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#56

あれから一年が経つ。


 二人とも毎日同じ事を繰り返している。

 そして遂に今年の収穫の日だ


 小麦を今日まで誠心誠意育てて来た。

 依頼は完全にゼロになりかなり戦闘勘は衰えてしまったが俺はまだ諦めていない。それはメルトも同じ考えを持っているだろう。


 「今日の収穫が終わったら依頼を受けに行こうと思う

  依頼は明日の昼過ぎからだ、今日までに収穫を終わらせよう」

 「分かった、すぐに終わらせる」



 さっさと小麦の回収をする。

 幅はそこまで広くないからまあ割とすぐには終わるだろう。そして次の小麦を育てる予定はないらしいから、遂に明日からは再び魔王討伐に本腰を入れることが出来るとなると少しだけワクワクもしてくる。

 前は勝てなかったけど次は、次こそは倒してやる。


 「俺は明日朝イチでゾーラ街に行くから一人で来てくれ先にやっておかなきゃ行かない用事があるからな」

 「そう…か…分かった

  明日は別で」


 なんか不思議な感覚だ。ほぼ同居の様な生活をしていたのに急にいなくなってしまう感覚。少し悲しいけどそれ以上にふわふわしている。



 遂に明日は久しぶりの依頼だ、畑ばっかで正直疲れてたよ…俺のいるべきはこんな所じゃない。

 それを明日証明するんだ!



 (ルド、見ていてくれ明日どんな依頼だったとしても、俺は絶対やってやる、それがめちゃくちゃ簡単でも同じ様に)



 「そう言えば用って何があるん?そんな早く行かんと行けないのか?」

 「そうだな、結構重要な問題だな」


 問題?問題?俺はその言葉がかなり引っかかる。何もしていないのに問題なんてあるはずが無い。

 聞いてみるも、「それは俺個人の問題でレイには関係無い」としか言わず特に教えてくれる事もないし、「明日昼にゾーラ街に行ったら分かる」と言っているから俺もそこまで深くは考えなかった。

 どうせ明日にはわかる事なんだって思ってそこで聞くのをやめてしまった。今思えばそこでもっとちゃんと聞けていれば何か未来が変わっていたのかも知れなかったのに…そんなのはもう遅かった。


 




 変わらず、明日は来る。

 俺が起きた時にはメルトはもういなかった。本当に朝イチでゾーラ街に用事があるとしか俺は信じて疑わなかった。


 ご飯はいつもの様に俺の分まで用意されていた。

 美味しい。



 少しのんびりしたらすぐに昼近くになった。このくらいに出ればちょうど昼にはゾーラ街に着く時間だ。

 依頼の予定だったので、剣を取り、装備を身につけ、窓で自分の身だしなみを軽くチェックして教会を後にする。



 「今日、なんか人が多いな…イベントがあんのかよ」


 ここ一年で何かあったのかと思ってしまうほどに今日のゾーラ街には人だかりができていた。

 訳がわからないまま俺は大勢の中の一人に紛れ、何が起きるのかをただ待っていた。

 


 それにしても遅い、「面白いものが見れる」と言っていたから楽しみできたのに何か始まるのでもなく、さらにはメルトを見てすらもない。


 「おお!ちゃんと約束の時間通り来てくれたんだな嬉しいぞ!」

 「そりゃ言われたから当たり前……」


 俺は後ろからかけられた声に反応をすると、見えた景色は想像とはかけ離れている光景だった。

 メルトが男4人に取り押さえられている。メルトも反抗する様子もない。俺は猛烈に焦っている。

 

 助けるべきなのか、それともメルトがどうするのかを待つのか、俺にはその選択が取れずただただこの状況を見ているだけだった。


 「いいか?最後に一つ聞いてくれ、俺達の想いはお前に託したぞ」

 「それはどう言う…」


 「これ以上話すな!!ここで殺してやろうか」

 「悪い悪い、もう何も話さないからちょいと時間をくれよ」


 そう言って、俺に顔を合わせることなく、進んでいってしまった。

 俺はその時まで頭が真っ白で何が何だか分からない状況だった。

 そんな時俺を一気に現実に戻す声が聞こえた。



 「これより革命軍総大将のメルトの斬首刑を始める」




 「え──────」


 俺はその言葉だけは何よりも鮮明に聞こえた。また、目の前から誰かが失われてしまう事の恐怖からなのだろうか。

 それとも自分には何もできなかったと言う念からなのか、何も分からなかったが俺は沢山いる人を掻き分け斬首刑が行われる所の最前列まで来て完全に状況を把握した。


 それでも、最後にまだ聞きたい事があった。

 それはメルトのやり残した事だ。

 俺は処刑を見る人達を押し除け、メルトの目の前、最前列まで来た。

 息を荒げて大きな声でメルトに話しかける。


 「メルトさん、まだやり残した事があるって……」

 「ああそのことか、

  それは、、     

  今さっき終わったよ」


 俺は男に取り押さえながらもその言葉だけはしっかり耳に焼き付ける。

 そして俺の視界は真っ赤に染まってそこからの記憶は曖昧でただ無力感だけは残っている。



                 革命編ー完ー

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