭はすっとぼけたように隣にいた男へと話しかける。すると、その男もあくどい表情を浮かべながらも、山賊頭の言葉に乗っかったのだ。
その男が山賊頭の補佐であるのは想像に難くなく、大笑いをする山賊頭と補佐の男にアドルは鋭い視線を向けた。
「よく分かったよ。」
「おぉ、話が分かるじゃないか。」
「ああ、よく分かったよ。君たちが救いようのない悪党ってことがね。」
誰がどう見てもこの13人が悪党であるのは明白である。
アドルは持っていた直剣を取り出すと、油断なく山賊たちを見ながら構えた。
「くくく、こんなところまで来たお前らを歓迎してやる。」
「……一応言っておくよ。抵抗するな。抵抗するなら容赦はしない。」
「くはははは。答えはノーだね。ここに来たこと後悔させてやるよ。」




