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お墓参りはあっという間に、無事に終わった。
先ほど来た同じ道を、今度は4人で歩いている。
恵は初めて入るお寺に圧倒されたが、無事に彼へお線香をたむける事が出来て安心していた。
車に戻り、彼のお母さんから……
「恵ちゃん、このままお昼でも一緒にどう? 」
時刻は、お昼少し前だった。
「あっ。はい、ご一緒させて頂いても大丈夫でしょうか? 」
恵も予定は無かったが、このまま一緒でも迷惑にならないのか心配だった。ただでさえ飛び入りの様に付いてきてしまっているから、余計に。
「この近くに美味しいお蕎麦屋さんがあるの。明、場所わかるわよね? 勝手に決めちゃったけど恵ちゃんは、お蕎麦大丈夫かしら? 」
「はい。食べられます」
決定とばかりに彼のお兄さんが運転する車が走り出す。
車内の中では、久しぶり行くというお蕎麦屋さんの話だった。
彼のお母さんがメニューのお蕎麦について話が止まらない。
(お蕎麦か……最近食べてなかったかも……)
最終的に彼のお母さんは『帰りに蕎麦菓子を買って帰る』と決めていた。
お寺から5分も走らず、広い駐車場に入った。
そこは、お寺の本堂と同じくらいの大きな茅葺き屋根のお蕎麦屋さんだった。
祝日のお昼前でも駐車場は半分埋っていた。
4人で店内に入る。
最後に入った恵が入口の扉を閉める。
(おっ、重たい……)
何とか頑張って閉めようとすると、急に扉が軽くなり恵は顔を上げた。恵の手の少し上に彼のお兄さんの手があった。
「あ、ありがとうございます」
彼のお兄さんは『ぃえ』と一言いい、定員さんを待つご両親に続いた。その近くに恵も並ぶ。
入口の両開きの引戸は木枠で重く、照明はあったが店内は薄暗かった。が、天井には立派な梁がいくつも組み込まれて高く、足元は見える限りの範囲が土間になっていて、靴を履いたのままのスタイルの店内は涼しかった。
恵は定員さんを待つ間に店内をグルッと見渡す。
入口から左側に目を向ければ、奥にイス席が数席見えて、そのまま右側に視線を動かす。正面の厨房へ続いているだろう暖簾を、さらに右側に移せばカウンターが6席。その右側にお手洗いに行ける通路があって、右側の最後に小上がりになっている畳の席が8卓と分かれていた。イス席には、すでに数名のお客さんがお蕎麦を食べていた。
暖簾の奥から『いらっしゃいませ』と近付いてきた定員さんに、彼のお父さんが【4名で】と話している。その店員さんがメニュー表と袋入りのおしぼりを持って『こちらに』と手を向けている。
恵たちは右側の小上がりの席に案内された。
所定の位置で靴を脱ぎ、畳を数歩あるくと掘りごたつ風のテーブルになっていた。先に進んでいた彼のお父さんとお兄さんがテーブルの奥に歩き。彼のお母さんに押される形で歩いていた恵はテーブルの手前側、お二人の向かいに座った。
彼のお母さんは、4人分のおしぼりを受け取ると直ぐに、無条件で天ざるを4つ頼んでいた。そのままメニュー表は1度も開かずお返しした。
(あれだけ語られたら、天ざる一択なのは間違いないかな)
恵は、おしぼりで手を拭きながらウンウンと納得しハタと我に返った。
(……はっ。……そば……)
彼のお母さんとは、何度か食事をご一緒した事はある。しかし4人は初めてで、すすらないと食べれないお蕎麦に今更ながらやらかしたと思った。
結果的にやはり残念ながら熱々の天ぷらのサクサク感も、お蕎麦の味にも集中出来ていなかった。
蕎麦湯と蕎麦菓子を頂きながら……
(また来よう……)
とリベンジを誓う。
食事後、車に乗り込み……
「ここはいつ来ても間違いないね。美味かったな」
「久しぶりだったから余計にね」
彼のご家族との食事会をなんとか乗りきり、彼の家の前についた。
すぐご両親が降りて、彼のお母さんが恵の乗っていた助席まで来る。恵がシートベルトを外し降りようとすると、彼のお兄さんが窓を開けてくれて……
「恵ちゃん。今日は、ありがとね。また遊びにいらっしゃいね」
「はい。こちらこそ、ご馳走さまでした」
「明、きちんとご自宅までお送りするのよ」
彼のお母さんは、蕎麦菓子を胸に抱えたまま『またね』と手を振っている。窓越しに恵も手を上げてはいるが、振りはせず頭をペコペコと上下に動かした。
食事後、蕎麦屋からご自宅の近い和田野家に一度寄り、ご両親を先に下ろす形になった。なのでこの先は、彼のお兄さんのみに送ってもらう事になってしまった。
しかも、何故だか恵の家まで。
ありがとうございました。




