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022 VS野良狼

「全部で五体。いつも通り行くぞっ!!」

「「「おうっ!!」」」


 先頭に立つ男が五体の狼を視認すると同時に声を張り上げる。五体の狼は前衛三体と後衛二体に分かれており、前衛の三体は左寄りに二体、少し離れて右に一体いる。その後方からそれぞれ一体ずつが追従しており、右側は前衛に近くすぐに接敵するだろう。

 対する護衛組は四人。前衛二人と後衛が一人。後衛を守るように中衛が一人立っている。声を張り上げた男は直剣を一本持っており、右側に陣取っている。もう一人の前衛は左側で盾と直剣を構えており、油断なく敵を見据えている。

 前衛二人の後方にローブを纏った魔術師が杖を構えて、その左少し前方に弓を持つ中衛がいる。中衛の腰には短剣が帯剣されており、敵が接近してきたときの時間稼ぎの役目を担っている。


「左側二体受け持つ。」

「オッケー、右側任せろ。」

「後方左に牽制。」

「左側援護。」

「“挑発”。」


 上から順に前衛盾、前衛剣、中衛、後衛の順での言葉である。前衛盾が声を発すると前衛の左側の狼二体が目を赤くして進路を前衛盾へと向けた。追従する後衛の狼も進路を調整して追いかける。

 前衛剣は陣形から突出するように右側の狼に向けて駆けだす。


「“ウォークライ”、“スラッシュ”。」


 前衛剣の声と共にパーティー全員を黄色の光が包み込み身体に溶けるように消えた。そして狼と前衛剣が接敵した次の瞬間、黄色の光に包まれた剣が軌道に光を残しながら狼の首を一太刀で切り落とす。


「3!2!」

「“ファイヤーボール”。」

「今!!」

「おうっ。」


 中衛のカウントダウンに合わせてさっと前衛盾が身体を横にずらすと、魔術師が放った魔法である径20㎝ほどの火の玉はウルフにあたると顔をぼんっと弾き飛ばして、ウルフの首と毛皮を黒く焦がした。

 戦場に生物を焼く匂いが舞い上がり惨状を見ていた他のウルフたちが足を鈍らせる。


「ああ~、燃やすなよ!!」

「逃がさねぇぞ。“雄叫び”からの“スラッシュ”。あと二体!!後ろ任せろ。」


 戦場に似合わない間の抜けた声が響く中で、逃げるか迷うウルフの心理の隙間を縫うように前衛剣がウルフの動きを止めて、再度手に持つ剣が黄色の光に包まれて、またも一太刀でウルフの首を断ち斬った。


「おうっ。“挑発”。」

「がうがう。」

「効いてない!!」


 戦意が消失したウルフたちは尻尾を後ろ脚の間に入れて、じりじりと後方に逃げ出す算段をつけ始める。が、前衛盾との距離はそこまで離れていない。逃げるに逃げられないところで、前衛盾は声を発するが今度は狼の目が赤くはならない。


「やっぱし二回目は効き悪いなぁ。どりゃあ、“シールドバッシュ”。」

「よっ“クレイニードル”。」

「おーし、よっと。完璧だな。」


 一か八か狼が戦場から逃げようと足に力を入れると前衛盾は黄色の光を立てに纏わせて、狼に向かって突進する。突進に吹き飛ばされた狼は地面を転がり目を回す。その瞬間を逃すわけもなく、魔術師の魔法により頭を土で突き刺され死亡した。


「一体燃やしたこと以外はな。」

「いいだろ、一体ぐらい。」

「まっ、勝てたからいいじゃん。」


 狼たちを瞬く間に倒した彼らの実力は確かで、まだまだ余力を残していたようだ。それにしても戦場でわいわいやっている姿は丹力が凄いというべきか、楽観的と言うべきか。


「はぁ、人が戦っている時に。気の抜ける奴らだな。」

「リーダーなら勝つって信じてるからな。」

「よっ、リーダー流石。」

「さすリー」

「ったく、よっしゃ。今回も勝ちだな。」


 いつの間にかもう一体の狼の首を断ち斬っていた前衛剣はリーダーと呼ばれるだけあって、戦闘能力も高くメンバーから信頼されている。四人の絆は深く、今後も上手く冒険を続けていくのだろう。




「危うげなく勝利ですわね。流石ですわ。」

「呆気なかったな。」

「ああ、強い。」


 四人の護衛達は三人が戦闘に介入する余地なく圧倒的な戦績を見せつけた。どこか自分が強いと思っていた三人にはいい薬となっただろう。個人という力の限度もよくよく分かったであろう。


「なっ、来てよかっただろ。」

「……そうだな。」

「一体くらいこっちに来てもよかったですのに~。」

「やっぱりエレナが一番過激だな。」


 未だにその肉体に魔力を迸らせるエレナは確かに三人の中で一番過激である。うずうずと闘いたいという欲求を抑えきれずにいる姿は立派な戦闘狂であった。


「失礼ですわね。私は過激ではありませんことよ。」

「くく。よく言うぜ。」

「それにしても挑発とか、スラッシュって何?」

「ん?ああ。戦技だな。魔法とはまた別種の技術だ。」

「ええ。生命エネルギーである気力を用いて様々な技を使えるのですわ。」


 極論言えば戦技とは魔術と同じである。ただ魔力、気力と別種のエネルギーを源にした技術である。それだけでなく魔力が万能なエネルギーに対して、気力は生命エネルギーであるからその性質に違いが出てくる。よって別の名称、技術体系を形作られたのである。

 魔力は万能なエネルギー、あらゆるすべてを構築しうるエネルギーのため、その性質は改変や適合、創造などといったところか。一方で気力は生命エネルギーであるがためにその性質は生物としての特性を補助、強化する方面に強い。

 つまりは気力とは肉体強度を上げることに特化しており、精神を少し誘導したり健全化することが得意で、肉体の動作やその延長線上のものを強化する力に長けているのだ。


「まぁ、魔法が遠距離用。戦技が近距離用って覚えておけばいいんじゃないか?」

「乱暴ですわね。少し違いますが、例外を除けばその認識でよいと思いますわ。」

「へぇ、戦技か。」


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