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#20 書庫の兄弟、砂浜の勝負

兄上は午前中、地下の書庫に籠った。

父上から入り方の説明と簡単な注意だけ受けてひとりで入っていた。


昼食時は、まわりにメイドたちが居たのでぼくに何か話したいけど話せない、といった感じでうずうずしていた。兄上、落ち着きましょう。


食後、お茶を飲んでから二人で地下に潜った。

兄上はとても楽し気に書庫への入り方などを教えてくれる。

ごめんね兄上、ぼくはもう何度もここに来ていて先に記録を読んでいるんだ。なんて言えないから心の中で謝った。


「オレは午前中で頑張って、最初の1冊目を読んだんだけどな、わからない言葉とか、『なぜ?』といった内容が出てくるんだ。『バイト』とか。読めない漢字もいっぱいある。だからベルンハルトが読めたり意味がわかることを教えて欲しい。」


ぼくはなんとなく話の内容がわかった、と思ってたけど本当に理解していたのかな。

兄上はなんとなくで読み飛ばさずに、初代様の伝えようとしていることをわかろうと思っているところがすごいな。

ぼくが最初から声に出して読み始めると、兄上がわからないところで手を挙げて質問タイムが始まる。何回か繰り返していると、ぼく自身が「なんとなく」だったことを説明しようと考えることで理解するようになった。


「なるほどな、教えてもらって助かったよ。よくわかった。

 それにしても、父上たちからいろいろな話を聞かずにこの最初の数枚を読むと、王家が憎くなるな」


「ここに出てくるほとんどの王族って、タツミ家だけでなく他の頑張っている領主や領民にとって鬱陶しいよね。主流派がまともなのが救いだね」


「主流派?」


「一番力を持っているグループってことかな。国の主流派は、当時も今も王家だね。だけど、王家の親戚の一部の王族が自分たちだけ得をしようとして、平民の為に動く王家の足を引っ張ってるみたいだ。


 ところで、ぼくもわからないこともあるんだけど、兄上とぼくと、わからないところに紙を挟んであとで聞くようにしない?」


「いいな、そうしよう。オレは赤、ベルンハルトは青色の紙にしよう」


今日は2人でわかることを確認しながら読み進めて、ディーシャたちがいる間はあまりここには来ないようにしよう、と話し合った。




兄上と書庫から出た。

2人でラウンジに行きゆっくりとお茶を飲む。子どものぼくらには難しい話が多いからかな。楽しくてついつい読んでるとすごく時間がたってるし疲れちゃうんだよ。


「父上たちから話は聞いていたけど、やっぱり面白いな」


今はメイドがラウンジの中にいるので、あまりその話はしないほうがいいが、兄上は我慢できないみたいだ。初めて読むとそうだよね、その気持ちはわかるよ。あからさまに話題を変えよう。


「ところで兄上、今、魔法はどんな勉強をしてるの?」


兄上は気づいてくれた。


「魔法の種類を先生から指示されてから、どれだけ早く出せるかとか、魔法が使える魔獣に自分だったらどう戦って勝つか、とか。あとは1年生のときから続いている、生活を便利にする魔法だな。」


ちょっと庭でやってみようと出ていくと、ちょうど砂浜組が帰ってきた。

「スーパーリヤカー」には子狼のジャンゴとマーヤだけでなくディーシャも乗っている。


「おかえり。楽しかった?」


ぼくが聞くと、ユージがニコニコとニヤニヤの中間のような、何とも言えない笑顔で話し出す。


「砂浜を上手に走る練習をしてきたんだ」


「うん、走るって言ってたね。」


するとディーシャが悔しそうに大きな声を出した。


「2人とも、ユージもシェイラもおかしいのよ!なんであんなに速いの?!身体強化の魔法を使ったわたしより使ってない2人の方が速いのよ?!」


。。。怒ってるディーシャも可愛いな。


「年季が違うわよ。わたしたちは歩き出したころからハマで走ってるんだから。だからディーシャがわたしたちよりちっちゃい子に負けてもしょうがないのよ」


シェイラは自慢げだ。まあ、そうだよね。毎日鍛えてるし。村の子どもによっては、その足が人生を決めることもあるんだから。


「ディーシャ様、私はデカーン殿に挑む前に、シェイラ様に負けたんですよ。」


あ、よく見たらディーシャは自分に怒ってるけど、ユニカさんは猛烈に落ち込んでる。

なんだかいろいろなドラマがあったっぽいな。


まず、ユニカさんが「砂浜を走るのは子供のころ以来ですね」なんて試しに軽く走ってたらユージに後ろから追い越された。「今のはノーカウント!」と、よーいドンで走ってやっぱりユージが勝った。その後、よーいドンで2倍の距離を走るシェイラに負けた。

「ユニカ、(かたき)を取るわ!」と出てきたディーシャは、もっとぶっちぎりで負けた。何度も何度も。それをディーシャとユニカさんが気が済むまで繰り返して、途中、小さい子が乱入してきたけどその子にも負けて、今2人はへろへろに疲れている、ってことだそうだ。


「そんなに走ったなら、今夜はぐっすり寝られるね」


「悔しくて眠れないかも。。。」


ぼくの言葉にディーシャが返してきた。ディーシャも負けず嫌いだな。この造船村の気質に元から似ているのか、染まってきたのか。


「風呂は準備しているよ。2時間後に夕食にしよう。ユージとシェイラも今日はここで食事にしないか?そうするなら二人の家には連絡をいれておくよ」


兄上が嬉しい提案をしてくれた。

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