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あの日は、夏休み中のお盆にもかかわらず、明さんが設計を携わった水族館が完成したからと誘われて出掛けていった。


予想通り館内を回るのも家族連れが大勢いて、スムーズには回れなかった。イルカやラッコなど人気の動物たちを観るのは一苦労だったが『この通路はこっちからも抜けれて、スタッフさんの要望で出来たんだ』とか『ここには本当は、上まで吹き抜けの水槽を設置したかったんだけど、ガラスの耐震の関係で断念したんだ』など、裏話もしながらゆっくりと2人で見て回った。


明さんがネットで事前にイルカとアシカのショーを予約していてくれて、並ばなくても会場に入れたのは驚いた。『予約……バックヤードの方が良かったかい? そうした方が分かりやすかったかも……』なんて言われた時は全力で『ショーで大丈夫です』と答えた。


(まさか、事前に予約をしてくれているなんて……)


ショーでは必ず濡れる席よりもずっと上の方で、バシャバシャとかかる人たちを見ていて『次はあっち座ってみる? 』と聞かれて『ここが良いです』と2度目になる全力でのお断りした。


会場の真ん中の上の方で、濡れないけど動物たちはちょっと遠い席。けど、ボールに目掛けてジャンプするイルカが丁度目の高さで見れた。恵は水族館のショーにも指定席があることさえ知らなかった。あの大きなテーマパークなら納得するが。


ショーの内容は、アシカたちが4匹いて器用に鼻先にボールをチョコンと乗せ、スーと滑りながら小さなバスケットのゴールにダンクをしたり、筆を加えて絵を描いたりしていた。イルカたちも4匹いて、ジャンプや空中でのアクロバットなど息の合ったの動作がスゴかった。


途中でショーとエサやり体験する時間があり、前の方に座っていた女の子と男の子が飼育員さんの指示のもと右手を勢い良く上げた。プールで待機していたイルカたちが一斉に泳ぎだし、次々にジャンプをしてみてた。


会場内は子供たちの可愛さとイルカたちのショーに拍手が沸き起こった。

何度かジャンプをし終えたイルカたちが整列をすると、飼育員さんが口の中に小魚をポイッと投げた。それを習って子供たちも恐る恐る投げていた。


「可愛い~」


恵は拍手をしていた手をそのままに、声が出てしまった。


「そ、そうだね。可愛いね……」


何故か明さんが左手で額を押さえながら同意していた。

ショーのお手伝いをしていた子供たちが、保護者の元に戻るとショーも終わりアナウンスが鳴った。


『足元に気を付けて出口に進んでください』


「さ、続きを見に行こうか」


背伸びをした明さんの合図で動き出す。

水族館のショーを観終えて、館内を歩いていると【海の中の生き物に触れてみよう!】というコーナがあった。子供たちが膝下くらいの低い水槽に手を入れてキャッキャと楽しそうに騒いでいた。


水槽の中にはウニ、ヒトデをはじめ小魚も泳いでいた。明さんがウニを手のひらにのせ『触りたい? それとも……食べたい? 』と聴いてきたので、恵はツンとだけ触って隣で観ていた男の子を目でうながした。


「はい。触ってみる? 」


明さんは、その男の子に視線を合わせると、その子の返事を待ってゆっくり手のひらに乗せてあげていた。男の子は最初嬉しそうにしていたが、ウニがモゾモゾと動いた為『ヒャー』っと悲鳴をあげて水槽にチャポンと落とした。


「今度は星のヤツ触る? 」


と男の子に話しかけ、全力で拒否され走り去っていた時は『あちゃー苦手だったか……』と手を洗いながら反省していた。


(さすがお兄ちゃん、子供の扱い慣れてる)


そうして回路の最後は館内の外エリアに繋がっていて、ペンギンゾーンに行き着いた。何種類かのペンギンがちょうどエサの時間だったらしく、ゲージの側で飼育員さんと台の側で並んでいる数人の子供たちが見えた。


「行きたい? 」


と明さんに聞かれたが、あの列に大人の恵が並ぶ勇気は無かった。


「いえいえ大人ですし……大丈夫ですょ」

「そう? やりたそうに見えたけど? 」


とニマニマされた。

恵は、両手で頬を触りペタペタと確認した。ペンギンは可愛くて好きだけど、エサをヤりたそうな顔してたのかと思うと恥ずかしかった。


一通り観た後に家族と職場の仲の良い人たちと食べるお菓子が欲しくて、混雑していたがお土産屋さんに入ってみた。

定番のクッキーやクランチ、飴など目移りして悩んでいると……


「これ可愛くないかい? 」


明さんがイルカのぬいぐるみを指で摘まんでブラブラと持っていた。黒と白のイルカのぬいぐるみは紐が付いているタイプになっていた。


「車のルームミラーの所に飾ろう」


『うん、うん。そうしよう』と1人納得していた。恵も自宅と職場用にクランチチョコを買うことに決めた。


レジに並ぶ為に移動していると、ガラスケースの所に出た。そこの中には、ガラスで出来た動物たちが所狭しと並んでいた。


「わ~キレイ」

「ん? 何? 」


と明さんも覗き込んできた。


「あぁ~ガラス細工か……細かいな」

「かわいい~」

「じゃ、何かプレゼントするよ。どれが良い? 」


ガラスケースを覗き込む恵に向かい『イルカ? 』『アシカ? 』『ジンベイザメ? 』と聞いてくる明さん。


「えっ。大丈夫ですょ。観てるだけでも……」

「今日の記念にプレゼントさせて……何がいいかな? 」


ひとしきり悩んでピンと閃いた顔が『コレなんてどう? 』と指をさしていた。恵が『なぜ? 』という顔をしたのを見て……


「さっき、エサやりに参加したそうだったから」


『決定』と言い、奥の定員さんに【イワトビペンギン2匹】と頼んでいた。


「コレをレジに見せると買えるらしい」


と何やら紙を持っていた。


「私も何か明さんにプレゼントしたいです!」


恵はガラスケースを覗き何か良いかを考えていると……


「じゃあ、これがいい」


と先ほど見せて頂いたイルカを手に持っていた。


「……えっ。あ、はい」


恵は値段の違いに戸惑ったが、そのままレジに並んだ。

恵がレジを終え明さんを探すと『こっちおいで』と手を振っていた。近づいてみると、先程のガラスのペンギンが箱の中で整列していた。


「ここから選ぶらしい。どれがいい? 」


恵も箱の中を覗き、一匹一匹見ていった。同じ様な構図でも少しずつ表情や腕の向き、トサカが違っていた。『一匹づつ選ぼう』と言われ真剣に悩む。


「これにします」

「これかな」


2人とも一匹ずつ選び、定員さんにプチプチの袋に入れてもらった。

その後車に戻り直ぐにプレゼント交換が始まった。明さんはイルカを受け取るとタグを切らずに、すぐルームミラーに取り付けていた。恵もプチプチから取り出し、手のひらにで眺めたりダッシュボードに置いて写メったりした。


夏休み中のお盆で予想通り混んでいて思うように動けなかったけど、楽しくて嬉しくてステキな思い出になった。




(また行きたいな……)




ありがとうございました。

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