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#37 ただいま

立食パーティーの翌日、ナーグドラ王国に向けて艦隊は出発した。


艦隊に限らず船の出航時、乗員の友人や家族が見送りに来る港は大変な騒ぎになるので、朝食後には屋敷で挨拶を済ませてナーバダ公爵夫妻とニールさんと従者たち、そしてナーバダ公爵領に滞在するために同行するタツミ家の文官2名は先行して乗船。それから港の入場制限を解除して大勢の見送りで出航後、多くの人々は船が見えなくなるまで港に残っていた。


屋敷での挨拶は結構あっさり終わった。ディーシャの父、アレックス様も個別にはタツミ領主のお爺さまと父上、こちらに残るナーグドラ王国の文官とだけ話してディーシャには「皆様に迷惑を掛けぬよう。体調に気を付けなさい。」とだけ言っていた。あっさりしてたし、みんな笑顔だった。アレックス様はぼくと目が合った時には頷いていたけど、何の合図かわからなかったのでそこでも笑顔を返すしかなかったな。ちゃんと笑えていたかは自信が無い。


その翌日。

前日と同じスケジュールで、父上とエイバラーン王から派遣されていた外交官のコバックス侯爵が中型船でカデーロ州の港に向けて出港した。王に交渉の報告をするためだ。コバックス侯爵はお爺さまに「お陰様で楽しく良い仕事が出来ましたよ。」と言っていた。そう言ってもらえるとぼくらも嬉しい。


その2日間は、お爺さまから「午後はゆっくり休みなさい」と言われたので「何を言っているのですか。疲れてなどいませんよ」と真面目な口調で反論してみたけど、ほぼ昼寝で終わった。夜もしっかり寝た。むむむ、自覚無しに疲れていたのだろうか。まあ『寝る子は育つ』で伸長が伸びてくれれば不満はないけど。母上からは「2日で背は伸びないわよ。」と冷静に突っ込まれた。


そしてその翌朝、造船村に向けて出発した。

ぼくが乗る馬車の、正面の席には母上、母上の隣に妹のマリサ、ぼくの隣はディーシャで、他の馬車数台に従者や護衛、荷物など。ぼくの護衛のデカーンとディーシャの護衛のユニカさんはそれぞれ馬に乗り、ぼくらの馬車と並走している。


「ディーシャさん、ユニカとシーラと一緒でなくて本当にいいの?」


「はい、まったく問題ありません。」


母上もディーシャの答えがわかっていて聞いたみたいだ。

ユニカさんはデカーンから「乗馬はお得意ではない?」とか聞かれてムキになって乗ってたし、メイドのシーラさんはタツミ家のメイドたちと随分仲が良くなっていて、そちらの馬車の方が気が楽っぽかったし。ディーシャは母上に少し緊張してるかもしれないけど、ぼくとマリサがいるから大丈夫みたい。

今までお客様と行動することはあまりなかったけど、今回で移動のために文官がいろいろ苦労してるんだな、って少しわかった気がする。


「家によっては馬車の手配に失敗した文官は解雇などの処罰があるようですよ。タツミ家と私の実家のカデーロ家では過去にも無いようですが。」


母上がぼくの目を見て言った。あなたエスパーか何かですか?って聞きたくなるくらい、母上は時々ぼくの心の声に答えるんだよね。


「ベルンハルト、あなた()目を見ればわかるのです。」


また答えたよ。うん、母上はエスパーで決定。

ディーシャはちょっと不思議そうに見ていて、マリサはこの会話に興味が無いようだ。


「ナーグドラ王国でもそういう家はあると聞いたことがあります。わたしにはまだわからない事ばかりなので、お父さまからは『学びなさい』と言われています。」


「そうですね、学ぶ意識も大事ですね。わからない事は何でも聞いてね。」


「はい、ありがとうございます。魔法も教えていただけると嬉しいです。」


「いいわよ、ご両親からも頼まれていますからね。」


「はい、宜しくお願いします。」


なんだか自分が好きな人たちが仲良くなっているのを見るだけで嬉しいよね。ぼくがナーバダ家と一緒に馬車に乗った時はものすごく緊張したけどディーシャはまったくそんな雰囲気では無いんだ。さっき『ディーシャも緊張してるかも?』なんて思ったのはぼくの勘違いだったみたいだ。この違いはなんだろう、ぼくがビビリだから?


それからいつの間にか寝ているマリサを見て笑ってたけど、ぼくも休憩後に馬車が走り出してすぐ寝てしまった。後で聞いたらぼくが寝ている間は女子3人で楽しくおしゃべりしていたそうだ。


久しぶりの造船村が見えてきた。

ぼくより母上とマリサの方が久しぶりなんだけど、ぼくはずっと子狼のジャンゴとマーヤに会いたかったからね。久しぶり感が強いんだよ。


馬車が屋敷に着くと、兄上を筆頭に執事やメイド、護衛の兵たちが迎えてくれた。

この並びを見ると、兄上は近くに家族が居ない状況でこの村の代表代行なんだよな。実際の村の運営はまわりの大人たちがやってくれているのはわかってるけどすごいよな。

まあ、ナーグドラ王国のお客様対応で母上がベサイブに行っていたのが元に戻ったから兄上も安心かな。あっちを出発するとき、お爺さまは少し寂しそうだったけどね。


兄上に近づくと、兄上の後ろにユージとシェイラが控えているのが見えた。

みんなで兄上にただいまと挨拶してから二人に近づくと、二人はぼくらと挨拶してからあらためてディーシャに言った。


「おかえり」


「ただいま」


答えたディーシャも嬉しそうだった。

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