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恵はすっかり忘れていたが、しかもその重要性もいまいち理解出来てはいないが、今日は彼の49日だったらしく、ご家族とのお墓参りもお昼の食事も済ませた。


なぜか恵のみ誘われ、急きょ迎えに来て頂きお参りやら食事やら飛び入り参加させて頂いた。


そして、ご自宅の近い彼のご両親と別れて彼のお兄さんの運転で恵の自宅に向かっている。分かりやすい建物から自宅までは軽く説明をしたが、恵はさすがに自宅までは申し訳ないので、近くの駅でもと話してみたが、やんわりと断られた。


(無駄に往復させて、申し訳なさすぎる……)


このまま何事もなく、彼のお兄さんの運転で真っ直ぐ帰宅するはずだったのだが……


「もう少し時間大丈夫? ドライブしてもいい? 」

「えっ。あ、はい……」


恵は、またどこかに向かうとも知らず助席で大人しく返事をした。この後も、予定は無かったし時刻もまだお昼過ぎと時間はある。


(どこに行くんだろう? 他にも、何かある? )


彼のご両親を下ろしているので、彼絡みでは無いとは思ったが彼のお兄さんとの接点が、共通点がない。


しかも駅で合流させて頂いてから彼のお兄さんとは、まだまともに話してもいない。


「今日はごめんね。急だったよね」

「いえ、お誘い頂き……ご馳走にまでなり……ありがとうございました」


車内では何気ない会話が……続いてはいなかった。


彼のお兄さんと2人で話すのは、通夜の日の挨拶を除けば病院で桜を散策した時以来だった。


(……どうしよう。何話したらいいか思い付かない)


車は、相変わらずどこかへ向かってはいるが、行き先よりも恵は何か共通の話題がないかを探すのに必死だ。


結局、話を振ってくれたのは彼のお兄さんだった。


「健の……弟の事……。鍔を、受け取ってくれてありがとう」

「いえ。あんなに大事にしていたキレイな鍔を、私が頂いても大丈夫だったのでしょうか? 」

「大丈夫。全く問題ないよ」

「でも……私が受け取る資格は……」


突然、恵の視界が広がった。


「えっ!海!? 」


ご両親と別れてから15分くらい走って車は松林を抜けていた。

着いたところは車で浜辺を走れる海岸で、沖にはサーフィンをする人が数人見えた。


驚いている恵をよそに……


「少し歩かないかい? 」


彼のお兄さんはイタズラが成功したみたいに笑顔で告げ、先に数台並んでいた隣に停めると、車から降り背伸びした。


(……えっ? 海? )


まだ、車内で動けない恵に『おいで』と手を振り歩きだそうとしていた。


(えっ!? 本当に歩くの? )


慌てて車から降りた恵は、足元が天然の駐車場かと思い靴に砂が入る心配があった。しかし降りてみたら、その足元は意外と固かった。

よくよく見ると、単に砂の侵食で見えていないだけで砂地ではなかった。


少し先にいる彼のお兄さんの足元も、遊歩道の様になっていた。人が散歩が出きるくらいの幅に舗装されていて、靴に砂が入る心配は無い道だった。


(……誰が舗装したの? )


右を見ると、ここが少し高いらしく松林が奥まで生い茂ってはいるが、この先に何があるのかまでは見えない。ただ、所々にお菓子や花火、空き缶などが散乱しているのが見えた。


けれど反対側、数メートル波の方に近づけば確実に足を捕られる砂が広がっている。


彼のお兄さんは、海を見ながら恵が歩いてくるのを待っていた。

恵が小走りで駆け寄ると、彼のお兄さんは何も言わず遊歩道らしき道を奥へと歩き出した。


恵も一定の距離を保ち歩く。


波打ち際の方では、小さい子供たちの楽しそうな声が聞こえる。

その子どもたちは、自分たちの身長ほどある細い木を両手に持ち、波に消されないように線を描いていた。


容赦なく消していく波に負けじと、走り回る姿が微笑ましかった。


天気が良く、夏の始まりを感じられるには丁度よい気温だった。今日にでも梅雨明けの発表がされてもいいくらいに晴れていた。


時折吹く海風が、体温を下げるに丁度良く感じる。


恵は風になびく髪の毛を押さえるのを諦め、彼のお兄さんの少し後を歩く。

二人ともこれといって何も話さず、そのまましばらく歩いていた。




ありがとうございました。

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