#51
メルト側は人数が大幅に減っていたその数30人にまで、半数以上の前線の冒険者は亡くなっていた。
少しずつやって来るモンスターにやられているとしても流石にペースが早過ぎる。
メルト達が援護をしていると言うのにも関わらずにだ。
裏切り者か?
その嫌な予感は的中した。
「おい、お前今人を殺しただろ……ぐあっ」
今1人の男が何やら不穏な事を言った。
人を殺した奴がいる。
誰だ?
残念ながらメルトには見えていなかった、声しか聞こえていなかった。音を極限に減らした暗殺、手慣れている。かなりの強者だな、カリーしか考えられないが、他に実力を隠している人もいるかもしれん。
「全員間隔を空けろ!まずは裏切り者から探す」
何か動きがあったら分かるように全員の間隔をあける。
すると勿論誰も動かなくなる。
メルトはアシェリーとゼロで何か話し
「悪かった、みんなモンスターを倒すのに集中してくれ」
(ごめん後1人殺される事になるけど許してくれ…)
メルトは裏切り者をゼロとアシェリーと連携して探す為バラバラになった。
裏切り者は動いた。
その標的はゼロだった。
「わわ!危ないよ、あなただったのね裏切り者は、カリー」
「くそっ、お前反射神経良くなってんのかよ」
ゼロを殺し損ねて、危険を察知しバックステップで後ろに下がり権を抜く。
「殺し損ねた、ならしっかりと殺してやらねえとなあ!」
「アシェリー!結界を張って」
咄嗟にアシェリーに結界の指示を送る。
これは対カリーのための結界、そしてモンスターの侵入の阻害、これによりカリーが投げる事が出来なくなる。
「結界か、俺の対策も覚えてやがんのか、ゼロ」
「あったりまえよ」
「ゼロと共通の友人を殺されて魔族に恨みがあると言ったなそれは嘘か」
メルトは今まで誰にも見せた事ない怒りを全面に出して、少しずつ前に進み、カリーと対峙する。
裏切りはやはりメルトにとって何よりも許せない事であり、大切な仲間も殺されている。
怒らない方がおかしい。
「関係ねえよ、大人しくゼロさえ殺させてくれりゃ他はどうでも良い」
「黙れ、ここにいる俺と同じ心を持った人間は皆仲間だ家族だお前にそれを引き裂く事は出来ない!消去」
テソーラとユフスに食らわせた魔力を無くす技だ。
確実に当たった。
が、、、何故か魔力は無くなっていない。
「俺がお前より格下な訳が無いだろ?その魔術格下殺しなだけで格上には無力なの知ってるぜ笑えるなあ」
「それだけな奴だと思ってるお前の脳みその方がよっぽどわらえる」
メルトも素早く抜刀、轟音と共に激しく火花を散らす。
他の冒険者が入る隙など無いくらいに2人の次元は違った。
「アシェリー!結界を広くしろ、他の冒険者が危ねえ」
こんな時でも仲間の心配、流石は魔王を倒すため為にいる人間だ。
必要な事は優先順位を無視して遂行する。しかし、その指示のせいで動きに若干の淀みが生まれた。
「おいおい、他に構う余裕あんのかよ
ただの剣と魔剣ではいくらお前に剣の腕があっても勝てないの、分かってるよなあ!」
カリーは魔剣士であり、自分で召喚魔法で魔剣を生成できる。そして自身は属性を沢山持っている為攻撃の幅も広い。
しかし、最大の脅威である攻撃はアシェリーの結界が防いでいる。
「強化回復」
メルトの動きがゼロの魔法で一気に良くなった。
魔剣との差を一気に埋める。
「カリー、疲れてきてるんじゃないのか」
メルトがカリーを弾き飛ばし自分の1番得意な中距離戦に持ち込む事に成功、そして援護の一切ないカリーは確実に消耗している。
「何言ってんだ、これからが勝負で1番面白くなるとこじゃねえかよ
そんで俺が結界の中じゃ技が使えないって?
ゼロ!成長してんのはお前だけじゃねえんだよ!
電撃領域」
結界の中に雷の威力の電撃が走る。
「一度触れたら即死だ、結界を解除しろ」
「アシェリー結界を解除してくれ」
これで互いに1番得意な戦場となった。
「アイスグランド」
アシェリーの氷魔法でカリーの不意をついたがしっかりと避けられてしまうが体勢を崩す事はできた。
「何っ!!」
「捕まえたっ」
カリー後ろから何か力を感じたと思ったら姿を消していたゼロががっちりと掴んでいた。
ゼロに掴まれ体制を崩し、大きな隙ができる、そしてメルトはゆっくりとカリーの元に近づいていく。
そこでカリーは完全に勝負を諦め、剣を置いた。
「どうして裏切った?」
「裏切った?いた俺はお前達の仲間になると言った?」
アシェリーが再び結界を張り、モンスターの侵入を防ぐ。
そして、メルトはカリーを剣で刺し、ゼロに回復をさせる拷問をする。
「痛えな、殺したいなら早く殺せよだるいな」
「どうして俺の邪魔をする、魔王に恨みがあるのは真実なのに」
さっきより数段と怖い表情をメルトは見せる。
それに一切怯えず、変わらず強気な態度で大切な事を言おうとしない。
「いや、魔王は俺の恩人だ、俺の下半身も治してくれたからな
それよりよお前ら今ならまだ引き返せる、魔王討伐なんて無謀な事を辞めておけ、これは脅しじゃねえ警告だ
お前の力じゃ魔王には届かねえ、俺達ですら足元にも及ばなかったのにどうしてまだ諦めの悪い馬鹿がいるんだ!」
急にカリーの声が強くなった。
カリーの言葉は無視し、付け入る隙があると感じたメルトはすかさず声をかける。
「本当はお前も魔族を恨んでいるんだろ、ならどうしてゼロを殺そうとした?仲間だったじゃないか
それに電撃魔法で誰も殺さなかったのはお前が操作したからだろ」
「よく分かってんじゃねえか、そうだよ
そうだな俺も魔族には恨みはあった、でも勝てねえ圧倒的な力の差がある。世界は今ままで良かったんだ、
お前らだけじゃ魔王には勝てねえと思って俺も安心してた、だが演説の時にゼロがいるのが分かって、これじゃ本当に魔王を倒しちまうと思ったから、俺が諦めさせようとした」
殺すはやりすぎだが、どうにかして諦めさせようとしていたのか。
「俺も魔族を恨んでいる!
それでも世界は今のままで平和なんだこれ以上は破滅しかない、だから人間が王になるなんて事は諦めてくれ」
「関係ない、それよりもカリーお前は今死ぬか俺の仲間になるか選べ
お前はまだ力になる、裏切りは許さないがその罪を償うと言うなら助けてやる。
……まあどうせ、魔王を裏切ったのなら魔王に殺されるだろうがな」
メルトは冷酷な言葉をカリーに浴びせる。
しかし選択肢は一つしか無かった、すぐにメルトに殺されるか、人類の為に全力を尽くし魔王に殺されるか。
「くそ、あん時にお前みたいな覚悟さえあれば俺も勇者になれてたのかもな、今となっちゃ悪役じゃねえか…よろしく頼むこれからは俺も魔王討伐の為に力を貸してやる。平和な世界を見る資格は俺には無いが、
それでもやらせてくれ俺の仲間の為にもな
俺はもう裏切らねえ、だからお前も他の奴らもどうか最後までもう一度俺を信じてくれ」




