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(また行きたいな……)



恵は、彼らのお母さんがお茶に誘ってくれて、自分の気持ちに向き合わせてくれて感謝していた。


色あせない思い出と、室内のライトを反射してキラキラしているペンギンを眺め一匹をチョンと突っついた。



期間限定のお友達として、始めた時は何を話して良いのかわからなかった。何か共通の話題でもと、必死で探したりもした。


いつもニコニコとしている優しい明さん。機嫌が悪い時は一度も見ていない。

黒髪で普通の男性の髪型。私より少し背が高いくらいで、確実に三浦よりは低いし、たぶん健くんより小さいと思う。要は恵が高いヒールの靴を履いたら同じくらいになりそうな身長差。


幸いな事に、恵は高いヒールの靴は持っていないし、履いたら歩けず確実に転ぶ事をお約束できる。


けど隣に並んで少し顔を上げると、すぐに声が届く感じの距離が居心地がいい事が最近わかった。理想の男性を聞かれたら、自分の身長プラス10センチ以内という項目も追加したいと思う。


逆に身長が高い人は苦手だと思う。並んで歩いていて、頬に肩がぶつかる身長差。15センチ以上は無理そうだ。それと齋藤先生をイメージしてしまって怖い。


上からの圧からは耐えられない自信がある。


明さんは偶然にも、距離が近い方で良かった。心からそう思う。


他愛もない話から気が付いたのだが、年齢が5つも違うと観ているテレビ番組や芸能人の認識も違っていた。


主に見ていた教育テレビのキャラクターの認識や、学生時代に流行ったモノも違っていた。まぁ、健くんがいたから軽くなら知っているみたいだが、5年は侮れないと思った。


飲み物はコーヒーをよく飲んでいたが、実は甘いものもいける口だったとも知った。パンよりご飯派で、鶏肉よりも豚肉が好きらしい。


お酒もそこそこ呑めるらしいし、私の前ではタバコを吸わない人だとも気付いている。病院でも遊びに行っても1度も吸っているのを見たことが無い。けど匂いだけは残っているから、吸う人だと言うことは気付いてはいるけど、確認はしてはいない。


意外と器用な人だとも思う。設計士さんというのもあるかもしれないが、手先は器用な方だと思う。そう!指が細くて長いのを先日に気が付いた。


クライアントに会わないといけないと話しになった時、カフェのテーブルの向かい側で、軽く指を組みうつむいていた明さん。

いじけてた明さんは可愛かった。


まだ、一緒に出掛けたり電話をしたりと、こんな関係になってから、そんなに月日はたっていないが、明さんと過ごす時間は楽しくて素直にもっと一緒にいたいと思える人だった。


『明との事は? 』


頂いたガラスのペンギンをチョンと突っつき、今さらながら自覚し気付いてしまった気持ちをどうにか押し止めた。


(好きなんだ……明さんの事。そっか……)



『健のために我慢してない? 』


恵は彼らのお母さんと話して、気持ちを我慢していたのかわからなかった。


(ガマン……してる? )


健くんは初恋では無いし、彼氏とかでも無い。

過ごした時間は楽しかったし、いい人だとも思う。


あの時はお互いに、次の行動には移せなかったけど。


(カッコいい方だとも思う)


健くんだって、頭も良かったし剣道も上手だし笑わせてくれてたし……


(でも、最近まで忘れてた……)


三浦に『得意の封印な』と言われた時、無意識にもパンドラの箱にでも閉まったのではと思った。


(好きじゃなかった? それとも……裏切られたって思って嫌いになった? )


行動に移せたら、お互いの誤解は解けたのかもしれない。けど、あの時の恵は『もう……どうでも、いいや』だった。


彼らのお母さんが『タイミングが悪かった』と言っていた。本当にそれだけだったのだろうか。


(健くんも、言ってくれれば良かったのに……)


何かが変わったのか、変わらなかったのか今となっては確認は出来ないが『言わないと伝わらない』過去に戻れた時に、会った彼はそう言っていた。


(ごめんね。……健くん)


恵は罪悪感が抜けなかった。


(やっぱり健くんは、過去の人だ)


病院で再会した時、トキメキよりも懐かしさと罪悪感しか出てこなかったのが何よりの証拠だった。



(じゃあ、明さんは? )


『お兄さん枠として……』


あの時の明さん、必死だった。

あまり話さない人だと思ったのに、いろいろと話す人だった。


(お兄ちゃん枠って何? )


今さらながら思い出し笑いをしてしまった。

年上だからか積極的だし、明さんのお誘いに行動力に押されてる感じかもしれないが、決してイヤな時間ではなかった。


恵は明さんの声が聞きたかった。


(こんな日に限って出張だなんて、もうこの時間なら連絡はないかな……)


恵は、スマホの画面をぼんやり見ていた。


間もなく日付も変わる。

今日はこれ以上更新される事がない、彼とのメッセージのやり取りを読み直していた。

そして、その日はいつの間にか眠っていた。





ありがとうございました。

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