カイン
侯爵邸は貴族の屋敷と言うより要塞の様な造りをしている、元々ダンジョンの監視や氾濫に備えて作られた建物なので武骨だ。今ライル達はその武骨な侯爵邸に入ろうとしていた。
「セバスさん、正面から入って良いのですか?」
ライルがセバスと呼ぶ執事に問い掛ける。
「カイル様からお客人として御案内する様に言われてます」
セバスの言葉にライルは面倒くさいなぁ、とか思っていたりする。
「もしかして公爵様は御不在だったりします?」
「はい、ご推察の通りです」
ライルにとって面倒臭さが増した。
「ライルさん、我々はどうすれば…」
アリト達は緊張に加え予想外の展開に頭の回転が追いつかないようだ。
「アリトさん達は僕の後ろで、出来るだけ喋らないようにお願いします」
ライルからの指示に取り敢えず了承するアリト達、そしてライル達は控え室のような場所へ案内される。
「こちらでお待ち下さい」
とセバスに言われた部屋で待つ事に、アリト達は挙動不審に部屋を眺める。
「カイン様とはどの様に方なのでしょうか?」
ミシェルが質問してくる、他メンバーも聞きたいようだ。
「公爵様の次男で悪い人じゃ無いですよ、正義感が強く差別意識も少ないお方ですね…たた…少しウザいですけど…」
その時控え室のドアがバーンと開いた、御本人の登場のようだ。つかつかとライルに歩み寄りライルの前に止まるとライルを抱きしめる。
「ライル!久しいな!元気だったか!」
「カイン様も…相変わらずお元気なようで…」
ライルはカインに抱き締められたまま振り回されている、どうやらいつもの事のようだ。カインは短めの金髪に碧眼、身長は185㎝程だろうか体格は細めだが筋肉質な感じだ。カインはライルを抱きしめたままアリト達を眺める。
「お前達がライルの仲間か!ライルと仲良くしてくれてありがとな!」
カインが満面の笑みでアリト達に語りかける、しかしアリト達は困惑する。侯爵の息子に話し掛けられ対応に困っている。
「カイン様、いきなり話し掛けられては彼らも困ります。まずは落ち着きましょう」
それもそうか、とカインはライルを解放する。そしてライル達に座る様に促す、全員が座った所でカインが口を開く。
「ライルとその仲間達よ、よく来てくれた。特にライルの仲間達、気負わず依頼を熟して欲しい。なに難しい内容ではないしライルが一緒なら安心だ、しかしライルに仲間が出来るとはな〜」
何やらカインから暖かい眼差しがライルに向けられる、ライルとしては居心地が悪い。
「ライルへの依頼内容は私の従姉妹への結婚祝いの品を運搬して欲しい、仲間達にはライルの護衛依頼だ。15日後までに届けば良いから日にち的には余裕がある、受けてくれるんだろ?」
「場所は何処ですか?
ライルが質問する。
「エルザムの街の領主邸だ、問題が起こらない様にウチの馬車を使ってもらう」
侯爵家の家紋入りの馬車を使うという事だ、面倒が無くなるのは良い事だ。
「なら片道4日、余裕を見て5日の予定で組みますね。道程は此方の自由で構いませんか?」
タマを連れてく許可が欲しいライル。
「ウチの馬車なら片道3日で行けるぞ、現地まではライルの自由にして構わない。家族を連れて行きたいんだろ?」
カインはニヤニヤしながら答える、どうやらライルに関してある程度把握してるようだ。
「うわー面倒臭い、その内カイン様にも紹介しますよ」
侯爵の息子に対する発言ではない、アリト達の顔が青ざめる。
「侯爵家の者に言う言葉じゃ無いだろ、まぁ良いけど」
カイルは気にしないようだ。
「では何時荷物を受け取れば良いでしょうか?此方は何時でも構いません」
ライルはアイテムボックスに収納するだけなので簡単だ。
「明日にして欲しい、明日朝にでもまた来て欲しい」
何か含みのある言い方だ。
「わかりました、明日9時に伺います。荷物の受け取りだけなので僕一人で来ます」
含みに合わせてライルが答える。
「わかった、私も立ち会おう。ところでライル、仲間を紹介してくれないのかい?」
ライルとしてはこのまま仕事の話で終わりたかった、だがカインは逃してくれない様だ。ちらりとアリト達を見る、どうして良いか分からないって顔をしている。仕方がないとライルは諦めて視線をアリト達に向けて紹介を始める。
「僕が今パーティを組んでる仲間達です、はい、言わなくても分かってます。僕が彼らを仲間と紹介するのを面白がってますね、そうです、仲間です」
ライルの顔が少し赤い、照れてる様だ。
「私は何も言ってないんだが?しかしそうか、ライルにも仲間が出来たんだな。私も嬉しいよ」
カインも何か思う事があるようだ。
「では1人づつ紹介して行きますね」
侯爵邸の滞在はもう少し伸びそうだ




