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#1 ベサイブに行こう

「お父さま、見えました」


春の日差しとさわやかな風が心地良い船上からようやく目的地が見えてきた。




港町、ベサイブ。

200年前、勇者が造ったと伝わる場所。

文字を覚えて最初に読んだ「勇者物語」に登場する都市に行ってみたいと思った。

けれど、お母さまから


「ベサイブは異国だしとても遠い、難しいわね。」


と言われてしょんぼりした。




しばらくして、(うち)にお客さまが来た。

お母さまから一緒に挨拶するように言われて少し驚いた。

うちはお客さまが多いけれど、今までわたしが会って挨拶したのは王家だけだった。

10才のお披露目までは、親族以外とは正式に会わないのが普通なんだって。


客間に居たのは不思議な人たち。おとなの男の人が3人。

虎のように大きいひと、髪が森のように深い緑色のひと、髪が茶色いひと。

初めて見る服。肌も黒くない。でも、みんな笑顔で優しそう。


「昨日は楽しい夕食会をありがとうございました」


虎のひとが代表して一言、そしてわたしに向き直って左ひざを床に落としてくれたけど

それでも目線はとても高い。


「初めまして、お嬢様。わたしはエイバラーン王国から来ました、ドナルド・バーライン・タツミです。」


虎さんはタツミさん、覚えた。ん?タツミさん?


「初めまして、わたしはエドワード・グッドランです。」


緑さんはグッドランさん。


「初めまして、わたしはジョン・コバックスです。」


茶色さんはコバックスさん。


「初めまして、ナーグドラ王国のナーバダ公爵家、アレックス・ナーバダの長女、ディーシャ・ナーバダ です。」


言えた。外国のお客さまと会ったのは初めてで緊張したけど王国名からちゃんと言えてホッとした。

お父さまもお母さまも、まわりに控えるメイドたちも笑顔なので成功らしい。良し。


お父さまに促され、お客さまとわたしたちがソファに座るとお父さまが教えてくれた。


「ディーシャ、タツミさんは勇者の子孫で、皆さんはベサイブから来たんだよ」


「えっ?

 ベサイブから来たってことは、行ける方法があるの?」


そうだ、勇者の名前がタツミだった。

それも気になったけど、ベサイブに行く方法がありそうなことにワクワクした。


わたしが目を輝かせていると、お父さまが豪快に笑ってから説明を続けてくれた。


わたしが生まれ、住んでいる国「ナーグドラ王国」はとても大きく豊かな国。

南は海、東は小さな国がいくつか接していて、多くの商人が行き来している。

北は「黒の森」に覆われ、そこには多くの魔獣がいて国の軍隊も入れないほどの危険地域。

西は「迷いの砂漠」が広がり、古くから「踏み込んだら帰れない」と言われている。


そこまでは知ってる。


「迷いの砂漠」を越えるとトラキラギア連合国がある。

陸路で「迷いの砂漠」は越えられないが、海からトラキラギア連合国と往来している。

トラキラギア連合国の更に西にエイバラーン王国がある。

そのエイバラーン王国の、いちばん西にあるのが海洋都市ベサイブ。


「我らがナーグドラ王国の船では難しいが、ベサイブの、タツミ家の船は大きく頑丈でとてもはやい。ベサイブとここを行き来できるんだよ」


知らなかった。すごい。行きたい!。

たぶん、わたしの目は8年の人生でいちばん輝いている。


するとお父さまが聞いてきた。


「ディーシャ、ベサイブに行ってみたいかい?」


「はい!」


元気よく答えると、みんな笑い出した。でもお母さまだけ少し寂しそう。


「そうか。出発は1週間後。行くのはわたしとディーシャ、あとは供が6人。6人の中で、ディーシャに付くのは護衛のユニカとメイドのシーラ。

 船で往復するのに2週間から20日くらいかかるが、話し合ったり街を巡ったり、やることがいっぱいあるから帰るまで早くて1カ月、長ければ3カ月かかるぞ。

 それに船の旅は絶対安全とは言えないからな。

 それでも行きたいか?」


ああ、そうか。

お母さまは一緒に行かないから長く離れ離れになる。

船に限らず、ベサイブの街もどこまで安全かわからない。


お母さまは不安なんだ。


「ディーシャさん、今すぐ決めなくてもいいんだよ。

 もちろん、来てくれたらタツミ領をあげて歓迎するよ。良く考えてね。」


タツミさんは優しく声をかけてくれた。


お母さまには悪いけど、ここは悩む必要はないな。


「わたしは行きたいです。

 ただ、わたしは貴族としてお披露目前の立場なので、正式には後日回答させていただきます。」


言った。言っちゃった。


遠くに控えているメイドのシーラがウンウンと小さく頷いているので正しく答えられたっぽい。

。。。いや、シーラが行きたいだけなのか?


「わかりました。わたしの大好きな街に行きたいと言ってくれてありがとう」


そう言ってタツミさんは今日イチの笑顔を見せてくれた。

初投稿です。


なんとなくはじめたので、タイトルとか変えるかもしれません。

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