010 村長の依頼
山賊たち三人がプリマ、ヘレン、ライネによって恐ろしい目に遭わされている最中、アドルとエレナは村長宅でこの村の村長と対面していた。
元は立派な家だったのだろう村長宅は今では半焼しており、威厳の欠片もない青空が見える家と化していた。そんなものでも今の村では十分立派な家であり、村長は心苦しそうにしながらも二人を家へ通したのだ。
「皆様、この村を救っていただきありがとうございます。」
「い、いえ、当然のことをしたまでです。」
「感謝の念を禁じえません。」
村長が地面に頭が着くぐらいに下げると、アドルは驚いた様子で村長の行動を止めて起き上がらせようと、身体を支える。
そんなアドルの様子に益々村長は身体を倒そうとするも、アドルの方が当然力が強くそれ以上いかない。
「感謝の気持ちは十分伝わりましたので……。」
「ありがとうございます。些細なものですが、こちらをどうぞ。」
アドルが引き下がらないのを見ると、村長は抵抗するのをぱたりと止めて燃えていなかった棚から袋を取り出す。そして、その袋をアドルへと受け渡すのだった。
その袋を受け取ったアドルが中を覗くと金貨が六枚入っていた。小さなこの村では大金であろうのはすぐに察せられるものであった。
「こんなにも……!!いただけません。」
「そんなっ。受け取ってもらわなけらば、逆に困ってしまいます。」
「いえ、ですが……復興も大変でしょう。」
袋を付き返そうとするアドルだが、村長は袋を一向に受け取ろうとしない。そればかりか困ったように眉を下げ始める始末で、アドルの方も困ったような表情を浮かべた。
村長宅も半焼し、村自体も甚大な被害が出ている。そんな中で大金を受け取ってしまえば、それこそ村の経営が成り立たなくなる。それではアドルが止めを刺したようで、アドルはそれを心苦しく思ったのだった。
「いえ、御心配には及びません。領主様より復興費は捻出いただけますので。」
「そう、ですか。」
「では、こうしていただけませんか?」
事実、山賊などというのは災害に等しい。その山賊に被害をあった村には復興費としていくらか下賜されるのが常である。もちろん、背後関係や被害状況などを調べたうえでであるが。自作自演などと甘いことは通用しないので、そこは安心して欲しい。
復興費について聞いたアドルはそれでも受け取ることをどこか心苦しく思っており、その表情は十分に晴れたとは言えない。
「残りの山賊たちを討伐していただだく。その達成報酬も込みでこのお値段という形で。」
「……。」
「アドル。いいじゃない。」
「だけど……。」
そこで村長から提案されたのは山賊の残党を討伐すること。その結果により金貨六枚を受け渡すということだった。
思考するアドルにエレナはついに口を挟んだ。体裁上、アドル一行のリーダーはアドルである。だから、その意志と決断を尊重はするが、アドルのワンマンパーティーではないのだ。
「元々この男は、このつもりだったわよ。」
「えっ……?」
まだ踏ん切りのつかないアドルだったが、エレナの続く言葉に驚きの声をあげると、ぱちくりと瞬きをさせた。
「ははっ、バレてしまいましたかね。」
「感謝しているのは事実でしょうけど、大げさすぎるわ。こちらを上手く乗せてやろうという気が丸見えだったわ。」
「……お恥ずかしい。」
大げさに頭を下げていたのはアドルの人柄を見るためなのと、アドル達から報酬に関しての交渉をさせないようにするため。
また、アドルが頭を下げない様にと言ったから、頭をあげた。つまりはアドルからしたらお願いを聞いてもらったという状況で、その状況では村長のお願いも少しは通りやすくなる。
まず交渉の席に立たせないこと。お願いを少しでも聞いてもらえるようにすること。村長がやったことと言えばその二つだけだが、その二つでアドルは報酬を受け取り、山賊を討伐することも視野に入れたのだった。
「いいのよ。元々、山賊の根城は潰すつもりだわ。だから、お金ももらえてラッキーね。」
「おやおや、これは失策でしたかね。」
「……分かりました。依頼を受けさせてもらいます。」
「ありがとうございます。」
とはいえ、エレナの言葉の通りに山賊は元々潰すつもりで三人ほど捕まえたのだ。必然的に報酬を受け取る状態になっていたし、結局アドルもそれで話を了承したのだった。
「アドル。さっきはパフォーマンスだと言ったけれど、感謝しているのも事実よ。それを捉え違えてはダメよ。」
「ははは、分かっているよ。」
「なら、いいわ。」




