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#38 ジャンゴとマーヤ、大地に立つ。

ジャンゴとマーヤに会いたい。


本来、馬車移動後は風呂に入って着替えるのが先なんだけど、まずは子狼たちの部屋に向かった。みんな一緒。母上と妹のマリサも早く会ってみたいらしい。

部屋の扉を開けるとその先は高さ1メートルくらいの木製の縦格子で仕切られていた。


「もう結構な速さで走るからな、フィリップ様が作らせたんだよ。1度、屋敷内を走って捕まえるのが大変だった。」


ユージが解説してくれた。


「ありがとう、兄上。」


「ケガをさせないように捕まえるのにどれだけ苦労したか。オレとメイドの言うことを聞かないんだ。」


ぼくが礼を言うと兄上は少し照れながら説明してくれた。


寝転がるオスのジャンゴの上に乗ってから転がり落ちるのを楽しんだメスのマーヤの姿を皆で見ていると、2匹は大勢の人に驚いた後、ユージとシェイラを見つけて二人に近づいた。2匹とも嬉しそうに口を開けているけど、まだしっぽは振れないのかな。それとも振らないのかな?


「中に入るにはそちらの二重扉からどうぞ。」


メイドが指し示してくれた部屋の左端を見ると、扉の先が短い通路でその先にまた扉がある。そこからぼくとディーシャ、母上とマリサ、ユージとシェイラの順で入った。


「ただいま、ジャンゴ。」


ぼくが声を掛けると数秒経ってからジャンゴは目を見開いてぼくの足元に来てぼくの目を見ている。それを見たディーシャも同じように「ただいま、マーヤ。」と言うと、マーヤもジャンゴと同じリアクションだ。ぼくらを覚えていてくれたのなら嬉しいな。


「二人の声がわかるんじゃないか?コイツら、すごいな。」


ユージはぼくと同じことを考えたみたいだ。


「だとしたら嬉しいね。」


ユージに答えたぼくは、しゃがんでジャンゴの首回りをシャカシャカと撫でまわした。ぼくの様子を見てディーシャもマーヤ相手に同じようにしていた。2匹とも、ぼくらにされるがままになっていた。まん丸より少したれ目ぎみの目を輝かせて一生懸命ぼくの目を見てる。狼だから、記憶にあるシベリアンハスキーみたいな切れ長な目を想像してたけど違った。でもこれはこれで可愛すぎる。()い奴じゃ。なんて嬉しくてふざけたことを考えてたぼくは、部屋の隅に転がっているモノを見つけた。


「ユージ、あれは首輪?」


「そうだよ、フィリップ様が作らせたんだ。もう村人で2匹の事を知らない人はいないんだけど、万が一にも別のグレイウルフが村に入り込んだ場合にすぐ見分けられるようにって。だけどコイツら、イヤがって足で外そうとするんだ。大きめに作ってあるからベルト穴の一番短くなるところでもブカブカなのにね。」


それを聞いた僕は仁王立ちになって右手を腰に当て、左手で自分の足元を指さした。


「ジャンゴ、マーヤ、ここに座りなさい。」


2匹は顔を見合わせた後、ジャンゴの横にマーヤが並んでから座り、ぼくを見上げた。


「ジャンゴ、マーヤ、君たちと村人の安全のために首輪をつけないといけないのです。つけなければ外に出られません。どうしますか?」


そう言って見ていると2匹は立上り、ジャンゴは黄色の、マーヤはピンク色の首輪の端をくわえて引き摺ってぼくの前まで戻ってきてからまたぼくを見上げた。ぼくがジャンゴの首輪を手に取って首に巻いている間、ジャンゴは観念したかのように目を閉じてじっと動かず、おとなしく首輪を巻かれた。それを見てからディーシャもマーヤに首輪をつけた。


「よし。せっかくつけたから少し庭で走るか?」


そう聞くと2匹は「キャン!」と甲高い返事を返してきた。

庭に出るまではおとなしくぼくの横をついて来たので大丈夫みたいだな。


「庭から出ちゃだめだぞ。」


そう言うと、2匹は庭を走り出した。ディーシャ、ユージ、シェイラ、マリサと走り回って遊んでいる。楽しそうで何よりだ。と思っていると両隣に母上と兄上が立ち、母上が小さな声で話しかけてきた。


「生まれたばかりなのにベルンハルトの言うことは聞くのねぇ。あなたの小さいころより賢いかも知れないわ。」


被せるように兄上も続いた。


「オレの言うことは聞かないんだ。しつけはベルンハルトに任せたからタツミ家の狼としてしっかりしつけるように。」


「ぼくもあんなに素直に聞くとは思いませんでしたよ。でも、すぐにぼくよりも大きくなるのでしょう?大丈夫かな。」


ちょっと不安はあるんだよね。自由を奪う魔法はいくつかあるけど、もっと練習するのと新しいのも考えてみたほうがいいかもなぁ。


「ベルンハルトが舐められなければ良いのです。」


いや母上、それが難しいのでは?


「難しくてもやるのですよ。」


「努力します、いや、やります。」


「よろしい。」


「頼むぞ、ベルンハルト。オレは見守る係りだ。」


元々、2匹を連れてきた時からぼくが面倒を見るつもりだったけど、母上と兄上の二人から念押しされた。そうだ、ぼくがジャンゴとマーヤを守るんだ。


「夕食前の準備の時間が無くなりますよ、切り上げる前にベルンハルトも遊んできなさい。」


母上から言われて、ぼくはみんなの方に駆け出した。

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