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#31 劇場で剣舞の観覧

昨日の夕方、キーストラの街のタツミ邸に着いた。


午前中は家族(ごと)にゆっくりして午後から街に出た。

ひとがいっぱいいる。

わたしが住んでいる城のまわりの街もひとはいっぱいいるけどちょっと違う。

昨日の夕食会で聞いた話では「キーストラの街はタツミの初代が『平民が遊べる街を造りたい』って出来た街」なんだって。わたしたちのナーグドラ王国にも遊ぶための街なんてあるのかな?


今はタツミ邸の屋上から街を見下ろしている。

広場で何かしているのか、時々「わー!」と多くのひとが拍手して騒いでいる。


「大きな劇場が1つ、中くらいが3つ、小さな劇場が12あって、噴水広場の周りでも出し物がいくつかあるんだ」


ベルンハルトが教えてくれた。

演劇、音楽、剣舞、手品、それらを混ぜたものもある。それを見せるひとたちはエイバラーン王国だけじゃなくてトラキラギア連合国やモナエージュ公国のひとたちもいる。


「ベルンハルト、ぼくはベサイブに行くのに何度もこの街を通ったけど、こんなに人がいて楽しそうにしているのだな。知らなかった。」


「マルティーノが馬車で通る道は今見てる噴水広場とは反対側だからね。それに劇場だけじゃなくてお店もいっぱいあっていろいろな国の物を売ってるんだけど、ここで売っている物は商人が直接ケンドリック城に売りに行くからマルティーノには珍しくないと思うよ。ディーシャもね。

 人が多いのは、他の州や王都からここに来るためだけの馬車が有ったり行商人が目新しいものを探すついでに劇場にも行ったりするからなんだって。」


そうなんだ。お店も楽しみにしてたからちょっとがっかり。マルティーノも「そうか」って言ってるから、お店に行ってみたかったのかな。


しばらく街を見回してから中劇場のひとつに向かった。

建物の3階まで降りると廊下を移動する。


「ねえベルンハルト、1階まで降りないの?」


「外を安全に歩こうとすると平民に道を空けてもらうことになるでしょ?そうすると平民も兵士も大変だからってタツミの初代が3階から3つの中劇場に行ける渡り廊下を造ったんだ。タツミとそのお客様専用の通路だね。」


「この通路は200年前からあるの?」


ベルンハルトは「そうだね」って答えてくれた。通路は幅4メートルくらいでまっすぐ伸びていて先が見えないくらい長い。左右には絵が飾られていて、窓もあるけど大人でも街を見下ろせない高さだ。これも安全のためだって。


劇場の2階にある貴賓席ってところに着くと、メイドたちがお茶を用意してくれた。

私たち以外にはお客さんがいないみたい。


ほんの少し客席が暗くなってから舞台上が明るくなった。

舞台の左右からひとりずつ男性が出てきた。わたしと同じくらい濃い肌の色だけど、顔がわたしたちナーグドラ王国の人とは違う。聞くとモナエージュ公国の剣舞をするそうだ。二人とも両手には曲がった剣を持っている。舞台の下にはいつの間にか太鼓を持った人たちが10人くらいいた。小さな太鼓と大きな太鼓。

太鼓の音は一人から始まってだんだん叩く人数が増えた。バラバラに叩いているようでも整った心地よいリズムだ。

剣が打ち合うキンと言う甲高い音が鳴ったので舞台上を見ると、ひとりがクルクル回ってもうひとりが剣を打ち付けて避けているけど、そこでも打ち合う剣の音が太鼓のリズムに合っている。

二人とも回りだした。時々剣が当たる音がして、その間隔がだんだん短くなる。

太鼓と剣の音が合ってるだけでなく、剣舞自体も派手にクルクル回り続けていて面白い。

目が回らないかな?ってくらいずっと回ってる。


舞台に3人増えて5人で回りだした。

一定ではないけどリズミカルに細かく剣の音が鳴り響く。

良く見ると、太鼓の一番右の人と剣の音がほとんど合ってる。太鼓の人はこちらを向いていて舞台の剣舞は見えてないのに。

舞台上ではふたりの時よりも5人が高速回転して剣の音が速く細かくなってきた。逆に太鼓の音が遅くなりながら音の高い太鼓が消えて低い音だけになった。

と思ったら5人同時に剣を打ち付けたところで太鼓の音も剣舞の5人もピタリと止まった。


すごい!


しばらく止まっていた5人が整列してこちらに左足を後ろに下げながら礼をした。

そこで皆、我に返ったように拍手した。


「お父さま、あのような剣舞は初めて見ました!」


「私もだよ、ディーシャ。美しかったね。」


皆の拍手が納まると、中二階に剣舞団の団長が挨拶に来てくれた。

私たちが居る2階よりも少し低い所。


「皆さま、本日はご観覧いただきありがとうございました。

 ドナルド・バーライン・タツミ様より、ナーグドラ王国の皆さま、ケンドリック様、コバックス侯爵ご一行さまに最初にご覧いただくのが我らの剣舞とご指名いただいてから本日の剣舞を仕上げてまいりました。お楽しみいただけたのなら幸いでございます。」


そう言ってから団長は剣舞が終わった時と同じ礼をした。


「団長、見事だった。アレックス殿、私が以前見たときには剣舞の演者は二人だけだったのですよ。5人であれだけの技を魅せるとは驚きました。」


マルティーノのお父さん、すごく楽しそうにお父さまに説明してる。

みんなで順に団長を褒め称えてから、しばらくは剣技について団長に質問攻めだった。

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