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宿命の少年たち 〜因果に囚われ、殺し合う〜  作者: 如月
第二章 青年時代・アドル編
57/85

007 プリマの依頼

 辺境伯という強大な貴族家というだけあり、普段では考えられないほど豪華な食事をとり終えたアドルは満足げな様子でお腹に手を当てていた。


「さて、お二人は今後どのような予定でいますか?」

「予定、というのはどういう意味でしょう。」

「お二人は、いえお三方は旅をすると風の噂で。」

「……。」


 プリマの問いにアドルは気を引き締めなおして、鋭い視線をプリマへと向けたが次の瞬間にはぎょっとした表情を浮かべた。

それもそのはず、妖精の存在を知っているのはアドルとエレナだけのはずで、ベルベットさえも知らない事実なのである。それを何故知っているのか、プリマの底知れなさが大いに伝わることである。


「ふふふ、警戒しないでください。これと言って詮索するつもりもありません。ただ、どこを目指すつもりなのか、お聞きしたくて。」

「……とりあえず王都を目指すつもりでいました。」

「あら、それはちょうどいいです。」

「ちょうどいい?」


 警戒しないでという言葉を額面通りに受け取れるアドルではなく、これでもかと警戒心を表に出しながらも、プリマと会話を続ける。


「ええ、ちょうど私達も王都に用がありまして、一緒に同行させていただくのはどうでしょうか?」

「プリマ、本気なの?」

「本気も何も、ちょうどタイミングがいいみたいで。これも運命によるものなのでしょう。」


 同行を申し出たプリマにエレナは怪訝そうな雰囲気を隠すこともなく、じとっとした瞳でプリマのことを見た。

 そんなエレナの様子に対して、プリマは天を仰ぐように拳を身体の前で組む。その様は敬虔な信徒のようであったが、どれほど神という存在を信じているのだろうか。


「……今度は何をしようというの?」

「何を、と言われましても。ただの里帰りです。二人のね。」


 プリマはエレナの疑う様な目線を受け流しながら、ヘレンとライネの二人を示す。


「ふーん。怪しいわね。アドルも気を付けた方がいいわよ。碌なことにならないから。」

「ふふふ、本人の前でそのようなことを。私は大変寂しいです。」

「ふふ、私たちの仲だからこそ、ですわ。」


 プリマの前でエレナは取り繕うことなく、自身の内心を吐露した。その内容は貴族家の人間に対するものでなく、相手によっては十分に処罰される恐れはあることだ。

 しかし、そんなエレナの言葉にプリマは微笑み一つで受け流す。目の端をそっと添える手には悲しいという言葉とは反対に、何も伝うものはない。


「ふふふ。」

「ふふ。」

「「ふふふふふ。」」


 プリマとエレナはお互いに目線を合わせながらも上品に微笑み合うが、その目の中を覗くと微笑ましい感情の一つも見えはしない。

 二人が揃って笑う中でアドルとヘレン、ライネは揃って若干引いたような表情を浮かべていた。


「もう茶番はいいわ。それで何をするつもりなのかしら?」

「……そうですね。聞いたら後戻りできませんよ?」

「元々後戻りなんて赦してくれないでしょうに。」


 プリマは相手を気遣う様なそぶりを見せるが、根元から真っ黒な天性の腹黒だ。そんなそぶりを見せておきながらも、心の奥底では相手を気遣うことなく、自分の都合のいいように物事を進めようと計算している。

 そのことを承知しているエレナは今までのやり取りを茶番とまで切り捨て、さらに家を通された時点でこういった展開になることを分かっていたのだった。


「ふふふ、そうですね。……里帰りも嘘ではありません。」

「……。」

「ただ、この子たちも厄介な事情を抱えていましてね。王都の裏社会を牛耳るマフィアの娘でしたり、貴族を斬って指名手配されている男だったりするわけです。」

「……犯罪者じゃない。」


 二人の部下には大層な経歴があったようで、エレナはあまりの経歴に身体ごと思いっきり引いてしまう。


「ふふふ。つい拾ってしまいました。」

「ついって……あなた阿保なのかしら。」


 どちらも王都のスラムにいたような人物だ。経歴的にグレーなのは仕方ないにしても、真っ黒なのはどうしようもない。なのに、それを軽い調子で拾っているプリマは肝っ玉が太いというべきか、考えなしの阿呆と言うべきか。


「む。エレナも言いますね。……それでも都合がよかったのです。裏社会の事情を知っているものと知り合うのも、貴族それも私の婚約者を斬ったという男の存在も。」

「……。」

「幻滅しましたか?」


 明け透けないエレナの言葉にプリマは頬を膨らませるが、その態度も部下がばりばりの犯罪者なのが分かると可愛いものも、可愛くはない。

 若干、上目遣いになりながら不安げに問いかける言葉も、何とも言い難い気分になるものだ。


「幻滅も何も、プリマは元々そうじゃない。」

「ふふふ。そう言われると嬉しいです。」


 元々そう。その言葉は果たしていい意味の言葉なのだろうか。どちらにせよ、プリマが喜んでいるなら良いことなのだろう。


「それで、王都には何をしに行くのかしら?」

「マフィアを潰すのと、婚約者の家を潰すの、同時にやろうかと思いまして。」

「……ど派手ね。」

「楽しそうでしょう?お二人もどうでしょうか?」


 マフィアと貴族の家。そのどちらもが潰れれば確かに部下二人の真っ黒な経歴は何とかなるかもしれない。いや、真っ黒なのは変わりないが、指名手配なんてことはなかったことに出来るかもしれない。


「当然、付いていくわ!!アドルも連れていくわ!!」

「えぇ、本気で言っているのかい?」

「もちろんよ。プリマ。私に任せておきなさい!!」


 何がエレナの琴線に触れたのか、最近で一番テンションをあげたエレナはアドルの了承も得ずにプリマの計画に加担することを了承したのだった。

 そんなエレナの様子にアドルは嫌嫌そうな表情を浮かべながらもエレナに勝てるはずもなく、結局プリマの計画通りに物事は進むのであった。

 辺境伯という強大な貴族家というだけあり、普段では考えられないほど豪華な食事をとり終えたアドルは満足げな様子でお腹に手を当てていた。


「さて、お二人は今後どのような予定でいますか?」

「予定、というのはどういう意味でしょう。」

「お二人は、いえお三方は旅をすると風の噂で。」

「……。」


 プリマの問いにアドルは気を引き締めなおして、鋭い視線をプリマへと向けたが次の瞬間にはぎょっとした表情を浮かべた。

それもそのはず、妖精の存在を知っているのはアドルとエレナだけのはずで、ベルベットさえも知らない事実なのである。それを何故知っているのか、プリマの底知れなさが大いに伝わることである。


「ふふふ、警戒しないでください。これと言って詮索するつもりもありません。ただ、どこを目指すつもりなのか、お聞きしたくて。」

「……とりあえず王都を目指すつもりでいました。」

「あら、それはちょうどいいです。」

「ちょうどいい?」


 警戒しないでという言葉を額面通りに受け取れるアドルではなく、これでもかと警戒心を表に出しながらも、プリマと会話を続ける。


「ええ、ちょうど私達も王都に用がありまして、一緒に同行させていただくのはどうでしょうか?」

「プリマ、本気なの?」

「本気も何も、ちょうどタイミングがいいみたいで。これも運命によるものなのでしょう。」


 同行を申し出たプリマにエレナは怪訝そうな雰囲気を隠すこともなく、じとっとした瞳でプリマのことを見た。

 そんなエレナの様子に対して、プリマは天を仰ぐように拳を身体の前で組む。その様は敬虔な信徒のようであったが、どれほど神という存在を信じているのだろうか。


「……今度は何をしようというの?」

「何を、と言われましても。ただの里帰りです。二人のね。」


 プリマはエレナの疑う様な目線を受け流しながら、ヘレンとライネの二人を示す。


「ふーん。怪しいわね。アドルも気を付けた方がいいわよ。碌なことにならないから。」

「ふふふ、本人の前でそのようなことを。私は大変寂しいです。」

「ふふ、私たちの仲だからこそ、ですわ。」


 プリマの前でエレナは取り繕うことなく、自身の内心を吐露した。その内容は貴族家の人間に対するものでなく、相手によっては十分に処罰される恐れはあることだ。

 しかし、そんなエレナの言葉にプリマは微笑み一つで受け流す。目の端をそっと添える手には悲しいという言葉とは反対に、何も伝うものはない。


「ふふふ。」

「ふふ。」

「「ふふふふふ。」」


 プリマとエレナはお互いに目線を合わせながらも上品に微笑み合うが、その目の中を覗くと微笑ましい感情の一つも見えはしない。

 二人が揃って笑う中でアドルとヘレン、ライネは揃って若干引いたような表情を浮かべていた。


「もう茶番はいいわ。それで何をするつもりなのかしら?」

「……そうですね。聞いたら後戻りできませんよ?」

「元々後戻りなんて赦してくれないでしょうに。」


 プリマは相手を気遣う様なそぶりを見せるが、根元から真っ黒な天性の腹黒だ。そんなそぶりを見せておきながらも、心の奥底では相手を気遣うことなく、自分の都合のいいように物事を進めようと計算している。

 そのことを承知しているエレナは今までのやり取りを茶番とまで切り捨て、さらに家を通された時点でこういった展開になることを分かっていたのだった。


「ふふふ、そうですね。……里帰りも嘘ではありません。」

「……。」

「ただ、この子たちも厄介な事情を抱えていましてね。王都の裏社会を牛耳るマフィアの娘でしたり、貴族を斬って指名手配されている男だったりするわけです。」

「……犯罪者じゃない。」


 二人の部下には大層な経歴があったようで、エレナはあまりの経歴に身体ごと思いっきり引いてしまう。


「ふふふ。つい拾ってしまいました。」

「ついって……あなた阿保なのかしら。」


 どちらも王都のスラムにいたような人物だ。経歴的にグレーなのは仕方ないにしても、真っ黒なのはどうしようもない。なのに、それを軽い調子で拾っているプリマは肝っ玉が太いというべきか、考えなしの阿呆と言うべきか。


「む。エレナも言いますね。……それでも都合がよかったのです。裏社会の事情を知っているものと知り合うのも、貴族それも私の婚約者を斬ったという男の存在も。」

「……。」

「幻滅しましたか?」


 明け透けないエレナの言葉にプリマは頬を膨らませるが、その態度も部下がばりばりの犯罪者なのが分かると可愛いものも、可愛くはない。

 若干、上目遣いになりながら不安げに問いかける言葉も、何とも言い難い気分になるものだ。


「幻滅も何も、プリマは元々そうじゃない。」

「ふふふ。そう言われると嬉しいです。」


 元々そう。その言葉は果たしていい意味の言葉なのだろうか。どちらにせよ、プリマが喜んでいるなら良いことなのだろう。


「それで、王都には何をしに行くのかしら?」

「マフィアを潰すのと、婚約者の家を潰すの、同時にやろうかと思いまして。」

「……ど派手ね。」

「楽しそうでしょう?お二人もどうでしょうか?」


 マフィアと貴族の家。そのどちらもが潰れれば確かに部下二人の真っ黒な経歴は何とかなるかもしれない。いや、真っ黒なのは変わりないが、指名手配なんてことはなかったことに出来るかもしれない。


「当然、付いていくわ!!アドルも連れていくわ!!」

「えぇ、本気で言っているのかい?」

「もちろんよ。プリマ。私に任せておきなさい!!」


 何がエレナの琴線に触れたのか、最近で一番テンションをあげたエレナはアドルの了承も得ずにプリマの計画に加担することを了承したのだった。

 そんなエレナの様子にアドルは嫌嫌そうな表情を浮かべながらもエレナに勝てるはずもなく、結局プリマの計画通りに物事は進むのであった。


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