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恵から覚悟を言われたリューズが、何か言いたげな顔をしていたが、外が騒がしくなり恵に緊張がはしった。


あちらこちらで『おはようございます』と運動部の独特の挨拶をする声が聞こえてきてる。きっと生徒たちは始業式後のホームルームが終わり、各部室に移動しはじめているのだろう。


そして武道館にも声が近づいてきた。

『先ぱ~い!おはようございます!今日はミーティングだけですよね?』

『おはよ~。うん、先生いないミーティングだよ~』

『やった~。先輩!先輩!ちょっと聞いてくださいよ~……』


 ガチャ、ガチャン。ギィー……


賑やかな話し声と共に武道館の入口が開いた。


(あっ。私だ……)


武道館の鍵を片手に、知美ちゃんと後輩の香織ちゃんと話している。3人は扉をくぐると軽く頭を下げ上靴を脱ぎ、剣道場にある机の前で話の続きをしている。


『明日からのテスト返し怖い~』だとか、『昨夜の6時間やってた特番観ました? 』とか他愛もない事を話していた。


(こんな話……してたっけ?)


恵とリューズは神棚の前から武道館の真ん中辺りに来ていて、彼女たちから少し離れた所にいた。


そのうち、隣の柔道部の生徒も数人来て軽い運動を始めていた。


遅れて三浦が武道館に入る。


「おはよ~ございま~す。ブレザー忘れて散々だったわ~」

「今日から衣替えだし、始業式あるからって話したじゃん!!」

「いや~昨日までは覚えてたんだけどさ~反省文書かされた……イヤ~マジしんどい」


そのうち千恵ちゃんと、後輩の後藤くんも来て全員揃った。

来月にある昇段審査と、年明けにある勝ち抜き戦。その合間にある他校との練習稽古などの予定を確認していく。


そんな中、彼が武道館に来た……

バタンと扉がしまったと同時に……


「おはようございます。みんな、今までごめん」


彼は、武道館に入るとすぐに頭を下げた。


(健くん……えっ? 痩せてる……辛そう)


一瞬、武道館に響く彼の声に注目が集まった。

けれど早々に柔道部の人たちの興味が薄れた。

剣道部だけは、時が止まっているかのように微動だりしていない。


そんな中、頭を下げた彼を見た恵も動けなかった。


あからさまに痩せていて、ブレザーが大きく見える。

もともと坊主だから髪が無くても気にしないが、一目見れば気付けたのでは無いのか。何故に気付けなかったのか疑問に思い制服の自分に視線を移し駆け寄る。


(えっ……私、見てない?……)


恵が制服の自分の目の前に立つ。

彼女は視線を足元に向けていて彼を見ていなかった。


(あっ。観れなかったんだ。部員の手前……怒らないと……って思ったから……)


「……ねぇ。 自分が何したのか分かってんの?経験者だし少しぐらい稽古をサボってバイトをしてたって、私たちには負けないと思ってるだろうけど……私たちだって、それなりに時間つくってヤりたい事とか遊びたい事とか我慢してるんだよ!? 今さら……」


(言っちゃった……ね!私、気付いて!!健くんを見て!!)


恵は制服の自分の肩を掴み揺さぶろうとする。また一方的に正論でまくし立ててしまってる状態だった。

けれど、恵の手は肩をつかむ事も動かすことも出来なかった。


(やだ、やだ…これじゃ何の為に、ここまで来たのか……わからない……じゃない……)


恵は、制服の自分の肩を胴体をすり抜けて床にペタリと座ってしまった。

数秒の沈黙後、彼はそのまま何も言わず武道館を出ていってしまった。


(……どうしたらいいの? )


バタンと武道館の扉が閉まり、恵も部員たちも動けないでいた。





ありがとうございました。

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