#52 お見舞い
~ルルン~
20代くらいの青年。
イラスト、アニメ、ゲームが趣味。
文章は丁寧に書き込むけど遠回りな表現は苦手。
小説の腕はアマチュアなので、優しく見守ってね。
#52 お見舞い
1月中旬。
気温も一桁台になり、寒さも一段と増してきたここ東京。
外は雪がチラチラと振りはじめ、山形に行ったときを思い出した。
そんなある平日のこと。
いつものように学校に通う僕。
しかし、隣に山村の姿はなかった。
朝。授業が始まる前にこのはと話をしていた。
「山村さん、心配です...。
噂によると幸佳さんも風邪をひいていて、それがうつったとのことですが...。」
まさにそういうことかもな。
「おい、山村がなんだって?」
声をかけたのは、珍しく池戸だった。
「べ、別に山村や幸佳のことが心配で声をかけたわけでは...」
池戸も素直じゃないなぁ。
「おやおや。皆さんおはようございます。もうすぐ授業の時間ですよ?」
誠のやつがやってきた。
山村がいないとうまく対抗できそうにない...
「おい誠。てめぇこいつらに手ぇ出したらただじゃおかねえからな...?」
そう言ってさっさと教室に戻って行った。
「ぼ、僕もそろそろ戻るです...」
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昼休みになった。
いつもなら山村と一緒に弁当を食べているのに...。
ひとりで食べる弁当はなんだか不思議だ。すると...
ガタン...
隣に座ってきたのは委員長、美里愛である。
「今日は山村さんお休みのようですね。
ということはつまり、私と一緒に...!」
「おーい!春野!ちょっといいか?」
危なく美里愛と一緒に弁当を食べることになりそうだったところ、
厚木が助けてくれた。
「あ、はい...」
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厚木に呼び出され、職員室にやってきた僕。
「休憩時間に呼び出してすまなかったな。山村のことで話があるのだが...」
一体何なんだろう...
「山村の欠席理由なんだが、それは幸佳の体調不良のためなんだ。」
「は、はい...」
幸佳が体調不良なのは始業式の日から知っている。
そういえばそこから幸佳と会っていないな。
「心して聞け。実は幸佳...入院している...!!」
バン、バン、バーン!
...というカットが入りそうな驚きを見せつける厚木。
だから真面目な話の途中にふざけた真似をするな!
しかもそれ自分で言っただろ!
「...そ、そうだったんですね...」
あれ(意外と冷静)...と冷めてしまっている厚木。
「そ、そうだ。入院とは言っても命にかかわることではない。
冬休みに山形へ行ってきたそうだが、そのあとから体調を崩し、
ちょっとこじらせているだけだそうだ...。な、そうだろ...?!春野!?」
ただ本気で心配していたようで、いきなり泣きはじめてしまった厚木。
「ぼ、僕に聞かれても...」
「ということで先生の代わりにちょっと様子を見てきてほしい!!
お前が行けばあの2人も元気になるだろうしよ!!」
泣きながらも必死にグッドサインを僕に見せている厚木。
...ということで放課後、幸佳の入院している病院に行くことになった。
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「梶原様ですね。あちらの部屋になります。」
病棟に入って、幸佳のいる部屋のところまでやってきた。
コンコン...
「...おお、どうした、翔くん。」
出迎えてくれたのは幸佳のお父さん。
そして山村の姿もあった。
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「じ、実は担任の先生から話を聞いて...」
そうか、そうかと納得してくれた父、琉夷さん。
「会いたかったよ、友...!勝手に休んだりしてごめんな...」
山村も笑顔を見せてくれた。
「それで、幸佳は...」
目の前に置かれた患者用のベッドの上ですやすやと眠っていた。
「ああ、実はおととい入院したばかりなのさ。
君も先生から聞いたなら分かると思うが、幸佳、山形から帰ってしばらく
体調が優れないままでね。」
それは大変だったな...
「まあ命にかかわることはない。ちゃんと検査もしてもらったからな。」
琉夷さんも心配させまいと、必死にフォローしてくれた。
「...でもなんで...」
「恐らく山形での寒さと旅の疲れが
帰ってから一気に負担としてかかったんだろうな。」
なるほど...
「ほら、今回は優雅や翔くんたちも一緒だっただろ?
それでいつも以上に負担が大きかったみたいだな...」
それを聞いて山村は軽くうつむいている。
「すまない...義父さん...幸佳をこんな目に...」
山村が泣いていることが分かった。
普段人前で泣いたりすることのない山村が泣いているなんて...
琉夷さんが山村に声をかける。
「大丈夫、優雅のせいじゃないからな...」
そう言って席を立つと、
「よし、もう帰るぞ。翔くんも一緒に送ってあげるよ。」
そのひと言で、病室を後にした僕たち。
「幸佳。また明日...。」
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家に着く頃にはすっかり日が暮れていた。
山村は明日も幸佳と一緒にいるとのことだ。
「あ、ありがとう、ござい、ました...」
家の前まで車で送ってくれた琉夷さんと山村。
「こちらこそ見舞いに来てくれてありがとう。またな。」
ブーン...
「...あれ。翔じゃん。どこ行ってたの?」
車から降りたあと、ちょうど姉の帰りと被った僕なのであった。
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翌日。
昨日言っていた通り、今日も山村は学校に来ていなかった。
「おはようございます、翔くん。」「うっす。」
水野さんと美歩に声をかけられた。
「やっぱり山村さんと幸佳さん、心配ですね...」
水野さんも心配している様子。
「うん...」
明らかに元気のない僕と
これを見てさらに心配そうにする水野さん。
「そ、そうだ。今日の昼、ラーメンでも食べに行かないっすか?」
美歩はそれを元気づけようと、僕と水野さんをラーメンに誘ってくれた。
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昼休み。
さっそく近くのラーメン屋さんにやってきた僕ら。
「らっしゃい!」
こんなに近所ラーメン屋があったんだ。
学園の生徒も何人かいる。
いつも昼休みは弁当だったから外に行くなんていうのははじめてだ。
とりあえず4人席に座ってみた。
「先に言っておくっす。誘っただけであって支払いは割り勘っすからね。」
なっ...。
「そこは美歩が払ってくれるとこだろ...?」
美歩につい言い返してしまった。
「まあまあ。いいじゃないですか。私たち3人でラーメン屋なんて、
滅多にありませんから...」
そんな言い合いをしていると、
「醤油ラーメンくださーい。」
既にラーメンを注文している美歩。
「あいよ!醬油ラーメン1丁!」
「わ、私も醬油ラーメンで...!」
すっかり元気になっていた僕たち。
仲間って大切だな...
山村や幸佳の存在を改めて確認する僕なのであった。
続く...?
はじめまして、ルルンです。
クスッと笑える作品を作りたくて文章を書きはじめました。
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