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宿命の少年たち 〜因果に囚われ、殺し合う〜  作者: 如月
第二章 青年時代・アドル編
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003 森の妖精

 アドルとエレナは何が起きても大丈夫なように隙なく、妖精に対峙する。そんな二人とは反対に妖精は気楽な様子を崩すことなく、“次元弾(グラビティボム)”をぐるぐると周囲に旋回させている。


「それで、何の用?」

「わわっ、そんなに凄まないでよ~。大人になった時にしわになっちゃうぞ~。」


 妖精はこんな風にとでも言いたいのか、手で額に目いっぱいしわを寄せている。どこまでも人を小馬鹿にしたような雰囲気が拭えないが、これでも妖精は真面目に話しているつもりなのである。

 どこまでもふざけた風なのは種族特性によるものか。何にしても、妖精の態度にアドル達はさらに眉間にしわを寄せることとなった。


「……。」

「怒らないでよ~。君、ここからいなくなっちゃうの~?」

「うん。僕は行くところがあるから。」


 妖精はどうやら人の表情から感情を読めないほど鈍感ではないようだ。二人の表情が険しくなると慌てた様子で、手をばたつかせてすぐに本題へと入った。


「う~ん。」

「別にそちらには不都合はないはずだけど。」


 アドルには妖精がする質問の意図もどうして悩んでいるのかも分からないようで、首を傾げて不思議そうに妖精を見ている。


「……僕も付いて行っていい?」

「は?」


 妖精の予想外の言葉にアドルは驚きを表に出して、その身体を硬直させる。

 アドルがぱちくりと繰り返し瞬きを繰り返しても、そこには真剣な表情をする妖精が一体いるだけで光景は変わらない。


「だめ~?」

「いや……何故に?」


 アドルは困惑の表情を顔に浮かび上がらせていると、次第に不安になって来たのか妖精が眉を下して、伺うようにアドルの方へと目線をやる。

 そんな妖精の姿を見て、どうやら本気で付いてきたそうなのを感じ取ったアドルはさらに困惑を深めることとなる。


「ん~、僕なら戦力になると思うよ~。」

「……。」

「それに、君は知らないみたいだけど、君のケガを治していたのは僕なんだよ~。」

「ケガ?……って、緑の光。」


 アドルの質問の意図を分かってか、妖精はずれた回答を口にする。その妖精に無言のまま目線を向け続けるアドルであるが、続く言葉にきょとんと小首を傾げた。

 幼少期の頃、無茶な訓練を繰り返していたアドルである。小さな子供の身体では到底耐えられないハードな訓練を乗り越えられた理由がこれである。意識を失う時にいつも見えていた緑の光が妖精であったのだ。

 転機が訪れてからは意識を失うまで訓練することもなくなっていたが、それまでは決まってこの広場で無茶をしたものだ。いつも見える光を意識を失う前の予兆などと捉えていたアドルはようやく真実を知ったのである。


「そうそう。僕がいたから無事に育ったって言っても過言ではないよ。えっへん。」

「……ははは、その態度からは信じがたいね。」


 妖精は小さな身体で目いっぱい胸を張る。どうにも威厳などない姿であるが、魔法という一分野においては確実にアドルよりも優れている存在である。

 その事実からアドルは話が真実であると感じ取っていたが、それはそれとして偉ぶりたい子供の様にしか見えない。


「む~。“小妖精の噂話(リピートエコー)”。」

「なっ……!!」

「へへ~ん。こんなこともできるんだよ~。」


 妖精は馬鹿にされたと思ったのか、魔法を行使する。その瞬間、“次元弾(グラビティボム)”が二つに増えた。

 “小妖精の噂話(リピートエコー)”。現在制御している魔法をもう一つ発動するという効果だ。追加で発動した魔法の分、魔力を消費するものの本来扱えない魔法まで行使できる凶悪な魔法である。

 “妖精の盗み術(トリックスター)”と“小妖精の噂話(リピートエコー)”のコンボで相手の魔法をいくつも増幅させるのだから、妖精種というものはずるい。


「恐ろしい、な。」

「それに“小妖精の癒し術(フローラルアロマ)“。」

「回復魔法まで……。」


 さらに同時に回復魔法の行使さえしてみせた。行使できる魔法の量にばかり目が行くかもしれないが、真に恐れるべきは同時に発動する魔法の数だろう。

 アドルが一つの制御しかできない魔法を二つ。さらに追加で別種の魔法も行使してみせたのだ。魔法という面で妖精というは規格外に過ぎた。

 アドルは覚えのある温かさを感じながらも、身体の芯は凍り付いたように冷たくなる。先ほどの戦闘で妖精が最初から全力で戦っていれば、なすすべもなくアドルは地に倒れ伏していただろう。


「どう?連れて行きたくなったでしょ~。」

「是非と言いたいところだが、そちらが付いてくる理由が見えないね。」


 戦力になる。その言葉に嘘偽りなく、本来ならアドルからお願いに出るべきほどのものだ。だが、アドルはすぐに頷けない。理由の分からず連れ歩くというのは時限爆弾を片手にしているのと同義だ。


「……ん~。どうしも言わなくちゃダメ~?」

「ああ、是非とも……。」

「アドル。」


 妖精が悩むそぶりを見せると、アドルは思わず身体を乗り出し話を催促しようとする。が、その時にエレナの声が二人に割って入った。


「エレナ……?」

「いいじゃない。連れて行きましょう。」

「……はぁ。エレナがそういうなら、分かったよ。」


 鶴の一声である。エレナの言葉にアドルはため息を一つ吐くと受け入れ、妖精の方へと再度向き直る。


「ということは~?」

「ああ、問題ないそうだよ。」

「わ~い。僕、アールヴ。見た通り妖精だよ~。よろしくね。」


 こうしてアドル一行に妖精アールヴが加わったのだった。

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