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#19 辰巳虎次郎の日記 #2

辰巳虎次郎、30歳。#2


昨日、書いた記録を読み返してみた。我ながら良く書けた。自画自賛。


たまに、こちらで生まれた人にはわからないだろう内容もあるが、一般に公開するものではないので代々教え伝えていけば良いだろう。


あの後、

ルイ王子についてきた初老の男が「すぐに訓練を開始しろ」と言って来た。


あほかコイツ。こちとらお前たちの常識なんか知らないんだよ。なんだよ、勇者しょうかんって。

まずはていねいに食事を要求した。ジジイが「時間が」とかブツブツ言っているが、ルイ王子がジジイをなだめてから食事の準備を指示した。


王宮で、王族が普段食べているものを用意された。

王子と付き添いの5人も一緒に食べた。

食べ方は少し違うが許容範囲。地球でも国や地域性で違うこともあった。これは問題ない。


料理がショックだった。

2割は美味い。4割はマズくはない。4割は一口であきらめた。瑠海もだいたい同じだった。香辛料は種類が豊富だと言われたので、改善は可能と思われた。


トイレ。

さすがにシャワートイレのような便利機能までは無いが、トイレがくつろげるほど広すぎる以外は問題ない。但し、平民の家や小さな商店、場合によっては下位の貴族でさえトイレは無いらしい。公衆トイレなど無い。魔獣をたおすために向かう森や平原にももちろんない。

これは簡易トイレや移動式トイレ、仮設トイレなどの開発を求めよう。場合によっては共同開発だ。


風呂もトイレと似ていて、あるかないかは金持ちかどうか。地域によっては温泉文化があるらしい。


ざっくりとこれだけ聞いて、今日これからは、1日生活しながらわからないことを教えてもらうことになった。


食事に薄めたブドウ酒が出てきて、マズいスープ以外に飲めるものはなかったが、この世界ではこの薄いブドウ酒が私たちの世界の水やお茶に相当するらしい。私たちの世界と言っても知らないだけで違う国もあったかもしれない。

私たちは20歳になったばかりで、マジメにほとんど酒を飲んだことが無かった。薄いブドウ酒で私は少し酔ったが、瑠海は変わらない、少し悔しい。

日本は水道水が飲める珍しい国らしいが、そうでない国でもミネラルウォーターがあった。コンビニとか、自動販売機の話は控えた。信用していない相手に、なんでも普通には話せない。自分たちの生活改善につながる話に留める。


水は一部の地域やピンポイントの湧水だけなら飲める、普通は一度沸かさないと飲めない。と言われ、ミネラルウォーターにおどろかれたので

「それだけでも文化や生活が違う。お互いの当たり前を知らないから訓練を始めるとしてもそれを確認しながら、それとは別に、毎日数時間は生活を教えてくれる先生と過ごしたい」、と頼んだ。


王子がもっともだと快諾してくれた。


翌日。

王子がなんでも言ってくれと言うので

風呂では石鹸の泡立ちが悪い、シャンプーはあるがリンスがない、ベッドのクッションは悪くないが、シーツのようなものや服の肌触りが最悪。不満はあるが、互いに協力できるなら食事も含めて改善したいと伝えると、王子はさっそくお付きに「5人選べ」と指示した。


昨日のうるさいジジイがいない理由を聞くと、アレは王子の叔父、現王の弟で手柄ほしさにしゃしゃり出てきたが、王に昨日の報告をしたら外されたらしい。ザマアミロ。


朝食はマシだった。事前に話したことをかなり理解して準備してくれたようだ。王子、有能。お付きの誰かかもしれないが。


その流れで、午前中は香辛料なども含めた食材などを見せてもらいながら、料理長を交えてどんな料理があってどんな味付けか、すぐできるものや下ごしらえしてあったものを試食しながら味を調整したり、下ごしらえは手が込んでいてこちらがおどろくものもあったが、私たちの技術を教えたりと楽しんだ。

私たちは個人経営のレストランでバイトしていたので、年の割には料理を知っていると思う。オーナーシェフは根気よく私たちに教えてくれていたことを思い出してかんしゃした。


料理長と雑談していたら、あのジジイが外交担当のナンバーツーだとか。大丈夫か?この国。と小声で言うと料理長は聞こえないふりで苦笑いしていた。


昼食は、料理長といっしょにトンカツを作ってみた。マズくはないし失敗ではないが瑠海と2人で「これは違う」と言うと、料理長が「自分は毎日は今日のように創作できないので、有望な若手を2人つける。一緒にいいものを作って欲しい」と言われた。

王子以外にも理解者が増えた。


午後は剣と魔法を見せてもらった。

剣道の経験がある私は、木刀なら振ったことがあったが、真剣にはさわったことがない。瑠海は荒事にかかわったことがない。

しかし、昨日から予感はあった。普通に動くぶんには今までと変わらないが、室内で飛び上がろうとすると床を踏み抜きそうなほど力が入り、リンゴを持った時に意識すれば簡単に握りつぶせそうだった。

武人らしき男が、両手剣で「フン!」と掛け声を発すると丸太が切れた。彼は部隊の先頭に立つ有能な武人の一人らしい。

私は片手剣を持ち軽く振ると、カッターで紙を1枚切るくらい簡単に切れたら周りから「おお!」と声が上がった。パワーは「勇者」として合格らしい。これ、本気出したらどうなるのだろうか、と思った。剣の技術は追い追い、となった。


長くなったので、魔法の話は次回としよう。

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