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「いえ、助けて頂いたのは、ケガとかじゃないんですけど……」


恵は、先日の事を思い出していた。

あの日、彼らのお母さんと話せて良かったと。

恵の中でのわだかまりが無く、明さんに向き合えたのだから。


あの日が無かったら、夜景での返事は出来なかった。

そして、今日のお墓参りやこうやって明さんと話しは出来なかった。


(私、我慢していたのか……)


「あの日、お義母さんに会って気持ちが落ち着いたと言いますか……ステキなお義母さんだと、再認識したと言いますか……」

『なんか……嬉しいような、嫉妬してしまうような……』


恵は、明さんの発言にクスクス笑ってしまった。


「とりあえず報告でした。出掛けたの言ってませんでしたし」

『う、うん。楽しかったのなら良かった』


恵は、自分から言い出していながら半分も報告出来てはいなかったが、あの日があったから一歩前に進めたのは事実だった。


お義母さんが、恵の気持ちに寄り添ってくれて、この気持ちに気付かせてくれた。


(本当に何て言ったらいいのか……)


仕事も辞めなくていい、同居もしなくていい、2人で楽しめなんてご両親の理解がステキすぎて怖い。


(頑張ろう! 今を、楽しもう……)




『あのさ、明日なんだけど……』


明日は、日曜日で予定は入れてはいない。もちろん明さんと会う約束もしてはいない。


『恵さんの予定がないなら会いたいと思って……いや、急だしご両親にも挨拶まだだから……』

「私も会いたいです」


恵は、明さんの言葉をさえぎって答えた。

今日だって、本当はもっと話したかった。


そして、もっと触れてほしいとも思った。

まだ恥ずかしくて、どうしたらいいか悩むけど。


『ホントに? じゃ出掛けようか。どこか行きたい所とか無い? 』

「ん~……特には……」

『やっぱり、今日……泊まっても良かったのか~』

「えっ、やっ。それは、そのうちで……」

『ごめん、ごめん大丈夫。じゃあ、会ってから決めようか。10時に迎えに行くよ』

「はい。待ってます」

『ご両親に挨拶してないのに、マズイかな……』

「えっ。そこ気にします? 今さらだと思いますけど~」

『いや、友達だった時とは違うから……』


恵は明さんの慌てようにクスクス笑ってしまった。


『……申し訳ないけど、ご両親にはきちんと改めてお伺いするよ。明日も会ってしまうだろうけど~』

「私、少し歩いて待ってても良いですけど? さっきの公園とかでも」

『いや、他の人と出掛けたと思われるのもイヤだから。家まで行くよ』


恵は、これから先この誠実さに負けないようにしようと思った。明さんが心から安らげて、日々を楽しく過ごせるように心掛けようと。明さんの嫌がること誤解をされることは極力しないと。


「じゃあ、家で待ってますね」

『あ……そうしてほしい。じゃあ、明日の為に今日は寝ようか』

「ですね。では、明日……おやすみなさい」



恵は、スマホの画面をパジャマの袖でフキフキしながら、明日の服を悩んでいた。


「何着ていこうかな……」


ピローンと通知音がなる


画面を見ると明さんからのメッセージだった。


【今日はありがとう。いろいろ話が出来て良かった。また明日、楽しみにしてる。おやすみ】


恵もすぐにメッセージを入力し送信した。


【こちらこそ、たくさん聞いてくださりありがとうございました。明日楽しみです。おやすみなさい】


スマホを胸に暖かい気持ちになった。

土日と会えるなんて思ってもいなかった。


(付き合ってるって……こういう事~)



そして棚に置いてある健くんの鍔を持ち、キズを指でなぞった。


もう、片付けないと健くんにも明さんに悪い気がした。

恵は鍔を持ちながら、窓際で星を見上げた。



過去に行けて、彼らの未来を変えられた。

二人とも充実していて想い合って、羨ましくて、憎らしくて潰されそうだった。


こっちに戻ってきて明さんから動画を見せてもらえて、彼の為に私が犠牲になっても、もっと何か出来たのではないかと悩んだ。


彼への罪悪感を明さんやお義母さんに知られ、怖かったけど家族の一員として迎えて受け入れて頂けるなんて信じられなくて、嬉しかった。




恵は過去に行く前より、彼への後悔、罪悪感は少なくなった気がした。


(健くん……お兄さんに逢わせてくれてありがとう。江戸先生が引っ越したことも伝えてくれてありがとう。動画も、ありがとう。あなたに出会えて良かった)


恵は、彼のお見舞いに行ってから歯車が違ったように感じた。

明さんやご両親に会い。お葬式で連絡を再開した友人から先生の事を聞き。



何より【過去に行きたい】と強く願った。



恵自身の人生の中で、彼とは間に合わなかったけど、過去で見たあの2人の人生はきっと幸せになると思った。


(あっちの恵も頑張ってるのかな……まだまだ先の話だけど私は、明さんと幸せになります。あなたも向こうで幸せをつかんでね)



手にしていた彼の鍔を、高校の試合用の手拭いで包んだ。

そして、そのまま押し入れのケースへとしまった。



お花もお水も明日からは交換はしない。



ベッドに何着もの服を出し、姿見の鏡の前で明日の服を合わせている恵は幸せそうだ。







長々と読んで頂き、ありがとうございました。


【訪問者:加藤恵】は終わりとなります。



有名な作家さんが多い、数ある作品の中から、私の処女作を最後まで読んで頂きありがとうございました。

テンプレに反したお話に、最後までお付き合い頂きまして感謝しています。

恋愛部分が少なく、多々消化不慮があるかもしれません。すみません。

スタナい文章でご迷惑をおかけしたと思いますが、どうしても書きたいシナリオだったので続けさせていただきました。


第何部とか、第何章とかの設定が無く読みづらくてすみません。

少しずつ勉強をしていきたいと思います。


ブックマーク、いいね、ポイントなど評価頂き心より感謝しております。とても励みになり【訪問者:加藤恵】を最後まで書くことが出来ました。


ありがとうございました。

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