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#15 タツミ家の次男は

「大事な話とはなんでしょう」


父上があらたまって言ったので、兄上も少し緊張してる。


「タツミ家の、直系の次男は代々転生者だ」


緊張していた兄上が更に固まった。

それから目線だけ上げたので、一生懸命、考えているっぽい。

お茶をひとくち飲んでから話し出した。


「今まで父上とお爺様から、初代から続くタツミ家とタツミ領の話は聞いてきました。

 初代様は国の、世界の危機に異世界から呼び出されてこの地に来た転移者だと。

 世界を救うことに尽力し、この地と辺境伯の爵位を賜った。

 初代様の元の世界には転移者や転生者の物語があるが、まさか自分が転移者になるとは思わなかったので、もしかしたら転生者もいるかも知れないと伝わる、と聞きました。」


兄上、意外と冷静だな。


「そうだ。しかし「いるかもしれない」と言ってきたのは、お前たちを混乱させないためだ。


 『初代様の記録』によると、初代様の次男であるベルナルド様が5歳のときに突然『異世界のことを知っている』と言い出したそうだ。異世界で生まれ、生きて、亡くなるところまでの記憶があって、それが初代様の話してくれる初代様の元の世界とそっくりだ、と。

 ただ、初代様はその能力を優先せず、あくまで長男のトール様に家督を譲った。

 トール様は初代様の遺志を継いで開拓に邁進し、ベルナルド様もそれを助けたそうだ。


 その後、トール様の次男も転生者だったが、ベルナルド様の子どもは違った。

 以後、タツミ領主の次男は今まで全員が転生者だ。

 ベルンハルトも、俺の弟でお前たちの叔父のベルヴェルートもそうだ。例外はいないらしい。」


それから、また少し考えている兄上がいたが、兄上が話すまで父上もぼくも待った。


「ベルンハルト、お前はいつ気づいたんだ?」


「3才か、4才の時に周りには見当たらない変な知識があることに気づいたんだ。

 自分の、今の記憶があるころからじゃなくて、少しずつ何かを思い出す感じ。

 5才の時、お爺様の話を聞いていて突然「それ知ってる!」って思った。

 なんで?って不安になってたらお爺様がタツミ家の次男の事を、ゆっくり教えてくれた。

 『たぶん、お前もそうだろう』って。

 しばらくは不安だったよ。だけどベルヴェルート叔父さんがいろいろと話してくれた。

 自分も悩んだから、なんでも話せって」


「叔父さんが1年くらい、ずっといたころか」


「そう。まだ不思議だけど納得はして、自分も叔父さんみたいに兄上の力になりたいって思ってるよ」


兄上は、今度は目だけでなく頭ごと上を向いてしばらく考えていた。


「初代様が転移者で、叔父さんの不思議人間なところを考えると理解できるよ。でもベルンハルトがそんなに小さなころから苦しんでたなんて知らなかった。ごめんな。」


涙があふれて止まらない。

兄上に「気持ち悪い」って思われないか不安だったのに。

ぼくが泣き止むまで父上も兄上も待ってくれた。

しばらくして涙を拭くと、兄上も少し泣いてた。


父上が、ぼくらが落ち着くのを待ってから話し出した。


「タツミ家の領主の子どもは代々、この造船村の小学校で学び、ケンドリック州都の中学でタツミ家と親交のある他領の子供たちと交流し、王都の高校でこの国のいろいろな考えを知る。

 再来年になるとフィリップは州都の中学に進学だな。

 明日から地下の書庫入りを許すから、『初代様の記録』を最初から順に読んで勉強しなさい。

 初代様の思いも、それを継ぐことがどういうことかも、いろいろとわかると思うぞ」


父上の言葉にふたりでうなずいた。

ぼくはもう、少しずつ読み始めているけど兄上には内緒だ。叔父さんからも勧められたし。


「ベルンハルト、記憶ってなんでも細かく覚えてるのか?」


「さっき少し話したけど、一生分の記憶が鮮明に、って感じじゃなくて、3才くらいからじわじわと思いだすことが今の自分の経験と違う、って感じ。今は『これが叔父さんが言ってた一生分の記憶ってヤツかな』ってのがあるんだけど、自分のその時の名前とか親しいひとの名前とか顔がわからない。何か見たときとか、新しい何かを考えた時に、物の名前とかここでは新しい技術とかを思い出すんだよ。」


「まだ大変そうだな、大丈夫なのか?」


「うん、叔父さんもこの前『慣れるまでもう少しかかりそうだ』って言ってた。」


「そうか。辛かったらオレにも言えよ。お前には叔父さんみたいにオレを助けて欲しいからな」


無茶を言う。


「それは無理だよ。叔父さんは子供のころから村でなんでも1番だったりすごいひとだから。ぼくは村で1番、足が遅いんだ」


3人で少し笑ってから、父上が言った。


「ステファニアはもちろん知っている。けれど2人の妹のマリサは知らない。マリサには時機を見て俺から話す。それからカマをかけられたとしても誰にも言うな。

 ただ、家族以外で一人だけベルンハルトの記憶のことを知っている者がいる。

 テイラー子爵家の次男、ユージだよ」


また兄上が固まった。兄上は何か言いかけて一度くちを開けてから結んで、続きを促すように父上を見た。


「ユージも転生者だ。

 初代様から続くタツミ領で、領主直系以外で唯一の。記録にもないからな。

 ベルンハルトと話していてお互いに気づいたそうだ。あいつには酷だが、俺たち以外には誰にもその話をするなと言ってある。あいつは言いつけを守っているよ。

 幸いなことに、ベルンハルトとユージは気が合っているようだしな。


 フィリップは、ユージについては今まで通りに接してやってくれ。

 

 他にも聞きたいことはあるか?

 どうせこんな話のあとでは眠れないだろう。」


そう言って父上は、新しくお茶を入れるために立ち上がった。

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