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面会時間が14時からで、目的の病室には彼のお母さんがすでにいるらしい。


駐車場から正面玄関を通過し、建物沿いに少し歩くと【時間外出入口】と書かれている案内が見えた。

夜間と休日はこの簡素な入口からしか入れないらしい。


扉から中に入ると、カウンター越しに初老の男性の姿が二人見えた。

三浦は慣れたやり取りで受付のおじさんと話をしている。話しながらもカウンターに置かれている紙とペンを持つと何かを書いていた。


恵は待っている間、置かれている紙に目を向けると、その用紙には【休日面会許可申請書】と書かれていた。病室の番号と患者名、面会者名(人数)、面会時間と記入する欄があった。


三浦はその手続きを2人分してくれた。


その後カウンターで対応していた人と別のおじさんから、赤い紐がついたプレートを2つ渡されていた。

三浦はお礼をした後、恵に振り替えり隣に並ぶと、なんてこと無くその1つを首にかけてきた。


(……なっ)


恵は、幼稚園の運動会にメダルを授与されるように視線を少し下げてしまった。


(えっ?普通に手渡しで良くないか? )


と思った時には遅かった。


(はっ。そうだ三浦は、こういうヤツだった!)


三浦は顔は整っている方だったが、恵にはその甘過ぎる顔はお腹いっぱいだった。

長身で細身な三浦は、何かと話してくる時に顔を覗き込むかのように来るクセがあった。正面で話している時は気にならないが、隣に並んで歩く時の、その距離感がおかしい。

恵だって身長は160ちょいと女子の部内では一番背が高かった。わざわざ覗かなくても声は聴こえているはずで……三浦にジト目を向けただけで文句はグッと我慢した。三浦のクセなだけで、何も意図は無いはずだから。


「あっ……ありがと……」


高校の時もこの三浦の距離感で、勘違いされた事を思い出す。

クラスは違かったので被害はそれ程無かったが、部活で動いている時この距離感で幾度と無く硬直した。他校や体育館施設を利用する時にも、その距離感や態度は変わらなかった。


他の部員には身長差から体勢が辛いらしく、覗き込むような行為はしていなかった。だから余計に勘違いされていた。

まったく本人に悪意が無いからたちが悪い。3年間で幾度となく彼氏と間違えられたのにも困った。自校はもとより他校の友人にまで間違えられた。


三浦は、私には釣り合わないキレイな顔立ちで、間違われる度に『部長が、変なリアクションするのか悪い』とケタケタ笑っていたが、恵にはまったく迷惑な話だった。


(この美形……ワザとやってるしムカつくな……)


ニマニマとする三浦を無視して、首にかけられたプレートを手に取る。プレートの中の紙には、病院名の印と赤字で日付と入室時間が書いてあった。


三浦は、自らも首にかけると所定の位置で外靴を脱いだ。そしてあらかじめ用意されている病院のスリッパへ履き替えている。恵も遅れず習うように履き替えた。その後、手の消毒を終えると入室までの行程が終わったらしい。


(さすが県立がんセンター……)


なんて感心しながらも、三浦の後に付いていく恵は気分が重かった。


休日用の入り口から短い廊下を抜けると、普段なら賑やかであろう受付前に出た。この広い総合待合室は吹き抜けになっていて、2階に上がるためのエスカレーターが見えるが止まっている。


会計などの案内が書かれている長広い受付のカウンターにも防犯のシャッターが降りていた。

その近くの壁には【総合案内】と書かれている施設の地図には、フロア毎にプレートが設置されており、各科ごとの医師の名前や施設基準と細かく書かれているようだが、恵の位置からは確認は厳しかった。


ガラス張りの玄関から先ほどのバス停やベンチが見通せて、最低限の灯りしか付いていなかったが日差しが差し込み明るい。

入口側の総合受付にも基礎正しく設置されているソファーにも、誰もいなかった。


三浦は見向きもせず通過する。


恵は、駐車場の広さや待合室の大きさ売店や食堂、自動販売機が並んでいる規模を見て、病院の大きさを実感し嫌でも肩に力が入る。


その少し奥に進むと、壁や天井に設置してある病棟の案内が目に入った。そこから無数の矢印が延びていて、三浦は確認もせず西病棟と書かれている方へ歩いていく。


静かな院内に三浦と恵だけのスリッパの音がパタパタと響いていた。そして、エレベーター乗り場前で立ち止まる。


三浦が上に示すボタン押し、さほど時間もかからず3台あるうちのランプが1つ点滅した。ゆるやかに機械音が近づきピンポーンと軽やかに到着した事を告げた。



ありがとうございました。


次でストックが終わります。

宜しくお願いします。

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