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湯船で体育座りをしながら、恵は振り返っていた。


明さんと正式にお付き合いをすると宣言したのが、博物館と映画館を見に行った先週。夜景の見える丘に立ち寄ってそこで話した。で、今週。今日には両家に直接挨拶し話してくれた。


和田野家のご両親に、何て言われるか不安ではあった。先日、お義母さんとは直接お話出来たからまだ良かったが。


時期が早すぎると思われないか不安だった。


(お義母さん……泣きそうだったな)


『お泊まりしたら? 』と言われたのにも驚いたが、向こうのご両親を改めて好きになった。


(今日、お父さんゴルフで良かった……)


明さんは迎えに来てくれたお昼と、送ってくれたさっきと、母親に挨拶をしてくれた。母しか居なかった為、改めて家族には会う事になってはいるが、明さんの行動力には驚かされた。


(違いすぎて……困る……)


パジャマに着替えながらも、明さんの変わりようを思い出し赤面してしまう。


(手……繋いだり……。私を見る目が……あまい~)


恵も自覚したからか、この1週間世間が世の中が違って見えた。

会社に行くいつもの道ですら、山の針葉樹や田んぼの稲、空、雲など色がキレイでキラキラしていて、別世界に来てるかと錯覚するくらい不思議な感覚になった。


それに今日の明さんがカッコ良くて、運転中とかお墓参りとか両家に話してくれた時とか直視出来なかった。


(なんか私……ヤバくないか? )


思考をフル活動しながら『ふぅ~』とお風呂から上がり、髪をタオルでゴシゴシしながらリビングの方に歩いていた。


「お風呂いいよ~」


と声をかけたリビングには父親が帰宅していた。

何か言いたげな顔をされたが、原因は母親だろうと容易に想像できた。


「おやすみ~」


と軽く言い逃げようとした恵を、母親が呼び止めた。


「恵待って!」


(え……今? )


恵は渋々タオルを肩にかけ直すと、茶の間のテーブル側に体育座りをした。


「……お父さんに話したけど、今度いつ……いらっしゃる? 」


恵の父親は、ゴルフ接待の疲れも忘れ、自身の手帳を確認している。


「ん~聞いてみないと分かんないけど……」

「そうよね。まだ、先の話かしら? 」

「……さぁ? 」

「恵は向こうの親御さんには会ったの? 明さんは27才だっけ? 」

「うん。今日も会って、ご飯食べてきたし……」


「あ……そうね。どうしたら良いのか聞いてみてくれる? 」

「うん。……わかった」


今まで表だって恵に浮いた話が無かった為に、両親は何も言っては来なかった。

恵も22才とまだ焦る年でも無かったが、今日しっかり挨拶をされてしまえば話は別だった。

恵の両親も、恵も今後の対応に悩んでしまっていた。


(私だって驚いたくらいだし……明さん、急過ぎる……)


両親に『おやすみ』と挨拶し階段を上がりながら、恵はブツブツと呟いていた。


鏡台で髪を乾かしていると、スマホの画面が点灯した。


(あっ。もう時間……)


恵は髪を途中まで乾かし電話を取った。


「もしもし」

『もしもし、今大丈夫? 』


明さんは事前に連絡を入れてても、必ず確認してくれる。


「えぇ、大丈夫です。今日はありがとうございました。夕食も美味しかったです」

『そう~良かった。疲れたでしょ? 』

「私より、明さんの方が大変だったのでは? 」


明さんの両家での対応の方が、恵に比べて何倍も大変だったはずだった。


『いや当然の事だから。やっと親公認になれて安心した所かな。後は、早めに恵さんのご両親に挨拶したいと思ってる。今日はお義母さんだけでも、先に話せて良かった』

「母も弟も驚いていました」

『ははは、ごめん。嬉しくてね。調子にのってしまった』


明さんは嬉しそうに『俺は恵さんの特別になれて嬉しいよ』と恥ずかしくもなく、サッと言っていた。


『俺は来月の予定まで出てるから、ご両親と上手く合わせられると良いんだけど……ちなみに~』


明さんの今後1ヶ月の予定を言われた恵は……


「すみませんが~改めてメール下さい」


頭がポワポワしていて覚えられなかった。


改めて恵の両親にも、1ヶ月以内に会うという意思表示に恥ずかしくも嬉しくなった。


恵は気を取り直して……


「明さん……もう一つ良いですか? 」

『ん? どうしたの? また何か考えちゃったの? 』


(またって……)


「実は……明さんのこの前の出張の時なんですが……」

『ん? 前回の? 』


2人で映画を観る前の週、明さんはクライアントと打ち合わせの為に出張していて会えなかった。


「はい。その時、実はお義母さんと2人で会っていて……」


あの時も、いつもの突然の電話だった。『美味しい紅茶のケーキ屋さんを教えてもらったからどう? 』とのお誘いを受けて出掛けていた。


『それは聞いてないな……ごめん。せっかくの休みの日に……』

「いえ、それは大丈夫です。紅茶もケーキもご馳走になりましたし……それに……助けて頂きましたから……」

『えっ? 何かケガとかしてたの? 』



あの日、呼び出されたのは紅茶だけでは無かった。




ありがとうございました。

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