昇格試験4
「ジジイは元気いいな!」
ライルは疲労回復薬を飲みながらオイゲンに愚痴る。
「お前が若いのにだらしないんだろう」
オイゲンは回復薬を飲む事も無く涼しい顔をしている、流石は元Sランクだ。
現在30階のボス部屋手前でライルの回復待ちである、回復薬を飲み干したライルはアイテムボックスから食料を取り出す。
「ジジイも食べるだろ?串焼きと茶でいーか?」
平民が男爵に言う口な利き方ではない、しかしオイゲンも全く気にしない。
「熱い汁物も欲しいな、何かないか?」
「ちょっと待てよ、ほら家を手伝ってくれてる人の作ったスープだ」
アリアの作ったスープを椀ごと渡すライル。
「匙も寄越さんか、しかし相変わらず便利なスキルだな」
動じず食事を始めるオイゲン、スープを飲んで「美味いな」と言ちる。
「ところで獣人の娘はどうしてる、可愛がってるらしいな」
「タマだ、名前は覚えてくれよ」
「すまん、そのタマちゃんだがお前と上手く暮らせてるのか?」
オイゲンの質問にライルの表情が崩れる、ニヤけてだらし無い顔と言ったところか。
「タマは良い子だよ、優しいし人の気持ち察する事も出来る。寝る時に抱き着いてくれるし俺の顔見ると笑顔見せてくれる、寝る前に好きだと言ってくれるし座ってると隣に寄ってくるんだ。他にも…」
「待て!わかったから大丈夫だ!」
オイゲンが必死に止める、ライルはまだ話し足りないような顔をしてる。
「ライル、お前は良い方向に変われたようだな」
言われたライルは呆然としている、少しして何か納得した顔でオイゲンに告げる。
「うん、俺は変わったと思う。タマと出会ってから人との繋がりを感じるようになったよ、家に来てくれる人やパーティメンバーも大事に思ってる。少し前まで自分以外どうでも良かったのに」
ライルは自分で言って照れてるようだ。
「そうか…」
オイゲンは優しい眼差しでライルを見詰める。
「さて、そろそろボスに挑むか!」
ライルがオイゲンの視線から逃げるように立ち上がる、オイゲンもライルに合わせて準備する。そしてボス部屋に突入する2人、ボス部屋には2体のクイーンが待ち構えてる。
「さっさと終わらせる」
ライルの言葉通りに2体のクイーンは一瞬の内に首を刎ねられる、そのまま死体を収納していくライル。
「ほんと便利なスキルばかり持ってんなお前は」
ライルの能力を知っているオイゲンは動じない、能力を知ってるからこそライルを上級冒険者に押すのだ。
「好きで手に入れた能力じゃ無いけどな」
ライルが吐き捨てる様に言う。
「さぁ、次へ行こうぜ」
ライルがオイゲンを急かし2人で先を急ぐ、急ぐが地下31階からは罠がある為進む足が鈍る。ライルは鑑定を使い慎重に、しかし早くと進んで行く。時間を掛けて40階に到着した2人、時間を掛けずボス部屋に突入した。
「サクッと倒して終わりますか」
切断スキルで一刀両断、ほんとにサクッと倒すライルである。回収しようとミスリムゴーレムに近寄ると見知らぬ球が転がっている、鑑定で確認してみると"転移球"とだけ反応する。
「ジジイ、これ何か分かるか?」
「ん?珍しい物持って来たな」
「転移球って名前らしいが何なんだ?」
「珍しい品だよ、今までに俺も2回しか見た事ない品だ。どうやら稀にボスから入手可能なようだ、名前の通り転移陣から転移陣へ転移可能だ。ライル、何処で手に入れた?」
「いや…今ミスリルゴーレム回収しようとしたら側に転がってた」
「なら地下1階から地下40階を繋ぐ転移球だな、多分他の階には行けないはずだ。パーティでも使えるから最大8人だな、」
転移陣は一回に運べる人数が最大8人、なので1つのパーティは最大8人となっている。
「個人で持ってて良い物なのか?」
「勿論だ、個人が入手した品をギルドが取り上げたりしないよ。ただ使うといきなりボス戦になるから扱いが難しいがな、まぁお前なら関係無いか」
ライルとしては良い物が手に入った程度に考えているようだ。
「とりあえずこれで試験は合格だろ?ギルドに行ってカード更新すりゃ良いのか?」
「いや、試験は終わってないぞ、討伐試験は終わったがまだ貴族の依頼試験が残ってる」
ライルの目が点になる。
「はぁー!聞いてないぞ!」
「伝達にミスがあったようだな」
オイゲンは笑って答える、絶対にわざとだ。
「まぁ心配するな、貴族と言ってもガルタ侯爵からの依頼になる。いつもの荷運び依頼さ、報酬も出るぞ」
ライルは少し考えオイゲンに質問する。
「依頼内容に交渉の余地はあるのか?」
「ん?何か考えたのか?まぁ交渉は出来るだろう」
「なら今日は帰るか、ジジイ、今日はそれなりに楽しかったぞ」
「俺もだ、偶にはお前とサシで話すのも良いな」
そして2人で転移陣に乗り地上に帰るのであった。




