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#25 ベルヴェルート先生の授業

「えー、それでは魔法教室を始めます。」


子供たちが拍手をして始まった。


昨日、子供たちはラウンジで剣と魔法の練習とかけっこをしよう、と盛り上がったらしい。

それぞれが自分の親に確認し、今日は午前中がフリーで昼食後に全員で馬車移動と知って午前中に決行となったが、短時間だし体力を削らないように魔法だけにしようと成り、更に「子供だけでは、護衛がいても危ないのでは?」と言う意見も有って、俺が押し付けられた格好だ。

ドナルド兄上とナーグドラ王国のアレックス様は、自分の子供たちは大丈夫だけど、マルティーノが未知数なので安全の為に、って事だった。まあ、しょうがない。やることが終わって午前中に空いてるのも俺だけだしなぁ。


「みなさんは、何のために魔法を使いますか?ひとりずつ、考えて順番に答えましょう。」


すると、ディーシャから

「身を守るためです」


マルティーノは

「戦いに勝つためです」


マリサは

「何のため?わかんない。ベルヴェルート叔父さんがいつも言ってるやつ?」


「ベルンハルトは

「生活を便利にするため」


と、それぞれ答えた。するとベルンハルトが「ベルヴェルート先生は持論がありますよね?」と、振ってきたので、


「持論とは、私自身の意見ですが、『面白いから』です。」


と言うと、『いつも叔父さんはそう言ってるよね』と、ベルンハルトとマーサは変わらないが、ディーシャとマルティーノはハトが豆鉄砲の顔をした。マルティーノが手をあげたので「はい、マルティーノくん」と指さすと


「家庭教師の先生から『魔法は危険なので、ふざけて使ってはいけません』と言われました。面白がって使ってはいけないのではないのですか?」


ディーシャも似たような感覚だったのか、ウンウンと頷いている。


「そうです、ふざけて使ってはいけません。それから面白がっても、今、君たちが思っている感覚ではダメです。

 『楽しむ』のと『ふざける』のは違います。

 ふざけると危ないからダメなのです。危なくないように練習する方法を考えるのも楽しいですよ。

 ところでマルティーノ君とディーシャ君、君たちは初めて自分で魔法を使えた時、『面白い、すごい、楽しい。』と思いましたよね?」


ふたりがまたウンウンと頷いた。


「先生も同じです。初めて見る魔法に感動して、それが自分で使えたらまた感動して、それを工夫して少し違う魔法にしたり、誰も見たことのない魔法を作ったりすると、チョー楽しいんです。」


『誰も見たことのない』のくだりでディーシャがベルンハルトを見た。

そう言えばベルンハルトが、あの『空気の壁を作って物を動かす魔法』をディーシャに見せたけど秘密にしてもらう約束をした、って言ってたな。


「魔法の練習、チョー楽しいよ!」


「そうだよな、マリサ。

君たちはこれから学校に入学するでしょう。そこの先生や先輩、または学校と関係なく家庭教師の先生など、君たちに魔法を教えてくれる人で、その時、その瞬間ではたまたま先生や先輩は出来るけど、君たちが出来ない魔法があったとします。わたくし、ベルヴェルート先生は中学校の時にそのようなことがありました。その時の先生がわたくしと友人に言いました。『君たちは魔法が得意と聞いていたけど、これが出来ないんだね』と。」


「ベルヴェルート先生、そんな先生は殴った上でクビにしていいと思います。」


マルティーノが手を挙げて答えた。こいつ、面白いヤツだな。


「殴ってはいけません。ただ、心の中で『あほかコイツ』と思うのは構いません。子どもより魔法が上手いから先生なのです。生徒が魔法を嫌いになるようなことを言う先生は尊敬できません。」


「ベルヴェルート先生は、その時魔法が嫌いになったのですか?」


ディーシャが悲しげな顔で聞いて来た。


「いいえ、さっき言ったように『あほかコイツ』とは思いました。幸い、わたくしの周りには、その先生など比べるまでもない偉大な魔法使いが大勢いたので、そんな心の狭い先生の言うことなど気にしませんでした。子どもで、魔法が大人のように使えないから練習するし、学校で先生からも教わるんですよ?

ただ、その時に言われた友人のひとりは心が折れて、魔法の練習が嫌いになってしまいました。

その頃、中学の卒業試験で先生と1対1で、魔法で戦う種目も選べました。

だからその友人に、『あの先生に隠れて練習して、卒業試験でやっつけたら面白いと思わないか?』と誘うと、友人は魔法の練習を再開して、わたくしも友人も卒業試験で先生をボコボコにしました。」


子供たちは笑っている。


「何が言いたいかと言うと、先生は、魔法が楽しいから練習して上手くなって楽しい、の繰り返しなのです。さっきの、君たちそれぞれの答えも正解なのです。特に、先生の中学の先生だった人のような『心の狭い人』に『楽しいから』なんて答えると『君は間違っている!』なんて言われて(いや)な思いをするので気をつけましょう。」


子供たちは笑いながら『はい!』と元気よく答えた。


「その、先生の先生だった人は、まだ州都の中学校に居るのですか?」


そんな先生は嫌だ、と言わんばかりの表情で、マルティーノが聞いて来た。


「わたくしが友人に『あほな先生をやっつけようぜ』と誘っていたところを他の友人たちも聞いていて、みんなで揃って練習して、みんなで順番に、その先生をやっつけたのですよ。ただ、このやり方は失敗だったとわたくしは反省しました。逆恨みされるからです。

 元々はその先生が悪いのに、その先生はわたしたちを恨んだのです。特にわたくしを。

 卒業式の最中に、その先生はわたくしに攻撃魔法を飛ばしました。

 もちろん、返り討ちにしました。

 その様子を当時の公爵、マルティーノ君のお爺様が見ていました。

 公爵は「この男はなんだ?」と聞いて、他の先生方からどうしてこうなったか説明されると兵士にその先生を連れて行くよう、命令しました。

 それから、その先生を見た人は誰もいませんので、安心してください。」


そう言うと、意味の分からないマリサ以外は、青ざめた顔で黙ってしまった。

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