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この季節は、どこに行っても必ず金木犀の香りがする。

恵は自宅に植樹するくらい好きな花、香りだった。

オレンジの小さい花が可愛くて、しかも咲き始めから一週間くらいすると木の回りに散ってしまっていて、季節も期間も限られるこの木に魅せられていた。


そんな香りに癒されていたのは、数分前。

今、恵は健くんの百箇日のお墓参りが予定通りに無事に終わり、和田野家にお邪魔している。


リビングの向かいのソファーには、彼らのお父さんとお母さんが並んで座り、デーブルを挟み恵と明さんが座る。

そして改めて明さんが、私たち2人の事を説明をしてくれている。


(何この時間……恥ずかしい)


恵は、テーブルの下で手をギュッと握り絞めていた。


今日のお墓参りの時間が午後からだった為、お昼過ぎに明さんに自宅まで迎えに来てもらっていた。そして移動中に、この最終的な打ち合わせを済ませていた。


『これから親を乗せて、お墓参りに行く。それは前回と同じだから大丈夫だよね? 』

『……うん。平気』

『お墓参りの後、家に寄って俺たちの話を報告する』

『……うん』

『事前に母さん達には、夜ご飯も一緒にと話しているから大丈夫だと思うけど……大丈夫? 』

『……だ、大丈夫。明さんは私で大丈夫なの? 』

『さっき、恵さんのお母さんにも話したけど……俺は君と真剣にお付き合いさせて頂いていると思ってる。遊びじゃない』


恵を迎えに来た時、明さんは母親に挨拶をしてくれた。

母しか居なかったのもあり『改めてご挨拶に伺います』と。大人の対応に母親はもとい、恵まで好感度が漠上がりだった。


今までなら家のチャイムは鳴らさず、道路で待っていてくれていた。しかし、今日は到着の連絡がなくチャイムが鳴った。


誰だろうと思って母を見送ったら『め、恵!!』と呼ばれ、玄関に明さんが立っていた。


「やぁ、迎えに来たよ」

「あ、ありがとう……」


(き、聞いていない……)



そんな頼もしい明さんが、今は淡々と恵との事を彼のご両親に話をしている。ケジメの最後の締め括りとして……


「俺ら結婚を前提に付き合うことにしたので、これからも宜しくお願いします」


恵も一緒に頭を下げる。


……


……



「本当に! 良かったわ! 恵ちゃんが本当の娘になるのね!で、いつ結婚式する? 早い方がいいわよね? 」


矢継ぎ早に話す彼らのお母さんに、恵たち2人は苦笑いをするしかない。


「オイ。まだあちらにも挨拶してないのだから……」

「そうね!いつ行くの? 何着ていこうかしら~」

「まだ、明さえ行ってないのに我々が行くわけには……」


恵たちを置いて話が進む。


「結婚したらお仕事とか自由にしていいからね。同居とかも心配いらないわ」

「まだ、私らも世話になる歳でもないから、2人で自由にしてなさい」



さすがの明さんも圧倒されていた。

恵たち2人はまだ、健くん(弟)が亡くなってお祝い事をするのは躊躇っていた。たぶん両親も同じ考えたと思うと。だから報告だけでもと時間をもうけたのだが……


「楽しみだわ。さすが私の息子」


どうやら恵たちの心配はいらなかったらしい。そして恵の和田野家に嫁ぐのは決定事項らしい。


「君たちの想いはわかった。1年は喪に服すけど、気にせず過ごして大丈夫だから」

「えぇ、大丈夫よ。きっと健も喜んでいるわ」

「「よろしくお願いいたします」」


と2人の声が重なり和田野家での、早めの夕食は和やかな時間を過ごした。


食後には、明さんと2人で食器を片付けた。

恵も手伝いはしたが、お料理の殆どをお義母さんに作って頂いたので、そのお返しにと恵が言い出し、それに明さんも同行した。



恵たちが食器を片付けている間に、お義母さんがお茶を入れてくれた。

恵が持参したケーキを摘まみながら『いつから同棲する予定? 場所とかは二人の職場の間よりも、恵ちゃんの職場に近い方が良いと思うわ』とか『結婚式は和装と洋装どっちが好き? 』とか話がだいぶ飛躍していて困った。


恵と明さんの間では、全く話が出ていない話題だった。


恵が困っていると『まだ、これからだから』と明さんが話してくれたが、歓迎されているのがわかって安堵した。


19時を過ぎた頃、明さんから『そろそろ送るよ』と話が出たが……お義母さんから『明日は日曜日だし、お泊まりでもいいのよ』の発言には赤面してしまったのは仕方ない。


何も準備もしていないし『また、今度……』とお断りをしてご挨拶をしたら、突然にお義母さんに抱きつかれた。


「明を選んでくれて、ありがとう。あなたが娘になってくれる日を楽しみにしているわ」


涙目で話された姿に……


「私の方こそ、素敵なご家族に受け入れて頂いて、ありがとうございます」とお礼を伝えた。


車に乗り込み、相変わらず右手は明さんに拘束されていたが苦痛では無かった。



ありがとうございました。

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