表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/67

37 マスターとリューズ 2



2人は大聖堂へと戻り先程の2人の話になる。


そう、あの青年が来たのはついこの前の話……

マスターとリューズは懐かしそうに思い出していた。


「え? 恵とその青年は知り合いでしたか!? 」

「先程の本の内容から、先日の青年と知り合いのようですね。お互いがお互いに思いやり、二人ともここにたどり着く強い意志を、そして徳をきちんと積んでいたからこそ、過去へ行けたのでしょう」

「大きな徳ではなく、小さくてもたくさんの徳が大事なのでしょうか?」

「そうですね。徳の大きさよりも、質の方が大事なのではないでしょうか? 人間の世界では楽しいだけでなく、痛みも苦しみもありますから。それとどう向き合い、乗り越えるのかが重要になっているのではないでしょうか……」


マスターは続けて。


「単に毎日ありがとうと呪文のように言うのではなく。一日に一人にでも、誰かに【ありがとう】と感謝される行動こそが大事なんだと思います」


リューズは難しい顔をしながらマスターの話を理解しようと必死に聞いていた。


「いつも話しますが、人生には分岐点がいくつもあります。そのうちの一つの分岐点で間違えたとしても、それを修正する分岐点がいくつも出てくるでしょう。それに気がつくのか、何度も気がつかずにズレてしまうのか……その気が付くための日々の準備は必要になると思います」

「日々の準備ですか……」

「はい。次にくる修正する為の分岐点に、気が付くのが重要ですからね。タイミングが合えばスムーズに進みますが、違うタイミングで動いたとしても違和感が出ると思います。そこに気が付くのか気が付かないのか難しいですね」

「マスターもう一つよろしいですか? 」

「ええ、構いません」

「ありがとうございます。えっと、むこうの本ですが、先日の青年のときに来た時よりも減ってると思いまして……」

「ああ……そうですね」


マスターとリューズは大量にあったはずの本を思い出していた。


「先程の時代の第七惑星では、突然発生したウイルスによって亡くなられた方がたくさんいたのです。そう、あそこに置いてある本は、現在進行形で書き進められている日記のようなもの。一人一冊の本があり同じものは一つとしてない。

先日の青年のように、最初の本の持ち主が亡くなると本はそれ以上、書きたすことがなくなります。彼の場合は、命あるときに来てくれて新たな本が増えました。ので、青年はそちらの人生が始まりましたが、基本的に主人公が無くなった本は、それ以上には話は書き出されることはないので、自動的に地下へと移動されます。前回の時より少なくなったのは、一日の人口の変動が大きいので、数日経っただけで、目で見ても本の減りが実感してしまいますね」

「ウイルスですか……だいぶ人口の変動があったのですね……」


コクりと頷きマスターが続けた。


「人生にはいつ何が起こるか、誰にもわからない。分からないからといって過度に恐れたり、好き勝手にしてはいいことにはならない」


リューズが静かにコクコク頷いた。


「そんな世の中でも、一定の人数の方々に一所懸命な人たちがいる。どうしようもないことに投げやりになったり、腐ったりしない人たちが、そんな頑張っている方々が過去にとらわれて報われないなんて悲しいでしょう」

「そうですね」

「我々の力でも勝手に未来を変えることは出来ない。それなら過去に対しての思いだけでも、とらわれずに前を向いてくれるのなら……過去は無理して忘れなくてもいい、辛かったことも思い出して泣いていい……そのとき頑張った自分を褒めてあげていい。そんな過去への後悔の想いだけでも軽くなるのなら時空と時を任された我々ができる素敵なプレゼントにならないかい? 」

「そうですね。マスターとともにサポート頑張ります」


二人は次に、どの惑星のどの時代に転移門が現れるのか、その合図を示すたくさんの魔法石がある大聖堂で、その時を待っていた。





****




ボッ……



魔法石のランプが光る。


視界が歪みマスターはどっしりと小さな机の前の椅子に腰掛ける。


コン、コン、コン……


静まる空間に乾いた音が響く……


ギィ……ギィギィー……


静かに扉が開きそこに女性が立っていた。


「すみません。失礼します……」


とボソボソと不安げな彼女に、マスターは……


「そのまま中に、お入り~」


と声をかけ中へ招き入れる。


彼女も本が無事に光り、懐中時計と日付けが記載してある紙を持ち『あなたが戻りたいと願う日付けだよ。気をつけて、行っておいで……』と声をかける。


それと同時に消え、転移が成功したのを見計らってマスターは元の姿に戻り一つ息を吐いた。


毎回の事ながら『よかった』と、マスターは心から安心した。


この本に触れた人は、今までの人生を本が審査する仕組みになっていて、マスターが個人的に過去に戻してあげたくても、本が正確な判断をしなければ、マスターがその人の本当に大事な分岐点がいつの時点の、どこに戻すかまでは判断できない。


そして一度転移させてしまうと本人が『良かった』と納得するまで帰れない。分岐点に転移している意味、価値がなくなるからだ。


過去で何時間経っても、こちらの時間は数分しか進まないので問題無いのだが、マスターはこの先新たに本が増えるか、リューズが帰って来るのを待つしかない。空間を転移させむこうの時間の微調整はリューズにサポートを任せたら、マスターは何もできない。


古の本を見つめ毎回数分だと思っていてもなかなか慣れなかった。

本を眺めながら先代のマスターを思い出していた。




□□□□




この本は空間軸の管理を任された時、先代のマスターから譲り受けたものだった。

この本は、触れた人の【魂=格】に蓄積されている【層:フィルター】に反応するようにできている。

フィルターとは、その人が持つ独特の色であり、放つ光の色の濃さからその人物を形成している。


誕生した時の格は、キレイな光を放ち色はついていない。一度でも追加されたフィルターを剥がす事は出来ない。

何故ならその一枚一枚のフィルターは、その人の経験値として蓄積されているから。なので魂と言われる格に、包まれているフィルターの色が透明に近いほど良いとされる。数々の色で黒に近い人ほど、あまりよろしくはない。


一枚のフィルターが増えれば、魂に刻まれた経験として、その人が放つ色として、その色合いが変化をして行く。


だからこそ、その人の心の色メガネによって見え方や感じ方、考え方もそれぞれ違ってくる。


例えば赤(感情、情熱、愛)、青(冷静、変化)、緑(若さ、癒し)のように増えていくと、光の三原則のように作用が起き、透明のままで特定の色にはならない。


いつ何色のフィルターが増えていくのか、今は自分は何色なのか、普通の人には確認できない。


自分で最終的な確認が出来るのは、肉体を離れ裁かれる時。

次に、生まれ変わる時の評価にも関係があるという。


先代から受け継いだ古の本は、まず第一にその色から人格を審査し、層の色などから分岐点を判断し、過去に戻すことが相応しい人物なのかを、最終決断を下すと言う。


この本を生み出すきっかけは……


【日々毎日頑張っている人が報われないなんて悲しい。強い意志があり過去に戻れるだけの価値がある人のなら、変わらない過去のその後悔の想いだけでも軽くなるのなら、我々が手助けしてもいいと思う】


マスターは、先代から譲り受けた思いにはせながら、今日も静かにその時を待つ。





****




どんなに徳を積んでも、どんなに辛い過去があっても、戻りたい……やり直したいという強い意思と行動をしなければ、何も現状は変わりはしない。


起きてしまった過去は変えられないが、その過去と共に向き合い成長して行く。


無理に忘れたりしなくてもいい、辛かった事も悲しかった事もその時の気持ちを慰めていい。


少し時間がたてば、ゆっくり考える事もまた腹立たしくなる事も、今まで見えていなかった事も思い出すたびに変わるから。


過去への想いは変えられる。


過去へ捕らわれ続けているより、日々前を向きできる範囲で生きている現在お楽しんでほしいと切に願います。


そして【必要な事】や【必要な人】とは人生の中で何度も何度も巡り会うような感じがあります。その巡り合わせが、次に来た時に己が成長していて、正しい選択ができれば素敵ですよね。


あなたには戻りたい過去がありますか?

過去に戻るための資格、価値はありますか?


私たちの力が必要なら、いつでも歓迎します。

あなたがココを訪ねてくれる事を待っていますね。





実は……マスターとリューズが主人公の設定です。

この建物に訪れる【訪問者】を待っている方々です。


次回より少し【和田野 健】視点になります。

恵の話しは、その後に予定していますので……

ご理解下さい。


ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ